山行No.54 残雪笈ヶ岳 長谷川企画
◯参加者:4小畑、工藤、福村、3唐木、長谷川、2山岸
◯ 1/25000地形図:「市原」「中宮温泉」
笈ヶ岳と小笈
白山と朧月
5/1(火)
事前に白山自然保護センター中宮展示館に問い合わせたところ、やはり雪は少ないそうだ。それと白山スーパー林道の岩間道との分岐から先が朝の8時まで閉まっているらしい。これによりジライ谷コースで1日目に笈ヶ岳まで行くことが難しくなった。
5/2(水)
各自金沢へ。自分と唐木は上越新幹線と最終の特急はくたかで行った。上越新幹線に乗るのに少々イモる。連休前夜とあってすごいラッシュ。上越新幹線では何とか座れたが、はくたかでは2時間程席にありつけなかった。唐木はすごい格好で寝ていた。東海道新幹線と同じ感覚でいた自分が甘かった。北陸の各駅で降りて行く乗客を見ながら、うちの母親の北陸の女性評を思い出す。「富山の女性は日本人形の様な美人が多く、石川の女性はヤンキース松井を女にした感じ」らしい。うーん、どうなんだろう…。金沢に着いたら福村さんと小畑さんが待ちくたびれたような顔をして、迎えてくれた。小畑さんは小松空港まで飛行機で来たらしい。金沢駅東口で駅カン。金沢駅は、酔っぱらいやらタクシー運転手やらの喧噪や、改造車のエンジン音などで騒がしかった。
5/3(木)快晴、夕方に少し雲が出る
8:25白山自然保護センター中宮展示館―9:15 1000m付近(タルミ)9:25―10:30急登を登り切ったところ(タルミ)10:40―11:30ジライ谷コースと冬瓜山稜線との分岐(サブ装作り)12:00―12:35冬瓜山(タルミ)12:50―13:20デポ地▲1
6:13金沢発敦賀行きの列車に乗り、西金沢駅へ。西金沢駅で6:37鶴来行きの列車に乗り換える。北陸鉄道は超ローカルな雰囲気。鶴来駅は金沢よりずっと静かで、駅カン適地もいたるところにあるが、飲食店はおろか、コンビニが一軒もなかった。7:15頃事前に呼んであったジャンボタクシーに乗る。7:50頃問題の岩間温泉への分岐にあるゲートに着くが、既に開いていたのでそのまま通って中宮展示館の駐車場まで行ってもらう。料金は13140円也。中宮展示館の駐車場には既に7~8台程の車が置いてあった。大阪や静岡などよその地域のナンバーも多い。この人たちはいつ入ったのだろうと思いながら、一応ビーコンチェックをして出発。ビーコンは切ってもよいと指示した。野猿公園までの道ははっきりしている。途中、左に斜面を登って行く道を分けるが、自分たちは右の川沿いの道を行く。日差しは強く、周囲の光景は春爛漫といった感じで、とてもこれから残雪登山をするとは思えない。ジライ谷は、水量は丹沢戸沢山荘付近での水無川本流くらいで、水に濡れることを厭わなければ徒渉は簡単。ただ濡れずにまたいで行こうとするとなかなか厄介で、皆ピョンピョンとんでいた。徒渉点の上流に岩が張り出しており、その上は樋状の速い流れとなっていて増水時の徒渉は難しいだろう。徒渉後は沢での明瞭な高巻き道といった感じの、急な道。岩をよじ上ったり、木の根を手がかりに急斜を登ったりを繰り返す。ただ踏み跡は明瞭な上に、赤布多数、また要所要所にトラロープがあったりで、迷ったり薮こぎしたりするようなことはない。ただこのルートを下山路として取る場合、ザイル手がかりを頻繁に出した方がいいだろう。下に見えるジライ谷は草の付き方などが雪国の谷といった感じで、会津の谷に少し似ている。急登の終る少し前に大岩がある。急登を登り終えると、白山の大きな全容や冬瓜山の稜線が見えてくる。1271地点付近は薮が少しうるさい部分もあるが、踏み跡は明瞭。この付近は尾根が細く、雪がついているとかえって怖く感じるかもしれない。
