【個人山行】甲斐駒・鳳凰

夏休みの最後に、紅葉の甲斐駒と鳳凰に行ってきました。甲斐駒で70/100, 100/301を達成しました。

記:中尾

紅葉の甲斐駒

9/29 朝巻下山
無事に2泊3日の藪企画を遂行し、達成感があった。しかしおかんができなかったこと、紅葉した山稜もガスであまり見えなかったことが心残りであった。船引は浦中さんと八ヶ岳に行くとか言っていて、ずるいと思った。
 
10/1 台風16号
台風のせいで自宅にこもっており、暇だった。こんな日は気づくと地図を開いている。夏休みの最後に自分の限界を試してみたい。長く稜線を歩きたい。限界上で一等星を数えながら眠りたい。台風一過で10/2・3の週末は日本全国天気がよさそうだ。どこに行こうか。さんざん考えた結果、鳳凰・甲斐駒に行くことにする。コースタイム25時間半で40km, 登り累積標高差は3600m。鳳凰も甲斐駒も行ったことないし、300名山のアサヨ峰も打てる。完璧だ。こんな素晴らしい企画を1人でいくのももったいないのでとりあえず船引を誘ってみる。しかし八ヶ岳に行くといって断られた。明日からだったのか。バスとか調べて登山の支度をして寝る。朝巻のあと洗った登山靴は乾いていなかったので重登山靴で行くことにする。
 
10/2 快晴のち一時雨 5:44 東京=(電車)=8:38 甲府=(バス)=10:17 夜叉神
10:40夜叉神 – 12:15杖立峠12:25 – 13:24南御室小屋13:34 – 14:47観音ヶ岳14:55 - 15:43地蔵岳 – 16:20 c1736▲1

始発の電車とバスで夜叉神までアプローチ。電車の中で地図を書いたり行動計画を立てたりする。昨日の段階では初日に白鳳峠くらいまで行きたいなーとかぼんやり考えていたが、調べたらクマが出るらしいので考え直す。0.8倍で休まずに歩くと日没ごろに高嶺に着くので、日没20分前まで歩いていい感じのところで寝ることにする。100名山リストとか見ていたら、甲斐駒が100名山70山目であること、300名山100山目であることがわかった。完遂しろという天の声が聞こえる。トンネルを越えて勝沼に入ると、目指す鳳凰と甲斐駒がすっきりとよく見えた。快晴である。


南アルプス

バスは予定より10分ほど遅れて着いた。既に日は高く昇っており、山の上では暑さによってガスが発生し始めている。さっさと支度をして登り始める。夜叉神峠まではよく整備された太い道である。自転車で駆け下れば楽しいだろうな、と思った。峠からは白根三山が綺麗に見えるはずだったがどの山も山頂だけ雲に覆われていた。テント場のあたりで少し道に迷ったがすぐに復帰し、快調に歩く。落葉松の紅葉が綺麗だ。このあとも南御室小屋まではずっと整備された道で、小石も落ちていない。重登山靴で歩くのが馬鹿らしい。サンダルに履き替えるべきだった。南御室と薬師の小屋はテント泊の客でにぎわっていた。綺麗な小屋である。この辺りから真っ白い花崗岩が出てきて、ようやく鳳凰らしくなる。最初のピークの薬師岳からは白根三山が良く見える。ダケカンバの黄色もきれいだ。鳳凰三山の主峰、観音ヶ岳で休憩する。


 


遠くに甲斐駒が見える。浦中さんと船引さんのいる八ヶ岳も隣によく見え、LINEで船引と励ましあう。高嶺と地蔵の間にある赤抜沢の頭も立派なピークで、鳳凰四山に加えてあげたいと思った。周辺には固有種のタカネビランジが残っていた。赤抜沢の頭から地蔵岳をピストンする。地蔵岳のオベリスクは最上部には登れなさそうだったので適当なところまで登って降りる。赤抜沢の頭まで戻り、高嶺を目指す。意外と尾根が細くて寝るところがあまりない。日没後行動することになるかもとか思っていたら小雨が降ってきた。30秒ほど歩くと道幅が2mほどに太くなっていたのでこの広場で寝ることにする。さっさとシュラフを広げて寝る支度をする。幸い小雨はすぐに止んだ。シュラフに入って景色を見ながらパンを食べていると、甲斐駒の方で雷鳴が聞こえた。急いでナウキャストを確認すると発達した積乱雲が北西方向に出現していた。こっちに雷が来るようなら地蔵岳まで戻って限界下に降りなければならない。しかし幸いにも自分のいるところに雷は来ないようなので、ナウキャストを確認しながら横になる。雷雲は甲府盆地の方に流れていき、17時半ごろまで雷の音は聞こえた。鳳凰の肩に沈む夕日とを見た後18時半ごろ入眠。
 
