【個人山行】丸山岳〜会津朝日岳から無雪期ソロ踏破〜

会津の名峰、マイナー12名山が一角、丸山岳を藪でソロ踏破してきた。羽後朝日岳烏帽子山に続いてのマイナー12挑戦である。藪での丸山岳到達は白神と並んで今夏の僕の大きな目標であり、無事にソロ踏破できたことは大きな喜びと自信になった。


ワンゲルで行けるかは分かりませんが、何かしら今後の役に立つと信じて載せておきます。チャレンジしてみてください。


記:西田(2021年11月2日)

丸山岳の草原と朝日

山域:丸山岳
行程:赤倉沢登山口⇄会津朝日岳⇄大幽朝日岳⇄丸山岳
日程:2021年9月19日〜23日(3泊4日+行動予備日)
山行形態:藪山登山
メンバー:3年会 西田(単独)


◎はじめに

2年前に残雪期もとい厳冬期に単独で突っ込んで惨敗した丸山岳だが、藪で落とせるなら藪で落とすべし。丸山岳に至るルート(沢を除く)


1.会津朝日岳からの丸山岳北稜線

2.窓明山からの丸山岳南稜線

3.黒谷林道まで車で入り火奴山を経由する

4.只見ダムから袖沢林道に入り丸山岳西稜線に取り付く


4つがあるが、いずれにしても山深さが最大の難敵となる。今回は最も行きやすいと思われる会津朝日岳からの丸山岳北稜線を選択したが、それでも片道7kmの藪区間。


会津朝日岳-丸山岳の藪記録はtwv1961、67、69、72、73、78夏合宿と2015GWの残雪記録が唯一入手可能な記録である。その他慶應ワンゲル(2015年?)と明大ワンゲル(1969)が藪で入っているはずなので、問い合わせてみたら記録が残っているかも。2015年の残雪記録曰く僅かに旧縦走路の痕跡があるそうだが、基本踏み跡のないtwv1961記録に合わせて読み、12.5pフルで動いて片道2日、水場は丸山岳山頂以外無し。1p=0.25Lに縛り行動に余裕があれば適宜沢筋を下ることにした。


自分の気力と体力がどこまで持つかの勝負だが、藪の状況がわからない以上、勝率はどんなに良く見積もっても五分、シビアな挑戦である。

 

後ろにワクチン接種と朝巻が控えていることもあって、当初は15日あたりに入山するつもりでいたが、台風14号により1718日がかなりの悪天になる予報であったので、ワクチン接種予約を変更して19日入山22日下山+行動予備1日とした。22日夜に寒冷前線が通過する予報なので行動予備を使う場合は前線にぶち当たることになるが、幸いそれまでは晴天予報であった。

 


◎行動記録

9/19()1日目:快晴

黒磯=()=赤倉沢登山口5:38-7:18人見の松-7:37叶の高手7:41-8:09朝日岳避難小屋-8:36朝日岳直下斜面下(水汲み)8:50-9:00会津朝日岳9:10-10:00鋸刃10:12-11:01 1554P手前のコル(水場偵察)11:15-12:12 1554P先左折点12:18-13:04 1467P手前の1420mコル(水場偵察、水汲み)14:15-14:34 1467P-15:04大幽朝日岳手前の肩15:10-15:56大幽朝日岳16:10-16:23大幽朝日岳先1480mベロ▲1

未明に家を出て父親に登山口まで送り届けてもらう。電波(Softbank。以下同)はいわなの里の500mほど手前まで。登山口には朝日岳日帰りの同業者が2人おり、1人と少し言葉を交わして出発。赤倉沢を左手に見ながら緩く登る道を行く。会津朝日岳までは頻繁に人が入るだけあって、道はよく整備されていて終始歩きやすい。


渡渉は590m地点での右沢の渡渉が1箇所、左沢添いに進んで左岸から右岸に渡るのが1箇所、740m付近に1箇所あるが、昨日までの雨での水量でも飛び石で渡れる。900m付近から九十九折の急登に入るが、すでに結構な暑さを感じる。この4日は高気圧のおかげで天気は良いが、同時に季節外れの暖気の流入により気温が上がるとの予報だった。水制限との戦いでもある今回はこの晴天が敵になると踏んではいたが、朝一の限界下の時点でこの暑さとは厄介だ。


温存しつつもちょうど2時間で叶の高手に到着でき一安心。人見の松の少し下が森林限界で、福島の山々がずーっと連なるのが見え中々の見晴らしである。1382Pを過ぎたところで登山道左側にピンクテープと踏み跡がありここが水場。渇水期があるらしいが、行きも帰りも確認せずスルーした。山頂直下1500mから岩場の急斜面だが、ちょうどその1500m地点の左の沢筋に水が流れていた。前日の雨による一時的な流水ではあるが、暑いのでありがたく水を頂戴する。