冬瓜山稜線との分岐の少し手前から残雪が現れる。しかしズタズタに切れていて、薮こぎを交えながらの残雪歩きだ。冬瓜山稜線とジライ谷コースの分岐付近は平らなところが多く、サイト適地。冬瓜平に11:30までに着いたら今日中に笈ヶ岳を目指すことも考えたが、明日も天気が良さそうなので、今日はここで泊まり、笈ヶ岳は明日目指すことにする。
ここでデポを作って、ビーコンをつけて、冬瓜山山頂付近の岩場の様子を見に行くことにする。冬瓜山までは薮の中の踏み跡歩きに時々残雪が交じるといった具合。左側に見える冬瓜平にはテッカリと雪がついているが、稜線上はあまりない。冬瓜山山頂直下に、ほぼ垂直になったところにトラロープがかかっている部分がある。今回は、その部分には雪がまったくついてなく、また木の根などをつかんだり足がかりにしたりできたので問題なかったが、雪が少しでもついていたら絶対通りたくない。
冬瓜山手前の垂直地
冬瓜山山頂の岩場も今回は雪がついていなかったので問題なかったが、雪がついていたら怖いだろう。冬瓜山山頂の岩場を過ぎて、少し下ったところから稜線上にもしっかりと雪がつくようになり、いよいよ残雪歩きらしくなってくるようだ。冬瓜山山頂に来て初めて目指す笈ヶ岳が全容を現す。思ったよりも険しく見える山だ。でも右に小笈を携え、左になだらかな大笠山をひかえて、忽然としている様は格好いい。白山も全容がはっきりと見えて、大汝峰や御前峰などもわかる。笈ヶ岳からずっと連なる白山の大きな山容を見て、山岸は笈ヶ岳から白山本峰までの縦走がしてみたくなったみたいである。大笠山は雪がしっかりとついたなだらかな斜面(千丈平)をもっていて、福村さんはあそこでスキーをしてみたいと言っていた。風景を堪能してデポ地まで帰る。サイト地でテントを張っていると、今朝早くに中宮展示館を出発し笈ヶ岳を打ってきたという中高年のパーティーと会う。今日中にジライ谷コースを下るらしい。スーパー林道のゲートをどうやって通過したかを聞くと、ゲートの鍵はちょっとひねると簡単に取れるらしい。さすが中高年、どこまでもしぶとい。
自分たちの後で数パーティーがジライ谷コースから登って来て近くでテントを張っていた。皆明日笈ヶ岳を目指すのだろう。やはりたとえ道がなくても200名山だと入山者は多い。むしろこの時期にしか登ることができないから、登山者が集中するのだろう。
サイト地で山岸が冬山エキップ道具(捨て綱、雪袋、雑巾、新聞紙など)を忘れてきたことが発覚する。山岸は非常に有能だが、時々こういうポカをやらかすからこわい。まあこんな陽気だと忘れたくなる気持ちも分かるけどね…。今回は、捨て綱代わりに薮結びや木の棒やピッケルで何とかなったし、サイトと水作りはテント外でやり、福村さんの持っていた袋を雪袋代わりにしたのであまり影響はなかった。夕飯が4時前に終わり、まだ明るいうちに皆シュラフに入り、工藤さんのお酒を飲む。工藤さんは500ml缶2本、350ml缶3本の計ポリタン1発分を歩荷していらした。ご苦労なことです。
5/4(金)快晴
4:30出発―5:25シリタカ山(タルミ)5:35―6:40笈ヶ岳(タルミ)7:10―8:15シリタカ山(タルミ)8:25―9:30サイト地(撤収)9:50―10:50 1312P(タルミ)11:00―11:35 1271P(タルミ)11:45―12:35山毛欅尾山手前のベロ(タルミ)12:45―13:10山毛欅尾山―13:35 1058付近(タルミ)13:45―14:30貯水池―14:35階段下(タルミ)14:50―15:55新中宮温泉センター
