初日の出 |
甲斐駒ケ岳山頂にて |
企画・記録 勝木
参加者:OB2藤原さん、4久保さん、中津さん、3L勝木、H幕内、2E浦中、FW黒瀬
12/29晴れ
東京=(電車)=伊那北
中央本線で5人、岡谷に向かう。久保さんと中津さんは後の電車で来ることになっていた。エフチェをしていると、中津さんがぺミカンを忘れたという。岡谷駅前の西友が開いているので、先発組で不足分の食材を買うことにした。ついでに5人、駅前の商業施設でゆいいつ開いていたレストランよしので夕食をとり、そののち飯田線で伊那北駅に向かった。タクシー会社さんのご好意に甘えて、配車センター内の建物に泊めさせていただいた。いっぽう後発組のふたりはというと、あたたかい車内が気持ちよかったのか、疲れがたまっていたのか知らないが、なぜか松本駅まで乗りすごしてしまったらしい。電話をかける。辰野までは来れると中津さん。伊那北まで電車で30分。歩けば朝には間に合うはずだと訴えるも、ごめんねの一点張り。えいやとこちらが折れて、翌朝の始発で来てもらうことにした。
12/30快晴
7:10配車センター=(タクシー)=8:05戸台8:27〜(たるみ10min*2)〜10:58丹渓山荘跡〜11:34八丁坂上11:44〜12:50北沢峠12:55〜13:05長衛小屋▲1
しみてる。しゅみてる。しゅんでる。運ちゃんは何度か言い直した。今朝は昨日までよりぐっと冷え込んだらしい。寒さで、天竜川の川岸でテルモスの湯を沸かすのがつらかった。タクシーで戸台に向かう。もちろんふたりも含めてである。戸台の河原につくと、駐車場は車でいっぱいだった。
ビーコンチェックと体操をして出発。これまでのところ、雪はまったく見あたらない。今日の行程の半分は河原歩きである。初めの20分くらいは工事車両用の道になっていた。その末端で、川に遮られるため、右岸で巻く。テープも踏み跡も明瞭である。また石ばかりの河原を歩いて行き、数回堰堤を超える。小沢の渡渉も数度あった。水量の少ない小さな沢は表面が氷で覆われていた。谷の前方、開けたところに、甲斐駒ケ岳が見えた。もとより白い山だが、雪の白さは谷筋だけで、今のところは雪が少ないようだった。本流を丸太橋で渡り、左岸に移る。丸太橋は凍っていて危ないという情報だったが、今回は全く凍っていなかった。道はところどころ樹林帯を通るようになる。河原の石がだんだんと大きくなっていく。本流が大きく右に曲がっていくあたりで、丸太橋を渡り、右岸尾根に乗った。また渡渉し、岩っぽい道を少し登ったところに、丹渓山荘跡がある。
ここまでくだくだ説明してきたが、なんということはない、ただの河原歩きである。前の人としゃべったり、今度は後ろの人とだったり、たまにみんな黙り込んだりした。Lは中津さんの研究の話を聞いた。アミノ酸を人工的にできるだけ長くつなげていって、タンパク質を作りたいらしい。何個かのアミノ酸のまとまりを作って、それらをさらにつなげていくといいようだ。先頭を歩く二年会と幕内の3人が、後ろの4人に構わず早く進み、離れてしまった。たまに藤原さんが呼び止めると、あいだが縮まったが、距離は伸びたり縮まったりを繰り返した。
八丁坂を、ちびちび登り、稜線に出る。風が少し、冷たかった。少し進むと、尾根はとたんに広くなる。道が尾根端から外れ、木々の間を行くようになったあたりから、地面に雪が付いていた。時々薄氷があり、滑らないようにゆっくり登った。何度か人とすれ違い、何度か林道を渡って、ザックの重みが肩にきた頃、北沢峠に辿りついた。こもれび山荘で下界の臭気を嗅いだ後、峠から下りて長衛小屋に向かう。
長衛小屋は、北沢のある谷の下にある。手続きをして、テントを張った。電波は入らないが、小屋で天気の情報が手に入った。水場が生きていて、水作りをする必要がなかった。サイトをしたあと、二つのテントそれぞれで軽く宴会をした。山では珍しく、黒瀬は餃子を持ってきていた。日が沈みかけると、暗い谷間から、摩利支天が赤く染まるのが見えた。18時前にはシュラフに入った。長い夜だった。
