OB山行 矢筈岳

OB山行 川内山塊 矢筈岳
文責:松野下稔
メンバー:平原健一郎(長官) 松野下稔





5月1日(火)
出発予定日だが、天気が悪いので一日延期。
5月2日(水) アプローチ
14時に赤羽集合。長官は間違えて、2時間くらい早く到着していた。上野公園に行っていたらしい。上越周りでアプローチ。日本海側も雨は降っていなかった。津川タクシーは朝なら5時からしか動けないそうなので、夜のうちに尾根のとりつきまで行ってもらうことにする。去年4時間かけて歩いた林道をあっという間に通過。今回除雪状況は、上川観光役場に聞いた。雪は全然なく、でかい石なども落ちてはいたが、すぐに林道末端の尾根取り付きについた。タクシーは約1万円。尚、ダムまでは舗装道路、そこからは普通の砂利道。着くと雨が降り出す。林道末端の辺りで長官のテントに入って就寝。
5月3日(木) 晴れ午後時たま小雨 藪トレして三川分水峰へ
林道末端5:50~6:50、600m付近7:00~8:10、860m付近8:30~魚止山9:15~10:00魚止山先の1120m10:25~11:15、1055mの二つ先の1000mのピョコ11:30~12:25三川分水峰 ▲1
起きてみるともう外が明るい…。寝坊。雨はそれほど降らなかったようだ。荷物はワンゲル並に重い。長官はもう少し軽かった。取り付きは尾根の最末端でなく林道終点のすぐ先。赤布が打ってある。というか魚止山まで赤布がべたうちで、ふみ跡もかなりはっきりしており、基本的に藪漕ぎだが楽に進める。ただ、854mへの急登は踏み跡も薄く、結構時間がかかった。これもマイナーな山だからこそなせる業。藪の中に生えている野生のカタクリが愛らしい。途中で実力者のおじさんに抜かれる。彼は日帰りの装備で1120mから引き返していた。
854m前後からようやく雪が少しずつ出てきて、所々雪上を歩く。魚止山から先は赤布がなくなる。魚止山と1120m間は踏み跡が発見できず結構がんばって漕いだ。藪はほとんど潅木藪。前回の問題のサイト場は、藪に覆われていて近づく気も起きなかった。1020mから先は稜線も細くなり、魚止山までほどではないが、ふみ跡が再びはっきりする。長官はなんと6年ぶりの藪漕ぎである。何故か半袖で漕いでいて痛そうだった。
問題の核心部は1055mの先という情報だったが間違い。一番やばいのは1066mの東側の登りの1020m付近。そのひとつ手前にも急斜面で浮石が多く藪が少ないところがあった。雪がついているといやらしいかも。というか1055mより先はどこも細くて雪が多いと行けるにせよ時間がかかりそう。今回はこの辺はまったく雪がなかったので助かった。そして先述の核心部はかなり立っている。手足を駆使して滝を登るような感じである。岩や藪をつかみながら登る。雪が多いとかなり苦労するだろう。引き返したパーティーがいたのもうなずける。今回はフリーで問題なく登れた。このあたりで長官が軽く目つきをするがひどくはなさそう。無難にサイト場到着。やはり1張りのスペース。45天が限界だろう。偵察しようかとも思ったが、長官も目つきしていたし、やめておく。
昼寝したりする。日が出るとかなり暑かった。風が吹くと寒かった。長官は常に、暑い、もしくは寒いを連呼していた。体調が万全ではなさそうだった。たまに小雨がパラパラ降った。水作りは近くの残雪を使った。夜は焚き火をした。よく燃えるのだが、風が強く寒いので、早々にテントに引き上げ長官と話しつつ寝る。
5月4日(金) 晴れ 夜小雨 祝ピークゲット、ハードな下山
▲1、4:45~5:35、1049m先のコル5:45~6:50前矢筈直下1100m7:10~7:30前矢筈7:35~8:15矢筈8:45~9:15前矢筈9:25~9:50三町境10:00~11:15三川分水峰12:00~12:50、1055mの二つ先の1000mのピョコ13:00~13:50魚止山先の1120m14:25~魚止山15:00~15:15、1940m15:30~16:10、1700m付近16:20~17:10林道末端 ▲2
結果的にかなり根性日な一日だった。サイト場から見える1049m先の核心部はものすごい傾斜だ。日の出が綺麗。1049mから見えるガンガラシバナはまさに圧巻であった。その核心部の下りは、ふみ跡がばっちりで、垂直になった藪のトンネルのよう。スタンスとホールドを確認しながらバックステップで慎重に下りる。ここも雪がついているとかなりの難所だろう。