3時起床。前日に引き続き今日も快晴。アイピケを持ってサブ装で4時半頃出発。昨日下見した冬瓜山稜線経由で行く。冬瓜山では夜明け前のほのかに明るい白山の隣に、朧月が浮かんでいて綺麗だった。冬瓜山の岩場を越えるとすぐに残雪歩きとなるが、シリタカ山までは特に危険なところもなく、白山もよく見えて快適だった。笈ヶ岳の石川県側はスッパリと切れていて雪もついていない様子がよくわかる。シリタカ山の1つ先のコルから県境尾根の少し手前にかけては大体稜線のすぐ左にしっかりとしたトレースがついており、時々薮が交じるといった具合。薮の度に着脱するのが面倒くさいせいもあり、今山行では一回もアイピケを出さなかったが、この辺りは左右が切れている上に無木立なので、万が一滑落するとどこまでも滑っていきそう。せめてピッケルだけでも出すべきだったのかもしれない。
シリタカ山から県境尾根に向かっている途中、岩底谷を挟んで反対側の斜面で、大きな音を立てて雪崩が起きているのが見えた。
県境尾根の手前に鋭い岩峰がそびえている。それを避けて左に斜面をトラばった後、薮と残雪が交互に現れる斜面を直上して行く。この辺りの山岸のRFは見事だと思った。ただ斜面のトラバリは滑落すると怖い。県境尾根に出ると、飛騨の山々が見えるようになる。北アや御嶽山の展望を期待したが、春霞のせいか見えなかった。ただ、視界がはっきりしている場合でもすぐ目の前にそびえる天生峠の連山に遮られて見えないのではないかと思った。全体的に飛騨側には加賀側よりも雪がしっかりとついている。トレースはずっと飛騨側についている。ほとんど薮コギなしの快適な雪稜歩きで笈ヶ岳の頂上に出られた。笈ヶ岳で長めにタルむ。大笠山からこっちに向かうトレースは遠くに微かに見えるのだが、笈ヶ岳では北に向かうトレースは見つけられなかった。
笈ヶ岳から見る、今まで来た稜線(手前)と白山(後方)。左に見えるのが問題の岩峰。
笈ヶ岳からの下りで、山毛欅尾山経由で登って来たという人に数人会う。やはり山毛欅尾山から冬瓜平手前までは薮コギらしい。しかし山毛欅尾山経由でも行けるということが分かった。山毛欅尾山経由で来る人は大抵冬瓜平でテントを張って、トラバースルートで来るらしい。
県境尾根から中宮方面への稜線に降りる際、稜線伝いに行ったら例の岩峰の真上に出てしまった。少し戻って、残雪伝いに急斜を下って往きに来たトレースに戻る。そこから先で何組もの中高年パーティーとすれ違う。というか自分たちを除くと中高年しかいなかった。200名山の威光は偉大である。シリタカ山からの下りで、唐木が西の方に浮かんでいる雲を見て、御嶽山じゃないかと言っているのがおかしかった。方角が正反対だよ。
長めのピッチを4回繰り返し、10:00前にサイト場に戻ることができた。ここから先ジライ谷コースと山毛欅尾山経由のどちらを使って降りてもいいような気がするが、自分の趣向で、山毛欅尾山経由で降りることにする。皆はジライ谷コースでさっさと降りたかったようではあったけど…。薮装を整えて出発。ここから先は基本的に薮で、所々でトレースや残雪が現れそっちに逃げるといった具合で進む。比較的はっきりしていて分かりやすい地形なので、迷うことはない。まだ芽吹きの前なので、薮もそんなに苦労しないで通れる。一番薮が鬱陶しいのは、1271P手前辺りだろうか。皆薮よりも、強い日差しによる暑さの方にまいっていた気がする。