12/31快晴
▲16:40〜7:30仙水峠7:43〜(アイピケ着8分)〜8:45限界8:57〜9:10駒津峰9:16〜9:36六方石〜10:21甲斐駒ヶ岳10:36〜11:11六方石〜11:48駒津峰〜12:31仙水峠12:45〜13:23長衛小屋14:05〜14:502合目▲2
シュラフから出たとたんに、寒気を感じた。芯まで冷えてしまいそうな寒さ。朝サイトのCHPを食べて、サブ装の準備をした。Lはこの時から気分が悪かった。テントをたたみ、体操をしようというところで戻してしまった。ペンネに悪いと思ったが、気分は少しよくなった。日の出は7時頃のはずだったが、その30分前には十分明るく、6時40分に行動を始めた。北沢に沿って谷をつめる。水の流れが凍って、面に広がっているところがあった。仙水小屋をすぎて少し歩くと、樹林帯から抜けて開けたゴーロになる。Lは遅れがちになった。戻したくなる気分を抑えながら、離れて先を進む隊を見て、ゆっくり歩いた。仙水峠でたるみ、L装を分配させてもらうことにした。
仙水峠から再び、樹林帯の登りになる。トレースは今までどおりしっかり付いている。何度か人とすれ違った。途中の開けたところで、すれ違うついでにアイピケにする。限界上に出た。風はあまり強くなく、穏やかだった。甲斐駒ケ岳のピークはすぐ目の前で、登りきれたも同然だと思った。駒津峰からオバテ、ヘルメットを着用した。六方石まではなんということもない。ただ、稜線の両側が切れ落ちているので、風が強い時は危ないだろう。夏道分岐から直登コースを登る。雪は多くても数十cmほどで、地面を軽く覆うくらいだった。登り始め、尾根が細いところで、大きな岩を乗り越えるところが数カ所ある。アイゼンが少し厄介だが、難しくはない。広い登りになると、地面の雪もほとんど飛ばされていた。真砂の上をアイゼンで歩き、山頂に着いた。伊那の谷が近かった。藤原さんがいつも通り持論を唱えていた。曰く、一、山頂は真上から見るものだ、横からの山容は下界でも見られる。二、山頂は風が強くて寒いから、長たるみをせずにさっさと降りるべきだ、とのこと。言説に従ってすぐに降りようと思ったが、久保さんは今年も例のツーショットを撮ろうとしていた。結局15分くらいたるんで下山する。朝早く出発したこともあって、下りの方がすれ違いが多かった。大きな岩を降りるあたりになると、進みが滞りがちになった。前にいた中津さんが話しかけてきた。来年度名古屋に行くことになったとのこと。そうして中津さんは、ザッと岩を降りて行ってしまった。Lの私はあとに続いて、そろそろと岩を降りた。仙水峠でアイピケを外し、長衛小屋に戻った。
明日日の出を見るために、サイトを2合目ですることに決めていた。だが、Lは2合目に行くことに躊躇した。今朝からの不調で疲労が出ていたのもあるが、そもそも非公式の天場にしてまで初日の出を見たいと思っていなかった。近頃の自分の無感動を感じたくなかったのだ。だが、見たいと思っている人の、期待を裏切りたくもなかった。明日は日の出に好条件である。水を汲んで、本ザックを背負って、2合目に向かうことにした。
2合目は、確かにテントを張れるが、登山道上に被さってしまうのは避けられなかった。土壇場で作った企画であり、過去記録で張ってるからと、安易にサイト地にしてしまったのがいけなかった。人の多い時期に、こういうところに張るのは良くない。だが他の登山者が通れないわけではないので、結局居座ることにした。四年会と幕内の3人に、大滝の頭までのルートを空身で下見してもらった。翌日の日の出前行動をする条件に、事前偵察することを入れておいたからだ。帰ってきた3人によるとルートは全く危険がなさそうだということだった。
