2019年7月31日水曜日

【個人山行】雪山 台湾第二の高峰へ



人の優しさは自然と同じくらい美しい。
またひとつ、山に登る理由が増えた。

ゆったりとした山旅だったが、至る所で人々の優しさに触れた。
これまで先を急ぐ単独行ばかりしてきたが、こういう登山も楽しい。
 OB1 久保


準備・計画

台湾で1ヶ月に及ぶプログラムに参加した。もちろん、まっすぐ日本に帰るというようなことはしない。台湾の山を堪能しよう。
海外登山の最も大きな障壁は言語である。情報収集する上で、大いに不利に働く。今回は滞在中に知り合った友達が大いに助けてくれ、全てがうまく進んだ。
台湾登山にあたり、必要なものは入園許可証・入山許可証・パスポート・入園料である。
もともと玉山(最高峰)に登りたかったが、許可申請が2ヶ月前開始な上に交通が不便であり、台北から時間がかかるため、今回は断念した。そこで、第二の高峰である雪山を選んだ。動機はシンプルである。1ヶ月前からホームページより申請開始である。山頂に近い三六九山荘を宿泊先として希望したが、選択できない。台湾人の友人に聞くがよくわからず、登山口に近い七卡山荘を選択。二日目に山頂に行き、再び七卡山荘に宿泊後、三日目に下山という計画にした。
プログラム中に登山計画を漏らすと先生からも他の参加者からも単独行は諦めるようにと忠告を受けた。ただ、最大の難関(入山申請)はすでに突破したため後は前進あるのみである。近くのスーパーで行動食を大量に買い込んで備えた。
出発前夜、友達からどこに泊まるんだと聞かれ、「その辺の公園で寝ようかな」と答えると「やめとけ、うちに来い」と誘われ、彼の宿舎にお邪魔した。おかんの最大の敵はヤブ蚊だったため助かった。本当に優しい友人である。宿舎では友人の友達数人と話した後、シャワーを浴びてさっさと寝た。

余談…
シンガポール人の友人に誘われて入った山道具店で自分が載った雑誌を発見してびっくりした。
唯一残っていた雑誌が山と渓谷で、しかも自分が載っていたものだなんて…。
9歳の時に投稿したものだった。
「運命だよ。偶然以上の運命だよ」と顔をくしゃくしゃにして喜んでくれた彼と店長の表情が忘れられない。
台湾のとある山道具店にて

15年前の自分



7/29

4:30 起床(台北市内の友人宅)
5:15 出発、Ubike
5:33 bus
7:00 宜蘭(乗り換え)
7:30 bus
10:20 武陵農場
11:05 登山口
16:20-17:30 雪山東峰 3201m
18:30  三六九山荘
// かなりゆっくり歩いています

さて、当日は水を9L調達して出発である。近場のUbikeを使ってバスの始発駅まで移動する。座席は8割ほど埋まっていて、私は当日朝に事務所で切符を購入して乗った。友人が全て代行してくれた。バスはしっかりしていて、日本で言うところの夜行バスくらいの大きさだった。宜蘭で降りて、次の乗り場まで数分歩く。友人がGoogle Mapsにピンを落とし込んでくれたおかげで、迷うことはない。宜蘭の乗り場は非常に大きく、バス会社ごとにチケット販売場所が異なっていた。ここでも給水機があり、水汲み可能である。台北行きの便が多い様子だった。
UBikeで移動

次のバスは中規模といったところだろうか。目的地である武陵農場まで直通である。おばちゃんが大量に乗っていて、しかもよくしゃべっていた。大阪のおばちゃんそっくりで懐かしくなった。停留所がやけに多く、途中10分のトイレ休憩込みで3時間ほどかかった。最後の方で、途中下車して入園料を払う必要があった。よくわからず、見よう見まねでお金を払ったのだが、証明書は購入後誰の目にも触れられることなく日本へ持ち帰った。本当に買う必要があったか不明。
友人には本当にお世話になった

武陵農場で数人が降りた。その中の一人に、登山の格好をしている人がいたので話しかけると非常に美しい英語が返ってきた。聞くところによるとオーストラリアで25年ほど住んでいたそうだ。山好きらしく、チベットの山に行った話を聞いて写真まで見せてもらった。せっかくなので連絡先を交換。よかったら一緒に登山口まで行きませんか?と誘われたが、次のバスが3時間後だと聞いて、歩くことにした。ちなみに林道を歩いても3時間かかる。
自分は運がいいとよく思うが、今回もそうだった。林道を歩き始めて5分も経たないうちに、日産の白いSUVが横に止まって、中国語で話しかけてきた。「Xue Shan」と答えると、驚いた顔をして一緒に乗るように勧められた。ありがたく、誘いを受けて乗り込むと他にも2人の登山客が乗っていた。友人だと言う。皆きれいな英語を話し、しかも日本語も少しできるようだった。雪山には年に2回訪れていると言う。この後も、山小屋および山頂で出会ったが、優しい方である。