山毛欅尾山頂上付近で雪が現れる。山毛欅尾山からしばらく残雪伝いに降りて、残雪が切れる辺りから赤布に従って少し薮をかき分けるとしっかりとした踏み跡に出る。ここからは踏み跡に従い、急斜を下る。1058地点の少し先で踏み後がはっきりしなくなるところがあるが、赤布を探して進むと、またすぐに踏み跡が見つかる。1000m付近では地面一面にカタクリの花が咲いていて、紫の絨毯を敷きつめたようだった。カタクリの花は春先に山に入れば、どこでも見かけることができるが、こんなに密生して咲いているのは初めて見る。更に下ると、カタクリの花は消えて新緑真っ盛りとなる。春は下の方から徐々にやってくるのだと実感させられる。貯水池から急な階段を下って林道に出る。今年は既にここまで車が入れるようであった。林道には、花が咲いていたり、すぐ脇に比較的大きな滝があったりとなかなか楽しかった。60分程の林道歩きで笥笠中宮神社に着く。白山比メ神社と白山奥宮(白山山頂)の中間に位置するから中宮というのだそうで、一時は本宮をしのぐ賑わいだったとか書いてある。今の静寂からは信じられないけど。中宮神社から集落の中にある新中宮温泉センターまでは、少し歩くだけで着いた。新中宮温泉センターは入浴料320円で石鹸代が30円。ここで下山連絡を入れて、往きにお世話になったタクシー会社(大和タクシー)に予約を入れる。ジャンボタクシーは既に予約で埋まっていて、小型2台に来てもらう。最初は鶴来まで乗せてもらうつもりだったが、小松市までとそんなに距離が変わらないそうなので、後の利便性を考え小松駅に行き先を変更する。新中宮温泉センターから小松駅まで小型1台で8920円。
小松駅前の定食屋で飯を食べて解散。小畑さんは小松空港からその日中に帰ったようだ。唐木と福村さんは小松で駅カンして翌日はくたかと新幹線を使って帰るようである。工藤さんはバスで帰ろうと携帯片手に悪戦苦闘していた。結局どうやって帰ったかは知らない。山岸は米原から東海道本線経由の鈍行で帰るとか言っていた。自分は迷いに迷った挙句、折角笈ヶ岳に登ったのだから鶴来にある白山比メ神社にお参りすることに決めた。その日のうちに鶴来まで列車で戻り、そこで駅カンし、翌日白山比メ神社参拝を果たして直江津、越後湯沢経由の鈍行で帰った。
◎ 今後ここを企画する人のためのアドバイス
・ 基本的に冬瓜山稜線までのジライ谷左岸コースと山毛欅尾山までの登りは道として考えて良い。ただジライ谷左岸コースは急登が多く細い尾根もあるので下まで雪がついているような場合(4月中旬以前など)は山毛欅尾山経由で行った方が安全だろう。地元の山岳ガイドの方によると、ジライ谷右岸の方が傾斜が緩く、案内するときはそちらを使うそうである。しかしネット上の他の記録を見ると多くの人がジライ谷左岸コースを使っている。
・ 山毛欅尾山から冬瓜平までは薮をかき分けて行くようなところもある。しかし笹が少なく、GWの時期だと木々がまだ芽吹いていないので薮をそんなにおそれる必要はない。また赤布なども豊富。今回は視界良好で迷うことは無かったが、稜線がいりくんでおり、地元の山岳ガイドの方によると、ガスが出たときなどは度々遭難騒ぎが起きるそうだ。
・ 往きに冬瓜平トラバースルートを使って、帰りは上から様子を見て冬瓜山に行くといったことはやめた方が無難だと思う。一番怖い冬瓜山山頂直下の垂直なところの様子はシリタカ山方面からは確認しにくい。冬瓜山稜線を行くなら今回のように一旦西側から下見をしてから行った方がよい。
・ シリタカ山から県境尾根までの間でアイピケを出すべきだったかもしれない。無木立の斜面なのでピッケルがないと滑落停止が難しいと思う
・ 県境尾根から中宮方面への稜線に降りる場合、稜線上をそのまま進むと岩峰の上に出てしまう。右側(岩峰の北側)の薮か残雪に逃げる必要がある。但し薮は笹と灌木の濃い薮で、残雪を行く場合は滑落に注意
・ 今回は天候が良かったのと、寡雪のおかげで特に危険な目に遭うことなく行けたのだと思う。別の機会にこの山域を出すとしたら、今の自分たちのレベルを照らし合せて考えると、難しいのは寡雪によるブッシュの露出よりも、多雪のときの危険箇所の通過だと思う。
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