OB山行 山スキー 薬師岳〜双六岳

お久しぶりです、’17卒の藤原です。今年のGWは北アルプスで山スキーをやってきました。OB山行ではありますが、2014年に敗退したルートと一部被っているので、せっかくなのでアップロードしておきます。やはり現役時代の積み重ねあってこその山行だったと思います。現役山行では完遂できなかったでありましょう。

藤原しるす
薬師岳中央カールの底でパチリ
OB3: L藤原 OB2: FH村田; W川原 OB1: E西山

かねてより室堂~新穂高温泉のオートルートに憧れていた。しかし、色々あって南半分の短縮コースとなった。結果的にGW前半の悪天候を避けられたので、良い天気のもと、薬師岳中央カール、黒部五郎カール、双六谷などを楽しく滑走できた。次はぜひオートルート全部をこなしたい。

5/1 アプローチ
アプローチ前の打ち合わせをSlack上で行ったところ、かなりバタバタしてしまった。万一忘れ物があっても現地調達できるように、Fは早めに富山駅にアプローチ。もともと大宮からはくたかに乗るつもりだったが、GWの混雑のなか乗車できるか心配だったので、東京からに変更した。はくたかにはスキー板や大きな荷物が置けるスペースがあるのだが、網棚に乗るような小さな荷物をそこに置く横着な人が多い。仕方なくデッキに荷物を置く。道中でお玉とヘッドが不足していることに気づいたので、富山で購入。個人で使用するには手に余るほど大きなヘッドを所有することになってしまった。
富山駅から濃飛バスで神岡まで行き、そこから同社のタクシーで飛越トンネルへ向かう。車内ではFとMが就活の話をしていた。林道脇斜面が崩壊しているため和佐府橋から先は車両通行止め。
ここからシートラで歩く。崩壊地点では土砂によって林道がほとんど完全に塞がれており、修復が大変そうだ。どうやって工事するのだろうか。トンネルへは日没後に着いた。かなり疲れた。トンネルの入り口は板で塞がれているが、かろうじて幅1mくらいは雨の凌げるスペースがある。トンネル脇で水が流れていたのでそこから汲んだ。

5/2 飛越トンネル~北ノ俣岳
雪が多い時はトンネル向かって右側から直登もできるという事前情報があったが、今回は左の夏道を登る。夏道を途中で逸れてしまい、藪を漕いでしまう。すぐ夏道に復帰し、快調に進み始める。寺地山を南に巻く。北ノ俣避難小屋手前で森林限界を超えた。今日はけっこう人が多い。太郎平小屋に行くのだろうか、みな荷物が少ない。
水が少し不足していたので、避難小屋にあるという水場を使おうとしたのだが、なかなか見つからない。小屋ノートに何か書かれているかもしれないと思ってMに読んでもらっていると、どこからか水の音がすることに気づく。実は小屋の反対側の入り口に水が出ているのだった。
ここからの登りがなかなかしんどかったが、なんとか北ノ俣岳に到着。山頂を少し北に下った平坦地で幕営。大変眺めの良い場所である。夜は少し風が吹いたが、スノーブロックのおかげで快適に寝られた。


北ノ俣岳のテン場から薬師岳をバックに

5/3 北ノ俣岳~薬師岳(⇔薬師岳カール)~北ノ俣岳
北ノ俣岳の北にある2576mを西巻きで滑る。太郎山手前でシールを付け、そのまま薬師峠まで行く。太郎平小屋の周囲には人の気配がまったくない。朝食が遅いのだろうか。Fが薬師峠に来るのは3回目。懐かしい。テン場のトイレで小屋の人に挨拶をしなくて叱られたっけ。
薬師峠から薬師平への登りはかなり急で、シールでは滑って歩きにくい。最後の数十メートルはトラーゲンになった。薬師平から尾根への取り付きは直登には急すぎるが、夏道の着いている東の稜線まで回り込むのは面倒だったので、稜線の途中で乗り上げる。ここでNが苦戦していた。FとMはtechniqueを発揮して難なく登る。山スキーは体力だけではないのだよ。
シールをつけたりトラーゲンを組んだりして歩き続けるといつの間にか薬師岳に着く。少しすると太郎平小屋から出発した人が登ってくる。早朝に我々が太郎平小屋脇の斜面を滑っている「ガリガリッ、ガリガリッ」という音は小屋に響き渡っていたらしい。高山病になりやすいFがしんどがっているが、ここに来て中央カールを滑らないのは勿体無い。山頂から斜面の緩いところを選んで滑る。山頂から少し下ったところ、一番傾斜がきついところからドロップしている上手な人もいた。適度に雪が緩み、大変快適な滑走だった。カールの底で一息つき、登り返す。薬師岳からは来た道をひたすら滑ったり登ったりするだけ。この日の北ノ俣岳には我々のテントの他にも数張のテントが設営されていた。Fはいよいよ高山病でしんどい。吐き気もする。思えば2014年もこんな感じだった。夕飯を食べずに寝転んでいたら少し恢復した。明日はけっこう登らないといけないので、時間がかなりかかるのではないか、という議論が突然始まりFは困惑する。確かに今日はかなり自分が足を引っ張っていたが・・・。宴会はほどほどにして寝る。