岩場は足場とロープがしっかりあるが、朝日岳周辺の岩は総じて濡れると滑りやすくなるので、雨の後などは注意を要する。9時ちょうどに会津朝日岳到着。西側が垂直に切れ落ちた岩稜で結構迫力がある。


会津朝日岳山頂


「立ち入り禁止」のロープの先には踏み跡が続く。2015GWの記録では少なくとも序盤は旧縦走路の痕跡が残るらしいが、どこまで続いてくれるか。序盤は基本細い稜線を胸丈〜背丈くらいの低灌木が覆っている感じ。所々藪無しで岩稜が露出している部分を繋げるが、東斜面が急なので下手に藪を避けてトラバると疲れる。


さあ藪入り

地形図に表れないものも含めて鋭い小ピークを3つ越えて50分で鋸刃まで着く。快晴で延々と続く稜線の遥か先に丸山岳がよく見えるのは楽しいが、とにかく暑い。鋸刃から1451P手前の1550mピョコまでも岩稜+背丈潅木の状況は変わらず、稜線がとにかく細いので踏み跡らしきものはたどれるが、結局は潅木をゴリゴリ漕いでいくと言った感じ。途中twv1961の記録にあった1554P手前のコルで西側の沢筋を偵察するが、5分ほど下った限りでは水が出る気配は無かった。


鋸刃から丸山岳方面。目標は遥か遠く


1554P先の細長い1550mピョコから1467Pまでの区間は、西側がブナ林+笹で踏み跡が明瞭になるのでかなり進みやすい。1467P手前のコルで西側の沢筋を1015分ほど下ってみると水が出た。水量は少ないが、帰りも水が取れたのである程度信用できる水場だろう。


昔の明大ワンゲルのプレート。FBにあった隊だな


大幽朝日岳の上り1440mベロまでは濃くなくスイスイ進むが、後半はかなり細い岩稜になる上、低潅木が密生しているため苦労する。大幽朝日岳山頂で慶應ワンゲルが残したらしきプレートがあった。今日最低限進むべきところまでは来ており、この先最低鞍部の方には寝られるところが無さそうだったので、山頂から少し進んだ1480mベロの踏み跡上にツェルトを張ってサイト地とする。


大幽朝日岳山頂


さっさと飯を食ってさっさと寝る。熊対策で夜はずっとラジオをつけっぱなしにしておいた。羽後朝日、烏帽子と2連続で危険な遭遇の仕方をしてしまったので、内心かなりビビっていた。ところで夜中ガサガサと逃げていったあれは何だったのだろうか

 


9/20()2日目:快晴

1 5:28-6:25 1442P手前の最低暗部 6:32-7:30 1552P手前の1480mベロ 7:37-8:08 1552P-8:30 1552P先の1530mコル 8:40-9:26 次の1540mコル9:35-10:27 1580mベロ 10:37-11:36 1720m地点 11:46-11:56 1736P-12:23 1740m地点 12:33-13:25 1790m地点 13:40- 13:54 1800m-14:07 丸山岳▲2

 今日で丸山岳山頂に立つ!大幽朝日岳からの下りは引き続き踏み跡があり薄め。1552Pへの登りに入るまでは細尾根+低潅木で、小ピークをいくつか越える。1552P付近一帯は尾根が広く、かつ尾根上の背丈を超える笹+潅木+ツタの藪が濃いので、尾根上を進むのが困難。尾根を西巻きに逃げるが、尾根からかなり離れなければならないため位置をロストしやすく、尾根上に復帰するにも時間がかかる。


 1552P先の1530mコルから10分ほど行くと上田湿原がある。湿原と言っても大きめの水たまりのようで、ここの水を飲むのは気が進まない。湿原に沿って歩けば踏み跡を追えるが、見かけに反して底無し沼なので注意。


上田湿原

1552P以降は立木が消え、一気に藪の背丈と密度が高くなり、不明瞭な踏み跡を正確に追えないとかなり詰む。11540mコルから少し行ったところに草地の小スペースがあり、テント2張りギリギリ入りそう。570mベロは地形図で見るよりも「く」の字に屈曲しており、尾根上踏み跡が消える上、笹+潅木+ツタで一気にペースが落ちてここの突破だけで1p使ってしまった。1736Pへの上りの上部は大幽朝日岳の登りと似たような潅木藪で、1736P以降は背丈を遥かに越える強笹がかなりしんどいが我慢して漕ぐ。所々に針葉樹の立木があり、その足元は藪が薄い。


キレながらも1800mの肩に何とか乗ると、そこからは胸丈で10分程度行くとパッと藪が途切れて草原に飛び出す。ようやく丸山岳山頂に着いた。感動することこの上なく、僕は初めて山で泣きそうになった。丸山朝日沢を挟んだ2つのピークの一面に広大な草原が広がっている。やはり丸山岳は無雪期に来てこそだろう。


肩からは藪もカラフルで眺望もバツグン

草原に飛び出した!着いた!