青い岩盤の鞍部はいいところだった。岩にしか咲かない黄色い花がきれいで、長官はここが一番気に入ったよう。1051mとその手前のピョコは東から巻いた。この巻きではじめて残雪を本格的に利用する。青い岩盤の暗部の先の1010mのところから長官がアイゼンをつけてトラばる。自分はアイゼンが面倒だったので、尾根通しで行ったが圧倒的に遅かったので途中から長官に合流。雪はまあまあぐさぐさでアイゼンはいらない。
三町境で尾根に戻る。ここから先も残雪を結構利用した。問題の前矢筈への急登はクラックを避けつつアイゼンで残雪の上を歩く。クラストしていたら無理だろう。前矢筈からは藪と雪が半々くらい。ふみ後はほとんどない。大体尾根通しで残雪を拾いつつ行く。そして憧れのピークへ。ピークには立派な標識が。古い標識の裏になんとTVWと落書きされていた。70年か80年ごろのやつではなかろうか。山塊の盟主らしくいろんな山が見渡せる。いや~、嬉しかった!
帰りに前矢筈で人に会う。なんと京大山岳部。ちょっとしゃべって連絡先を教えてもらった。でもマイナー12名山で人に会うのも複雑な気分。その後からも2パーティーくらいにあった。ひとつは超人のおじさんで、12時間で矢筈日帰りしていた。もうひとつのおじさんたちは何故か鉈で潅木を切りまくりながら前進していた。矢筈の格を下げているようでこれまた複雑な気分。帰りは同じルートをたどる。1049mの核心の登り返しは雪がついていたらかなり辛いだろう。サイト場撤収して、本ザックで帰る。京大に追われて対抗意識を燃やし、頑張った甲斐あって藪の名門の面子は保たれたと思う。でも暑くて、まるで夏合宿をしているような気分だった。長官もあまり見たことがないくらいにばてていた。時間も早かったので、疲れていたが、末端まで下りることにする。前述のとおり魚止からは赤布べたうちで迷わない。藪に竹竿が絡まるのがうざかった。カメラも藪漕ぎ中に乱暴に扱ったのがたたって壊れてしまった。未だ蘇生せず…。ただし雪がついているとこれらは埋まっちゃうのだろう。ヘロヘロになりつつ、12時間行動で下山できた。でも超人は同じ時間で林道から往復していてマジですごいと思った。林道終点で虫を追い払いつつ、豪勢に焚き火をして、話をしつつ寝た。自分は1年のブランクがあったので、無事に山行が終わって少しほっとした。
5月5日(土) 晴れ 帰る
▲3、5:30~6:45室谷洞窟6:55~7:15室谷バス停
朝飯食って、歌を歌いながら林道を歩く。前回と違って早い。幸運にも一日に3本しかないバスの出発時刻ちょうどにバス停に着いた。また上越周りで帰る。新津で入った古い怪しげな温泉はガソリン臭かった。長崎屋で打ち上げして、長官は日本海を見て新幹線で帰った。自分は鈍行で帰った。夜は前田も加わり3人で池袋の古城の店で飲んだ。古城が結婚することが判明。自分のことのように嬉しかった。疲れていたので酔いが回るのが早かった。
まとめ
準備の時点で、ワンゲルからビーコン、竹竿、スノスコをレンタルした。でもFBとマックスを浅くする記録を作ったという点で少しは貢献できたかもしれない。この山域、一口に残雪と言っても雪の状態でコースタイム、難しさがかなり変わってくる。少なくとも去年とは全然違った。藪がうざい(それすらワンゲルとすればたいしたことないレベルだが)という点を除けば、今回はかなり条件に恵まれていたと思う。核心部も雪がなければ特に問題ない。今回の山行は8割方藪漕ぎという感じ。ワンゲル的な実力(ロープをあまり使わず、藪には強いと言う意味)にとっては一年を通しても最も打ちやすいタイミングであったと思う。ただその事を考慮しても、マイナー12名山のトップという肩書きは過大評価な気がする。ふみあとがかなり明瞭だし、赤布たくさんだし、人が結構はいっていたのもなんだかなあ。マイナー12名山のトップになってしまったせいで、メジャー化が進んでいるのではなかろうか。ピリカや障子岳の方がすでに格上のような気がする。
いかんせん憧れの山、最も登りたい山に行けて良かった。人生の目標の一つを果たせて嬉しい。ただ、前述したメジャー化の印象があったので超感動という程ではなかった。新たなる目標を定めて、原始な山をこれからも追い求めていこうと思う。さしあたり来年のGWは飯豊の烏帽子かな。京大山岳部に入っちゃったりしたらどうしよう…。
こんなマイナー山行に付き合ってくれた長官、ありがとうございました。緊急連絡先の前田、装備を手配してくれた塚越、資料を作ってくれていた安達もありがとう。

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