山行No.18 丹沢玄倉川小川谷廊下
メンバー:4安達、3木村、L長谷川、2秋山、N山岸、1広瀬(初)
企画:長谷川
6/23(土)
21:30に松田駅御殿場線ホームに集合のはずだったが、自分と木村は集合時間に遅刻。松田駅22:05発、谷峨駅22:17着。事前に予約してあった山北タクシーの中型2台に乗り込む。玄倉林道を途中まで入ったところで、入山連絡を入れ忘れていることに気づき、タクシーに携帯電話の使える玄倉バス停まで戻ってもらう。タクシー料金1000円くらいプラス。高くついた電話代だった。穴ノ平橋の奥のトイレの前で各自寝る。
6/24(土)曇り後小雨、下山後本降り
4:20出発―(穴ノ平沢下降)―4:50小川谷出合― 6:05 F2上(タルミ)6:20―7:00ワナバ沢出合―8:50大コバ沢出合―10:00 F10上(タルミ)10:10―11:15道に出る(沢装解除)11:40―12:40穴ノ平橋(デポ回収)12:55―13:45玄倉バス停
4:20出発。東の空がピンク色に朝焼け。「朝焼けは雨の予兆」という不吉な言い伝えを思い出しながらの出発だった。トイレの方向から穴ノ平橋を渡ったところに沢に降りる踏み跡がある。この沢(堰堤には穴ノ平沢と書いてあった)を小川谷本流との出合まで下る。堰堤がたくさんある沢だ。最後の2~3つは左巻きだが、あとは全て右巻き。ほとんどの堰堤は梯子がついているが、一部グラグラしているものもある。
出合付近は平凡な河原だが、すぐにゴルジュが始まる。最初の2m滝は右壁をTR。次の5mCSは、左側が大きな水流で、右側がチョロチョロ程度。しかしのっぺりとした岩でよじ登るのが難しそう。自分は左側の大水流に2回挑戦したが、岩の上に攀じることができずに、あきらめて釜の中に滑り台で戻った。この段階で胸まで濡れた。トップ二人は、右側に立てかけてある流木やら残置やらを使って登り切り、F2(6m)上の岩を支点として三段階の手がかりTR。木村に言わせると、今回は50mザイルを持って行ったが、ワンゲル標準の40mザイルだと、今回のようにF2上から支点を取ると、ザイルが足りなくなるかもしれないそうだ。
5mCS(F1)
タルミの後、F3に至る河原歩きの途中で、水たまりに気味が悪くなるほどのオタマジャクシの大群を見つけた。水たまりの半分程の面積が、オタマジャクシで黒く埋められている。F3からF4にかけては適宜TRを出していた。
昨日のようなカラッと晴れた夏日を期待したのだが、空はどんよりと曇っていて、気温はなかなか上がらない。最初から水に浸かった自分にとっては、少々寒い。
F5辺りから再びゴルジュとなる。F5はヌルヌルとした右壁をTRで登らせ、そのままFIXで幾つかの滝を巻いた。TRとFIXを1本のザイルで行い、TR側の支点は、残置ボルトから取った。F7(大岩のある10m)は秋山が大岩の左端の残置を使おうとして、間違えて残置ロープを手の届かない場所まで投げてしまい、岩に立てかけてある流木に体重をあずけながらツルツルの部分を登るという際どいことをしていた。初心者はTR確保しながら左端の残置を使って登らせた。木村は水流すぐ左を行っていた。
石棚ゴルジュに入ってからの滝で、TRで通そうとしたときに、支点を見つけるのに苦労して、ハーケンを打つことも考えていたが、結局岩を支点にとるという場面もあった。F8、F9、F10(石棚)の3つの滝はF10上の木を支点として四段階のTR。これも50mザイルだからできる離れ業ではないだろうか。
ゴルジュ中の出合、左の沢は滝となって合流している。
F8~F10
F10を越えた辺りから小雨がぱらつきだす。F11(5m)は左壁をTR。最後のF12(樋状5m)で秋山は右壁に挑戦していたが、結局諦めていた。初心者は左側を木支点でTRを行った後、確保したまま残置ロープを使って沢床まで降ろした。F12上の堰堤は本当に大破していた。どうやったら、ああいう風に壊れるのだろう。壊れた堰堤を越すと河原になる。河原には幾つかのたき火の跡。皆ずぶ濡れになって遡行を終えた後は、焚き火をしたくなるのだろう。自分もずぶ濡れで、焚き火ができるのならやりたかったが、雨が少し強くなったのでさっさと下ることにする。木村は壊れた傘をさし、秋山は小型ザックの上からゴアマを着る(しかもザックの下半分はゴアマが冠っていない)というけったいな格好をしていて、自分らは明らかに異様な集団だった。
