道にせよ、藪にせよ、沢にせよ、基本的に山登りというのは事前に決められたルート、線の上を歩くものだ。山のほとんどを占めるそれ以外の「面」はまず登山者に顧みられることはない。それを歩かずして本当に山を知ったと言えるのか?しかしただあてどもなく山腹をうろつくだけではあまりに動機に乏しい。稜線に山頂が、沢に滝やナメがあるように、山腹にもそこへ向かうことが目的となり得る何かがあればいいのに。しかもそれはある程度の広がりを持った、いわば特異点ならぬ「特異面」でなければ・・・。
そんなことを考えていたある日、偶々玄倉川流域に鉱山があったことを知った。半世紀ほど前に細々と掘られていたのがいつしか忘れ去られ、2006年に再発見されて以来静かに人気を集めているようだ。といってもそこに至る道や標が整備されている訳でもなく、ある程度は自分の足を使って探し回らなければならないらしい。これだ、と思った。
※丹沢です