登山口についた頃には、すでに受けた人々の優しさで満腹状態であり、このまま引き返しても悔いはないくらいだった。事務所で登山許可証を見せた。入園許可証の印刷を忘れたが、メールを見せればOKだった。さらに、宿泊地を三六九に移したいと言うと、それもOKだと言われた。結局、パスポートを見せることなく数分で全ての手続きが完了。割と緩めである。
登山道の入り口には黄色いテープが貼ってあり、違反者は罰金などの警告が書かれていた。誰も見張っている人はおらず、普通にくぐり抜ける感じだった。この辺りも緩めである。
登山道は非常にしっかりした造りになっており、道脇には樹木の説明板があった。針葉樹が多く生えていた。すれ違う登山者はほぼ全員が挨拶するようで、私も積極的に「你好」と挨拶していたが、私が外国人だと気付いた人は果たしてどのくらいいただろうか?
途中で、一人の女性登山客から話しかけられた。日本人だと言うと興味を示したようで、この後も一緒に登ることにした。同い歳で、次の9月に富士山に登ると言っていた。どうやら7人グループで来ているらしい。彼女が一番足腰がしっかりしているらしく先に一人で歩いているようだった。私は単独行を好むが、早く着いても山荘で時間を持て余すだけなので、会話しながら歩いた。毎度思うが、台湾の人はおしなべて英語が上手である。滞ることがない。水を9L持ってきたと言うと呆れた顔をされた。
そして、台湾には日本好きな人が多いと言うのも事実である。私が日本から来たと漏らすと、握手の嵐である。さらには一緒に写真を撮ってくれとせがまれて大変だった。でも、みんな嬉しそうだしいいか。
もう、この時点で北岳より高い…

雪山東峰で彼女のグループのメンバーを待った。もう、この時点で日本第二の高峰よりも高い。台湾どうなっているんだ…。このことを伝えたら、雪山はもっと高いよと返された。1時間ほどで他のメンバーが到着した。気さくで本当にいい人ばかりである。お菓子をいくつか分けてくれた。ありがとうございます。皆英語が上手で、日本語も片言話せるようだった。中に一人だけ、日本人だと勘違いするほどずば抜けて日本語が上手い人がいた。ドラマを見て勉強したと言っていた。ちなみに彼は英語も堪能であった。このグループ、やけに美人さんが多いなと思ったら、みな航空会社勤務だと言っていた。時間のロスが大きいのがグループ登山の欠点だが、こうして話していると楽しい。
三六九山荘は草原の斜面に建っていた。点在する白い岩が羊みたいで、アルプスの少女ハイジを連想させた。山荘の中は二段構えになっていて、番号が振られていた。登山許可取得時に与えられた床番号で寝るようだった。私は、山荘を変えたばかりで床番号を持っていないと言ううと、管理人は不機嫌な顔をしたが、7人グループがうまく取り合ってくれて解決した。緊急用の場所を特別に使わせてあげると言われたが、実際のところ4割がた空いていた。
ガスコンロを持っていないので、夕食はシリアルで我慢(辛い…)。
トイレ・水場・テーブルベンチが揃っている。水は煮沸必要とのことだった。外国の生水には不安を抱いていたため、私は下界から持参している。夜はすぐに寝たが、周りのいびきがうるさくて安眠からは程遠かった。



7/30

2:00 起床
2:10 出発
4:15-6:00 雪山 3886m
5:15 sunrise
6:25 北陵角 3880m
7:25 凱蘭特崑山 3731m
7:55 凱蘭特崑山北峰 3702m
9:50 三六九山荘
11:50 出発
16:00 登山口
23:00 帰着(台北市内の友人宅)

2時にアラームを設定していたが、それ以前に目は覚めていた。予定の2時に体を起こしてさっさと荷物をまとめて出発。余分な水は小屋に残した。
小屋を出た途端に心を奪われた

小屋を出た途端に、心を奪われた。あまりに星空が美しかった。本当にみんなに見せてあげたいくらいだった。天の川が煌煌と輝いて、その周りを無数の星が埋めていた。月も出ておらず、本当に壮観な眺めだった。間違いなく人生で3本の指に入る。
小屋から山頂までの道は真っ暗だとわかりにくかった。途中で黒森と言う森林帯を抜けるのだが、これが結構長い。足元の感触でコケ→道ではない、砂利か石→道と言うような判断だった。何度も踏み外したが、間違えてもすぐに気づく。途中、暗闇から急にライトを当てられて「ジャパ〜ン!」と声をかけられた時は心底びっくりした。そのあと、握手をせがまれ「頑張って」と片言の日本語で言われた。本当に面白いおじさんである。だが、どうして日本人だとわかったのだろうか?
星空を背負って、歩く。

