北ア 北又谷

日程:9月11日~14日
コース概要:
9/11 泊~(タクシー)~越道峠~北又谷入渓~又衛門谷出合先の広場
9/12 (宿泊地)~漏斗谷出合~黒岩谷出合手前
9/13 (宿泊地)~カナホリ谷~犬ヶ岳~栂海山荘
9/14 (宿泊地)~白鳥山荘~上路

エスケープ: 黒岩谷

装備:
ロープφ8.1×50m×2本、ハンマー&ハーケン、カラビナ&スリング適宜

参考資料:北アルプスの沢

メンツ:松田好弘(スクランブルアップ)、大木信介(信州大学学士山岳会)、山森康平(東大ワンゲルOB1年)

富士山ガイドの同僚と沢へ。二人とも僕より相当経験豊富で、おんぶにだっこの山行になってしまった。松田さんは京大山岳部OBで通称サオマン。服部文祥のお仲間らしい。大木さんは通称ボンド。料理がめちゃめちゃうまい。記録はとっていなかったので、ワンゲルにとって参考になりそうな所を詳細に書き、あとは簡単に書く。ワンゲル以外の人の文化は相当異なっている。





9/10
松田さんの車で東京から新潟経由で富山へ。レガシーはとても快適。会話も絶えない。松田さんはどうやら服部文祥さんの仲間のようで登山がいかつい。大木さんは白旗史郎の下で修業する写真家でもあり、趣味はトライアスロン、料理と多岐にわたる。とりあえず車内では自家製梅ジュースを頂いた。CDもPushim様とか言ってるかと思えば落語のCDを出したり、全く読めない方で楽しかった。笑えたのは3人ともびびって直前に別々にいろいろと買い物をしていたのだが、3人ともfinetrackの水かき手袋を購入していたことだ。どうもこの手袋は沢屋の琴線に訴えるらしい。


9/11 越道峠~又右衛門谷より先の河原▲1
越道峠から尾根を登る。明瞭な道。1097のピョコあたりから下降点を探す。ネット上の記録を見るに2回くらいの懸垂下降で降りられると思ったのだが、みな地図読みをなめて間違える。B型3人が揃うと適当過ぎだ。アイククライミング用の50mツインロープ(細くて軽い)をもっていったのだが、そのロープで5回も懸垂下降をして河床へ。捨て縄も3本くらい使う羽目に。最後ロープを回収しようとしたところ、途中の岩にひっかかり回収不能に。松田さんが登り返して回収。しかも最後の懸垂下降時にシャワー懸垂をしたおかげで山森は外付けしていた釣竿を紛失。愚かとしかいいようがない。結局魚止滝の手前に降り、一同予想以上に手強い沢だと気付く。身が引き締まる。
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最初の懸垂下降
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河床に降りる最後の滝

大釜淵には最初大木さんがトライ。しかしザックをしょったままで浮力が大きかったため時計回りの渦にからめとられ無限ループへ。ロープを投げて大木さんを回収。本人によると、渦にからめとあっれて溺れるところであったとのこと。実際過去にここでは死者が出ている。次自分が最初から確保してもらいつつ空身で取りつくが、ホールドがなく結局は跳ね返される。最後に松田さん。松田さんはなんとここをクリア。かぎづめのような道具を駆使していた。忍者のようだ。大木さんと自分は右岸を高巻いて反対側の谷に下りて本谷に戻る。泥壁が危なっかしい。
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松田さん大釜淵突破

又右衛門滝は直登る不能だったので恵振谷に少し入り尾根に取りつき懸垂下降を2回ほどして沢に降りる。草付き泥壁が非常にいやらしい。びくびくしながら登る。とてもじゃないが1年生は連れてはいけない。N権者も厳しいかも。L権+被養成者もしくは同等のNくらいがワンゲルで行く場合の基準ではなかろうか。ちなみに松田さんは黙々と、大木さんはやべーやべー言いつつ終始笑顔。おかしいです、おかしいですよ。
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又右衛門滝

急流の長淵あたりは空身にして確保しつつ泳いで突破。荷物はビナでロープにつけて引っ張り上げる。水の抵抗とあいまって非常に重い。しかし懸垂下降、高巻き、直登、泳ぎと総合格闘技感が漂い一同充実感を味わう。
一日目はその先の河原で休むことにする。大木さん、松田さんは釣りに出かけたがどうやら釣れなかったようだ。今回フードは全て大木さんが用意してくれた。日本酒2Lパック2本、キャベツ1個と食に関しては全く妥協を見せない。軽量化はどうしたんですか?w ちなみに調理は全て焚き火で行いその分燃料を減らした。ブイヨンスープにキャベツとトウガラシを入れて煮るだけで十分うまいことを初めて知った。ウィンナーも入れるとなおよい。飯は焚き火+飯盒で炊いたのだがかなりうまかった。これも発見。もう一品はマーボー春雨。もうお腹いっぱい。イワナで骨酒を作りたかった大木さんはたいそう悔しがっていたが、自分には十分。気持ちよく寝る。


9月12日 ▲1~黒岩谷出合手前河原▲2
明るくなってきてから出発。実はこの山行のためみなが買ってきたのは水かき手袋だけではない。自分はfinetrackの下着とウェットスーツを買いそろえたのだが頗る調子が良い。朝でも全く冷たくないのだ。ネオプレーンよりもすぐれていると断言してよいだろう。さらにネオプレーンよりも軽く、柔軟性に富んでいるので着心地もよい。ワンゲルは基本的に金がないのであまり買えないと思うが、もし買うのならぜひfinetrackを薦める。
白金滝は少し戻って左岸を高巻き。骨が折れるし、足場が悪いので神経もすりへる。全体的に急なので下降点を探すのにも気を使った。他二人は余裕そうだが、自分はいっぱいっぱい。
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白金滝