サイトはすき焼き風の鍋だった。エフの黒瀬は、持ってきたストレートの割り下を全て入れて2倍希釈にしたので、鍋としてはとても塩辛くなってしまった。肉じゃがでも4倍希釈にするという商品だった。味見して入れれば良いものを、意地でも荷を軽くしたかったらしい。塩分を気にしている幕内は汁をボトルに入れて持ち帰ることにした。Lの分も入れてもらった。大晦日なので、年越しそばを食べた。またしても塩分を取ってしまった。水づくりをする必要がないので、18時にはすることがなくなってしまった。紅白を聞きたくてラジオをつけたが、なかなか始まらない。ビーコンに同期して、ラジオの音が波打った。19時すぎに始まったのをぼんやり聞き、20時にはシュラフに入った。米津さんがしゃべったあたりで、ラジオを切った。
1/1快晴
▲25:30〜6:13大滝の頭6:23〜6:53小仙丈手前(日の出たるみ)7:05〜7:15小仙丈ヶ岳〜8:00仙丈ヶ岳8:07〜8:47小仙丈ヶ岳〜9:04六合目9:16〜9:25大滝の頭〜9:502合目10:15〜10:35北沢峠〜(アイゼン着脱)〜11:47八丁坂下12:00〜12:11丹渓山荘跡〜12:50たるみ13:06〜13:16(歌宿沢より下流、右岸高台、手前テラス植生なし)▲3
久保さんの大きな起床コールで目が覚める。午前4時。お雑煮を作る。白味噌に丸餅という、関西風である。サイト中に誰かが、登山道を歩いてきて、フライの自在に引っかかっていった。新年早々お小言をいただいた。相手にも新年早々悪いことをしてしまった。しかし、いったい何が本当にいけないのかというと、それは新年である。暦である。私たちも、通りすがったおじさんも悪いことは何一つしていない。その後何人か、テントの脇を通って行った。テントをたたんで、サブ装を作り、5時半に出発。日の出は7時前だが、ヘッデンをつければ充分明るい。隣の稜線の影が見えた。東の空は橙色に滲んでいた。40分で大滝の頭にたどり着く。事前に決めた条件ではこの先に行かないことになっていたが、なんにせよ明るい。アイピケをつけて時間を潰していると、ヘッデンもいらないくらいに明るくなったので出発することにした。限界上に出てしまった。トレースはしっかりついてるし、先行者は何人かいるし、十分明るいし、もう夜明けも同然である。これは進むしかない。欲が出て、小仙丈で日の出を見たいと思ったが、さすがにかなわなかった。手前の登りの途中で、太陽はあっさり顔を出してしまった。風があるので、その後たるみを取らずに仙丈ケ岳に行くことにした。
着いた。
このくらいのあっけなさであった。
しかしこれはあくまで記録なのでもう少し真面目に書くとしよう。風については、過去記録にあるような暴風はなく、気を抜いて歩くとふらつく程度だった。耐風姿勢は一度もとっていない。トレースはしっかり付いていた。小仙丈先のコルの岩場は、今回は、岩の間を縫うように雪の上を歩くだけの状態だった。山頂の二つ手前のピョコは巻道がしっかり付いていたので使った。ナイフリッジもどきは稜の右側を行き、山頂手前のピョコは直登した。少し登り返して、山頂に着く。
例の言説によって山頂に長居しないつもりだったが、写真を撮るのに手こずって思いのほか時間を取ってしまった(7分)。居合わせた人に撮ってもらったのだが、外気が冷たいせいでバッテリーが落ちやすくなっているらしかった。
森林限界付近でたるむつもりで出発。アイゼンがらみのアクシデントが二度起きる。一つ目、Nさんのアイゼンが外れる。二つ目、斜面の下りでFさんが数メートル滑り、前の人にぶつかりそうになる。トレース外の雪はよくしまって固かった。以上。以後気をつけてください。
デポ地に戻って、アイピケ解除、本ザックにした。2合目からは、尾根上ではなく、トラバース道を使って北沢峠に行った。今日はもともと長衛小屋に泊まるつもりだったのだが、時間に余裕があるので河原まで降りてしまうことにした。