10/3快晴 ▲1 0:33 – 2:18早川尾根小屋 – 4:21アサヨ峰4:31 – 5:16粟沢山5:25 – 8:42甲斐駒ヶ岳8:54 - 10:33七丈小屋10:46 – 14:11 尾白川渓谷 – 14:44道の駅はくしゅう14:51 – 16:46日野春

日付が変わるころ、手が冷たくて起きた。手の冷たさが気になって眠れそうにないので動き出すことにする。普段なら軍手をして寝るところ、今回は手袋を忘れて素手だったのが原因である。反省しながら朝ご飯を食べる。シュラフから出るととても寒い。弱気な自分を叱りつけながら支度をする。凍ったシュラカバをたたむときも手が冷たい。手袋忘れを再度反省する。歩き出しは雲一つない夜空で、風は穏やかである。東のふたご座が冬の訪れを思い起こさせる。甲府の夜景と下弦の月が綺麗だった。高嶺の下りの途中から樹林下に入って暖かくなる。早川尾根小屋は改修工事中で、工事の人たちが小屋そばにテントを張っていた。アサヨ峰までは小さなアップダウンが多く、疲れる。夜の岩稜帯は道がわかりにくくて行き戻りしつつ進む。鎖場も丁寧に確認してから通過する。


夜の鎖は冷たい

アサヨからは白根三山と仙丈の暗い山影と小さな光の点が見えた。自分以外にも歩いている人がいるのだ。その光に励まされると同時に、自分も見守られているのかなと思う。粟沢山までの登りで徐々に世界が色づいていく。長い夜が明けようとしている。山頂に着くとヘッドランプがいらないくらいに明るくなっていた。オリオンももう見えない。甲斐駒はすぐそこにあるのだが、威圧的に高く見えた。なにせ仙水峠まで一度500 m下らなければならないのだ。下りの途中で真っ赤な朝日を見た。
朝日
 


すぐに甲斐駒のモルゲンロートとなって摩利支天がオレンジ色に染まる。甲斐駒はすぐに白色に戻って仙丈が黄色になる。朝日は次々に山に差し込んで色彩を与えていく。モルゲンが終わったところはダケカンバの紅葉で山吹色になる。なんとも贅沢なスペクタクルであるが、今この景色を見ているのは地球上で自分一人だけだろう。これだからナイトハイクはやめられない。仙水峠には北沢峠から来た人たちがたくさんいた。駒津峰までの登りは想像通りきつい。最後の登りだから、と自分を励まさないと足が止まってしまう。駒津峰からは槍穂の稜線が見えた。ここから甲斐駒までは直登ルートをとる。結構大きい岩があって予想外に時間がかかる。あとでエアリアを見たら破線だった。甲斐駒の頂には8時半すぎに着いた。
下界を見下ろす


山頂からの眺望はこれまでの人生で最も素晴らしいものの一つだった。富士山はもちろん恵那、中ア、御嶽、北ア、白山に尾瀬の山々まで見える。めぼしい山を同定しているとすぐに時間が過ぎてしまう。感動のあまり山頂の写真を全体ラインに流してしまった。しかしここからは長大な黒戸尾根を下るので、名残惜しいが早めに山頂に別れを告げる。黒戸尾根の入り口には鳥居や宝剣があり、信仰登山の過去を伝えている。下りはじめは垂直な鎖場が多く、鎖がなかったら無理だろうな、という感じだった。長い下りで足に疲労が蓄積し、七丈小屋で力尽きる。でもカップ焼きそばを食べたら復活した。刃渡りは左右に切れ落ちていて高度感を味わえる。刃渡りをすぎると歩きやすいなだらかな道となり、途中でサンダルに履き替える。急げば道の駅はくしゅう14:49発のバスに間に合いそうなので、時々走る。駒ヶ岳神社手前の沢で体を軽く綺麗にして車道を急ぐ。道の駅には発車時刻の5分前に着いた。道の駅は混雑しており、バス停がどこにあるか書いていない。一つバス停を見つけたと思ったら違う方面に行くようである。別のバス停もあったが、半予約制のシャトルバスと書いてある。どうやら同じ道の駅内でバス会社によって違うところに止まるようだ。北杜市民バスのバス停を頑張って探すが見つからない。そんななか一台のバスがやってきた。バスは道の駅には入らずに、入口横で一人降ろして行ってしまった。実にあっさりとした出来事だった。バスに乗れなかった。心の中でキレながら、車道を歩いて駅に向かう。やる気もないし足も疲れているし暑いので30分おきぐらいにたるむ。LINEを見ると船引たちはまだ山の中にいるようなので、自分ももう少し頑張るか、と思う。日野春駅には思ったより早く着いた。甲府の手前で日没となり、船引たちの下山の報を受けた。東京には9時前についた。長い2日間だった。

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