長持淵はいつのまにやらとっぱ。大変なところの写真ばかり載せているが、泳いで突破するところ、簡単な登りもたくさんありとても楽しい。沢の喜びが詰まっている。
テン場は黒岩谷の手前。懲りずに釣りをする。エサを市販のミミズから現地調達の川虫にしたらなんとこれが大当たり!いきなりつれた。自分も大木さんの二本目の竿を借りて釣った。大木さんは食に対する思い入れは相当なものだ。どうやら師匠の影響らしい。大人の登山だ。
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岩魚を釣った大木さん

逆に松田さんは軽量化に余念がない。寝袋、シュラカバ両方カットで、厚手のエマージェンシーシートで寝ていた。服も当然少ないし、防寒具も少ない。道具も極力少なめに。クライマーの鏡だ。
計5匹釣れた岩魚は塩焼き、刺身、燻製に。醤油の用意まであり感激。岩魚の刺身は弾力性が強く当たり前のことだが新鮮さが際立っていた。塩焼きの骨はしばらくあぶった後日本酒に入れてさらに温めると骨酒ができる。この時骨をよくいぶすことが肝心。生臭さをなくすために。風味がとてもよい。これも大木さんの教え。
前日と同じ野菜スープを飲みながら酒を飲み、岩魚をつまんでいるといつのまにかうとうと。しばらくして3人ともむくっと起き上がり、ちょうど蒸しあがったご飯を食べる。デザートが白米かw 実に豊かな食事であった。

9月13日 ▲2~犬ヶ岳~栂海山荘▲3
朝釣りをするが連れず。 
サルガ滝は右巻き。比較的よい巻き道だった
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サルガ滝

サルガ滝をこえると心地よい登攀の連続。突っ張ったり、泳いだり全身を使って沢を遡行する。それでいて危険ではない。素晴らし時間。魚影も濃く何度足を止めて竿を出そうと思ったことかわからない。
しかし試練は最後に待っていた。詰めは記録を見てもどれが正解か判断がつかなかったこともあり、簡単そうな所を選んで進んでいたら最後に草付きにぶち当たる。大木さんがフリーで30mくらいを20分くらいかけて登り後続を確保。セカンドは松田さん。その松田さんが言う

「大木さん、ホントにこれ登ったんですか?」

悪寒が走る。その不安は案の定的中。岩盤の上に薄い泥がかぶった最悪の泥壁でトップロープ+ゴボウでも大苦戦。足場がない。どんどん崩れていく。よく見ると先の二人は手で泥をかきわけて、足場らしきもの、を作って登ったようだ。自分もそれに倣う。アブミも積極的に使用したが、なんども滑落を繰り返し1時間くらいかけて登ったような気がする。確保してくれた大木さんには頭が上がらない。
松田さんはその間前に伸びていた。そこそこゲロい藪をこぐこと1時間半~2時間で稜線へ。ようやく一安心。栂海山荘へはすぐ着いた。無人小屋。宿泊無料。毛布あり。
甘酒を作ろうと酒粕まで用意していた大木さん。味の秘訣はちょっぴり塩を入れることだそうだ。ところが今回は塩を入れすぎて大分不満の様子。呪文のように「しょっぺなぁ」と何回も言っていたw
ちなみに志水哲也はこの沢を一日で遡行している。ありえないスピードだ。

9月14日 ▲3~坂田峠(ここからタクシー)
道。十分楽しんだので親不知に抜けずに坂田峠からタクシーで帰った。二人には世話になりっぱなし。感謝とともに反省。
戦はおわった.jpgさわやかな二人.jpg

反省
下降点をもうちょっと慎重に考えるべきだった。
体力・登攀力がほかの二人に比べて足りなかった。

まとめ
ヌビナイ右俣よりも難しい。今回は降雨後ということもあり草付が多く緊張感があった。最後の泥壁は南会津合宿の平沢のよりもまずい。でもその分楽しかった。あんなに存分に沢と格闘できたのは非常によい経験だ。ワンゲルでもし行くのならだいぶ注意が必要な場所だろう。(もちろんそれ以前にmaxの問題もある)
ワンゲルの活動に何か活かせるとしたら
・捨て縄
懸垂下降の際に。あり得ない仮定だがワンゲル初トレース初見下降なんて時は是非。
個人山行にも持っていくべき
・焚き火
うまく木を組めば調理に問題はない。燃料を減らせる。
・スパイク
泥壁が多いところには釣り具屋で売ってる足袋用スパイクなどがいいかも
・finetrack
ウェットスーツはおすすめ
・ハーネス
二人のハーネスは簡易版のもの凄い軽いやつだった。
グランドフォールをしない、懸垂下降用、という前提なら全く問題ないし、安い。
自分のハーネスは沢にはもったいないという指摘をうけた
・かぎ爪
釣り具屋かどっかで売ってる模様。リーチが伸びる。
・アイスハンマー
泥つきではありがたい。部用に一つか二つ買っておいたらどうだろう?


以上。ちなみにこの山行の前には法政山岳部の二人とナルミズに行った。外部の人と山に行くのはとてもよい勉強になる。

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