やっとの事で黒森から抜け出すと、そこは圏谷だった。ゴロ岩のカール地形になっていて、上部から冷気がどんどん流れてくる。コケがなくなったため、暗闇の中での道探しも大変になったが、別の楽しみが待ち受けていた。流れ星である。植生がないこともあって、星空を背負って歩いているようで実に楽しい。しかも視界の隅を流れ星が幾度も通り過ぎるのである。あぁ、来てよかったなとつくづく感じた。
山頂には日の出のちょうど1時間前に着いた。風が弱く吹いており、寒かったため、ダウンジャケットとゴアを着込んだ。じっとしていると冷えてくるため、適当に体を動かす。下界の光がちらついていた。南の方角で稲妻がピカピカと光っているのが見えた。東の空はみるみるうちに明るさを増していき、星々は静かに姿をひそめた。いつも思うが、好きだな。夜明け前。
富士山より高い

結局、山頂から日の出を見たのは自分一人だけだった。今日も時間に余裕がありすぎるので昨日出会ったオーストラリアの人と連絡を取ったり、下界の何人かに中間報告をしたり、まったりしてから、稜線で繋がった周辺の山も登ることにした。
ハチが止まっていた

マイナールートとあって、道は一気に不明瞭になったが、高山植物の宝庫だった。景観は南アルプス北部のそれと似ている。ただ、岩場を軽量登山靴で歩くのは無理があった。



岩にマークがされていないため、自分で歩く場所を考えなければいけないところもあった。これはガスったら終わりだな。
通過に難儀した

さらに、途中の稜線分岐から山荘までの下りが、非常に危なっかしくて肝を冷やした。もはやガレが堆積した急斜面であり、雪崩を起こしながら下るしかなかった。
しかし、ガレが終わってから黒森に入ると、そこは苔の楽園が待っていた。美しい。ただひたすら美しい森だった。南ア深南部で見た原生林を彷彿させた。 
三六九山荘で昨日の彼女と出会い、今晩台北まで送るから一緒に車に乗らないかと誘われた。時間の節約にもなるので、ありがたく誘いに乗ることにした。そうすると、温かい肉ご飯までくれた。「これ余ったので、よかったらどうぞ」ありがとう。その優しさの方が温かいよ。同じグループのメンバーを待ってから、一緒に下山した。
ありがとうございました

帰路の途中、有名だと言う店で魯肉飯を食べた。豚肉がのったご飯とスープをおなかいっぱい食べて60元(220円)はとてもお得。そのあと、台北市内で別れて、再び友人宅へ向かった。




台湾の山に登りたい人へ

登山について

・事前に許可が必要(玉山は1〜2ヶ月前に取得)
・入山料が必要(今回は台湾大学の学生証を持っていたため学割で130元=500円)
・幕営不可能なところが多い
・水は煮沸推奨
・森林限界は3500mくらい??
GPSアプリはYAMAPで海外地図ダウンロード(ジオグラフィカは解像度が良くなかったため断念)
・メジャールートは整備が行き届いている
・マイナールート・破線ルートは激しく荒れている
・紫外線は日本より強い
3000m峰は二百数十座(軽く日本の10倍)あり、メジャーな山はほとんど許可が必要

交通について

・雪山はバス利用が便利
・玉山はバス・電車がなく、タクシー利用は不安を覚えたため断念
・台北から雪山までは、宜蘭で乗り換えて、武陵農場で下車(1日2本)
Ubikeというレンタサイクルが発達していて便利
・地下鉄MRTは日本より良い
Easy Cardを作っておくと電車・バス・自転車・スーパー・コンビニまで幅広く対応できる

通信について

SIMカードを購入。グローバルWi-Fiルーターはかさばるので、SIMをオススメする。ただ、SIMフリースマホが必要。私は渡航前に自分でロック解除した

装備について

・日本を出国の際は検査が緩かったが、帰国の時にライターで止められた
・出来るだけシンプルにまとめる
・ザックは大きめのものを用意しておくと安心
・調理しない場合、果物は多めに用意する
・ちょっとしたお菓子やバナナは人との交流を深めるのに役立つ

一番辛かったこと

・行動食は日本メーカーのものをいくらか用意しておいたほうがいい。向こうのものは口に合わず、食べるのがきつかった。日本製のフルグラは日本から持って行った方が安い

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