登山道は、最初はわりと明瞭だが、尾根を少し登る辺りから不明瞭になり、やがて笹の急斜面を下り、デッチ沢と本流との出合に出てしまった。デッチ沢の堰堤の手前に尾根に向かって直上する踏み跡があり、それを辿ると立派な登山道に出られた。この踏み跡は多分デッチ沢との出合で遡行を打ち切る人が登山道に出るためのものだろう。この時点で運動靴が泥だらけになってしまった。今度来るときは、林道に出るまで沢足袋で下った方がいいかも。
この後の登山道は想像以上に立派な道。幾つか分岐があるが、立派な方を取ればよい。穴ノ平橋でデポを回収して玄倉バス停まで歩く。自分らが玄倉バス停に着いた頃から雨足が更に強くなった。14:26の新松田駅行きのバスに乗って帰る。運賃は870円。松田駅辺りで適当な打ち上げ場所がないか探したが見つからなかったので、駅前の箱根そばを食べる。
まとめ
楽しい沢だった。やはり表丹沢と西丹沢は、沢の雰囲気が全く違う。
小川谷廊下の滝はのっぺりとした岩でできている上に、苔等が生えて更に滑りやすい滝が多く、登りにくいなという印象を受けた。しかしたいていの滝は下に大きな釜を持っていて、多くの滝はそんなに高度感は無いので、落ちても怪我をする心配はあまり無く、果敢に挑戦できる。今回はずっと曇り空で気温が上がらず、更に途中から小雨が降って来たので、初っ端からずぶ濡れになった自分にとっては寒かった。夏の青空の下、もう一度来たい沢である。
◎コラム:丹沢・シカ・ヤマビル
行きのタクシーの運転手さんによると、この近辺ではシカが増えているらしい。地元のハンター等により、駆除もなされているが、一応保護獣なので駆除頭数に制限がかかって効果はいまいちらしい。去年嫌という程連れて行かれた表丹沢では、沢中でシカの鳴き声をよく聞いたし、骨や糞もたくさんあった。今年になってからは、自分は表丹沢に行っていないが、行った人の山行記録などを読むと、表丹沢の沢中には今年シカの死骸が多くあるらしい。運転手さんによると、それらはほとんど餓死だろうとのことだった。そういえば表丹沢の林には、人工林とか広葉樹林とかの区別なく下草が少ない(というかほとんどなくて、ザレが露出しているところが多かった)ことが印象に残っている。この原因のかなりの部分が、シカが下草を食べ尽くしてしまうことにあるのは確かだろう。
シカの分布拡大についてまわる厄介者がヤマビルである。シカの蹄辺りには、肉が柔らかく穴になった部分があり、そこでヤマビルはじっくりと血を吸う。丹沢や静岡県の水窪辺り、房総半島などではシカの分布拡大に伴い、ヤマビルの分布も拡大している。今回行った小川谷廊下にはいなかったけど、去年は表丹沢麓の集落でもヒルが大量に見られたらしい。丹沢だけでなく、房総半島の養老渓谷近くにある東大千葉演習林にも沢沿いにはゾッとする程ヤマビルがたくさんいた。千葉演にはヤマビルを専門とする方もいて、その方の話の中で自分が面白いと思ったことを以下に書き連ねることにする。
ヤマビルは口にY字型についた歯を使って皮膚に傷をつけ、滲み出る血液にヒルジンという血液凝固抑制物質(血液凝固抑制とともに、痛みを感じさせない作用もある)を注入して血を吸う。この時血圧を利用して血を吸っているので、皿に血液を入れてヒルに向かって「さあ飲め飲め」と言っても飲むことはできない。また吸った血液中の水分の半分ぐらいは水蒸気として外に放出されるが、腹の中にたまった血液にもヒルジンを入れているので凝固することはないそうだ。ヒルの腹にたまった血液はいわば栄養のたっぷりつまった濃縮ソースであるといえる。1~2時間かけて体重の何倍もの血液(1mlくらい)を吸う。しかしヒルが離れた後もしばらく血が止まらないので、結果的に失われる量は2mlくらい。この量は人間にとってはなんともない量だが、ネズミ等はヒルによって失血死することもあるらしい。ヤマビルの天敵はまれに鶏がつつくくらいで、まだ見つかっていないらしい。防御策としては、シカの分布拡大を抑えるための柵の設置(シカは林業害獣でもある)くらいしかないようである。千葉演ではヒル除けのための塩靴下なるものを準備していた。要は塩水に浸けた靴下を履くのである。効果はあるようなのだが、どうも履く方の足までもしなびてしまいそうで気持ちいいものではなかった。
以下にヒルの卵塊の写真を載せます(2007年5月に千葉演で撮影)。この卵塊から1~8匹うまれてくるそうな
すいません、話がとんでもない方にいってしまった。ともあれ小川谷廊下はヤマビルもいないし(シカの骸骨はあったけど)、楽しい沢だから皆さん是非行ってください。
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