薬師岳山頂。嬉しそう



5/4 北ノ俣岳~三俣山荘(⇔鷲羽岳)
北ノ俣岳までトラーゲンで登る。朝日が綺麗。ここからスキーで滑走。中俣乗越までは一気にトラバースで滑って行けるはずが、Nがうっかり標高を下げてしまい、100mほど登り返していた。めちゃくちゃ早い。疲れ知らずのNと命名。早朝の雪面は硬いので、エッジを立ててうまくカービングするのが難しい。2578mへはクトーをつけて登り、東側を巻く。黒部五郎岳への登りは、東側の雪面を行けるところまでシールとクトーで行こうとしたが、アキレス腱の固いFがかなり苦しくなってきたので、岩の出ている夏道をシートラで上がることとする。こちらの方が安心安全なルートである。黒部五郎の肩に荷物を置いて山頂を踏みに行き、滑走ルートを確認する。
肩から直接滑るのは急すぎて難しいで、少しカールの淵を北に回った地点から滑ることとする。カールの中に見える大岩の脇を通って、そこからはひたすらトラバースしていくルートで、安全地帯まで一人ずつ順番に滑ることとする。滑り始めがけっこう急な上、カールの上の方にはたくさん雪崩跡があるので、一番後ろで見ているFは気が気でなかった。実際に滑ってみると、今日も雪が適度に緩んでいて滑りやすかったので、そんなに怖くはなかった。先行メンバーが安全地帯であまり止まってくれないので、Fはノンストップで黒部五郎小屋まで滑る羽目になった。かなりつらい。でも楽しい。
思ったより滑走で疲れた上、暑くなってきたので、黒部五郎小屋で長めにタルみ、三俣蓮華岳へ。2670mからトラバースの夏道が出ているはずだが、この時期に使うのは難しそうだ。山頂から三俣山荘への滑走がこれまた楽しかった。
三俣山荘冬季小屋は屋根だけ雪上に出ており、入口は雪を掘り下げた位置にあった。中は広くない。テントを張った後、鷲羽に空身で登ることにした。鷲羽から滑るには、雪のついている斜面が狭くて難しそうだったので、始めから板を置いていくことにした。ほとんどの区間で夏道が出ていたので、1時間ほどで山頂に着いた。三俣山荘に戻り、黒部源流へ落ちる斜面で少し遊んでからテントに入った。明日は下山である。思ったよりあっさりここまで来た気がする。


黒部五郎カールに華麗にドロップするM。黒部五郎小屋は画面上方の稜線の蔭

三俣蓮華岳に刻んだシュプール。たまらん

5/5 三俣山荘~双六谷~大ノマ乗越~新穂高温泉
三俣蓮華岳への登り返しで一日がスタート。上部は風がけっこう強い。Nがクトーをつけてのシール登高で苦戦している。クトーの存在意義って、トラーゲンを組む手間が省けることくらいしかないから、あまり現役時代は使う機会が無かった気がするな。人数が多いとトラーゲンの方が足並みが揃うし。結局Nは途中から板を手で持って上がった。
三俣蓮華岳の南にあるピョコからの滑走で、Fが転倒、右肩を痛める。これを書いている5/10時点でまだ痛い。また、眼鏡が歪んでしまった。レンズが適切にアラインメントされていないことによる収差に悩まされることとなる。双六岳からは双六谷を滑る。Kが疲れてかなり休み休みになっていた。大ノマ乗越への登り返しは、谷の中心がデブリで覆われていたので、脇の尾根を登った。我々は双六谷から大ノマ乗越を見上げて右側の樹林帯から登ったが、最後乗越に行くために余計に斜度を稼ぐ必要があった。
ここからの滑走は出来るだけ止まりたくないが、Kが疲れているそうなので、少し長めに休憩。ここでFは、スキーは基本的に板の上でバランスを取っていれば勝手に進むし、板を踏む方向は進行方向と垂直なので仕事量はゼロ、従って体力は使わない、という屁理屈を展開してみるが、あまり共感を得られない。実際Fも疲れてるしね。理想的なフォームなら本当に体力を使わないんじゃないかと思うが、実際どうなんだろう。
大ノマ乗越からの滑りは、デブリが少しうるさいが、雪質はまずまずで、けっこう楽しかった。デブリを避けることに夢中になって沢に引き込まれないよう、スキーヤーズライトを維持することを心がけたほうがよい。ここでの滑走はM・Nペア、F・Kペアに分かれて行ったが、前者のペアがルートファインディングを失敗して登り返しをしたことを後で知る。下部ではボコボコのデブリの上を滑ることになり、かなり面倒くさいが、これはこれで残雪スキーらしい。ワサビ平の少し先で雪が切れ、ここからはひたすら林道歩き。ゆるい下り傾斜なので楽ちん。新穂高温泉で道端のフキノトウを食す。新穂高温泉からは濃飛バスを平湯温泉で乗り換えて松本へ向かう。松本で一泊して翌日の特急で帰京。良い山行だった。


今回の行程。長いね〜


黒部五郎カール。デカいね〜




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