写真じゃ伝わりにくいけど...

本当に気持ちの良い草原です

せっかくなので三角点

池塘の水も十分綺麗だが、せっかく時間があるので丸山朝日沢を下って汲みに行く。1750mの支沢と合流する地点でちょうどジャバジャバ水が取れた。


山頂にはまるで人工かのような2つの池塘がある

沢を下れば水量豊富

今日もさっさと飯を食って寝ようとすると見事な月が出ていた。後で気づいたが明日が中秋の名月だった。名月を山頂で1人独占できるとは全く贅沢である。


藪がないからツェルトはペチャンコ

寝ます。おやすみ


夕焼けと...

中秋の名月(仮)。贅沢にも独占



9/21()3日目:快晴

2 5:36-6:53 1736P 7:03-8:05 1570mベロ8:15-9:04 1540mコル9:15-10:06 1552P 10:16-11:07 1552Pからの下りの1440m地点 11:17-12:11 大幽朝日岳への登り手前の1420m地点 12:30-13:04 大幽朝日岳-13:28 大幽朝日岳からの下りの1450m地点 13:40-14:18 1467P-14:35 1467P先の1430mコル▲3

  朝焼けも十分に堪能したのち出発。明日で藪抜けするためにも今日が踏ん張りどころ。1736Pまでの下りは広尾根の東端に沿って下ると下りやすい。1736Pからの急な下りは左右が切れ落ちており石楠花などが強いので慎重に下る。「く」の字の1570mベロから1540mコルまではずっと西側に落ちてトラバースする。尾根上を行くよりは薄く楽に進める。


朝も沢山撮った
 



 1552P付近は西側が笹だが踏み跡は尾根からかなり落ちた位置にあり、そのままグルッと西巻を試みる。が、尾根が広く潅木で視界も無いため難しく、右に大きく外す。大幽朝日岳までは西側の踏み跡をたどるが、暑すぎて倒れ込んでしまいそう。1日目の水場が生きていることを心底願う。大幽朝日岳からの下も潅木で見通しの効かない急な下りで、またも尾根を右に外す。3日間の疲労と暑さと尾根を外す自分が相まって流石に発狂した。まあ聞いてくれる相手は熊くらいしかいないのだが

 下りきってからは薄いので、1日目の水場、1420mコルまで気合で歩く。疲れたぁ。まだ時間があるので前進したかったが、この先マシなサイト地があった記憶がないのでここをサイト地とする。沢筋に下りると水場はまだ生きており、たらふく飲んで水浴びもして生き返る。本当は今日が中秋の名月なのだが、残念ながら藪中なのであまり見えない。

今日の水場


 明日は午後から夜にかけて寒冷前線が通過する予定なのでできれば昼過ぎに下山したい。読み的には可能だが、ここまで来たら一刻も早く下界に着きたいのが人情ってもんである。今日もさっさと飯を食ってさっさと寝る。

 


9/22()4日目:快晴

3 5:30-6:20 1554P手前の1550mピョコ 6:30-7:17 1554P先の1550mピョコ 7:27-7:56 鋸刃-8:19 鋸刃先2つ目の小ピーク 8:32-8:46 会津朝日岳 9:00-9:25 朝日岳避難小屋-9:47 叶の高手 9:55-10:49 740m地点 11:00-11:20 赤倉沢登山口

   最終日なので意気揚々と飛ばす。行きと同じく1554P手前の細長い1550mピョコまでは西側の踏み跡をたどり、そこから先は細い岩稜の潅木を漕ぐ。所々慎重に通過するところがあるが、基本行きで状況が分かっているのでゴリゴリ進み2p強で鋸刃まで着き、会津朝日岳で藪抜け。最終日の藪は呆気なかった。


藪抜けして山頂で一息

  山頂で電波が入ったので13時に迎えを頼んで登山口まで駆け下る。最後の最後まで暑かった。登山口脇の沢で水浴びをしているとちょうど雨が降ってきたので、いわなの里で雨宿りをさせてもらった。これにて丸山岳チャレンジ終了。



◎まとめ

前半は想定よりも踏み跡がしっかりあった。2015年GWのような残雪期の登山者か、あるいは人知れず記録も残さず無雪期縦走している変わり者がいるのか、誰が残してくれたのかは不明だがともかく大分助けられた。踏み跡がなければもっとギリギリの戦いを強いられただろう。だが後半、特に1552Pからは中々歯応えのある藪漕ぎができ、だからこそ山頂に立てた時の喜びも増す。


今回でMax丸山岳FB13.6pなので、多少無理を通せばワンゲルでも行けないかしら。前半の踏み跡、中間点の水場など、今回の記録を足掛かりに丸山岳を目指す人が現れたら嬉しい。


兎にも角にも、難敵だろうと見ていた丸山岳を落とせたことは大きい。だがまだたったの2座目、先は長い。





0 件のコメント:

コメントを投稿