登りで気にならない薄氷も、下りではおっかないので、一部区間でアイゼンを履くことにした。ロングピッチを切って八丁坂を下りた。山道が終わり、河原歩きになるというところで、トップがイモって川に突き当たった。少し戻るとテープがあり、たどっていくと丸太橋を見つけることができた。
河原を、歩く。天場を探しながら歩く。1ピッチと少しののち、中津さんが対岸に台地を発見した。行ってみると、どう見てもサイト適地なので、そこに決める。
テントは一つだけ立てた。私と藤原さん以外の5人はオカンしたいらしい。テントでサイトを作っている間に、手の空いた人に焚き火の準備をしてもらった。
焚き火を囲って、宴会をした。正月ということもあって、差し入れはおせち料理にしていた。中津さんは、お歳暮のハムのセットみたいな豪勢なのを持ってきてくださった。他の人もたくさん持ってきてくれたが、いつものことなのであえてここでは書かない。
風は麓に向かって吹いていた。立地を失敗したようで、テントはずっと灰をかぶっていた。
1/2朝軽く雪、のち晴れ
▲37:45〜8:38(右岸で巻いた後、たるみ)8:50〜9:13戸台
5半7のつもりで起きて、テントでサイトする。久保さんの数の子は、一晩かけて塩抜きしておいたのだが、まだ少ししょっぱかった。たくさんあって、一人一羽以上はあったのだと思う。私はあまり食べ慣れていなかったので、続けざまに口に入れてしまった。ぞむぞむぞむと噛むごとに、バラバラ、バラバラ、バラバラバラとほぐれていくばかり。卵どうしの結合をほどくことはできても、それより細かくできない。口の中につぶつぶが溢れた。ねばったところで、君たちは羊膜を有たぬのだから、陸上で生きていくことはできぬのだぞ、と言い聞かせたが、よく考えれば彼らは無精卵だった。どのみち先がない。飲み込んで、歯に残ったのをブチと噛み潰した。
風は山に向かって吹いていた。夜明け前に軽く雪が降ったらしく、オカンした人たちはかぶったようだった。甲斐駒ケ岳に雲がかかっていた。今日登っていたら、トレースはなくなっていたかもしれないと思った。火を念入りに消して、その場を離れた。
行程に関して、特筆すべきことはない。往路と同じである。
戸台ではドコモは通じないが、ソフトバンクは通じた。タクシー会社に電話して、戸台大橋に呼んだ。
配車センターで降ろしてもらい、デポした荷物を回収した。
温泉は伊那新町から1km歩いたところで、打ち上げは岡谷のテンホウでした。どちらも次回以降お得になるクーポンをもらったが、使うことはないだろう。
初詣をしたいという人が多かったので、下諏訪で降りて、諏訪大社に寄ってから帰った。
総評
もともと年越しでは聖岳に行くつもりだったのだが、悪環境によりこちらの山域になった。直前の変更であり、審議参加者には申し訳ないと思っている。
甲斐駒仙丈は山が浅く、年末年始を過ごす人がとても多かった。下界の喧騒から離れて山に来たのに多くの人間を見ることになってしまった。コンディションがよいだけに、内容としてはあまり負荷のない、簡素なものになってしまったのが心残りである。だが、とてもよい条件下で冬季の南アの百名山を二つ打つことができたのは、純粋に嬉しい。
河原歩き |
仙水峠手前 |
今回、日の出を見るということでヘッデン行動をした。冬山では雪灯りもあって、日の出1時間前でも十分行動できることがわかった。さすがに危険箇所を行動するわけにはいかないが、事前情報で危険がないとわかっているなら、今後も積極的に取り入れて良いと思う。遭難対策の観点から、日時と場所を事前に指定しておいたほうが良いだろう。また、当然ながら視界が確保できる場合に限る。今回は快晴で数百m先の稜線が見え、月齢は25日で空に出ていた。
甲斐駒ケ岳 |
甲斐駒ケ岳下部の岩場 |
仙丈ケ岳山頂 |
仙丈ケ岳 |
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