山行No.22 秋企画 北アルプス 剱・立山
企画者 大城
面子 3年 山岸 2年 sFW伊佐、L大城、sEH塚田 1年 E菊池、F鈴木、W長崎、H三谷
その険しい姿に惹かれ、前々から登りたかった岩と雪の殿堂、剱。そこに自分の企画で行くことができ、まずはとても満足している。一方で剱には八ツ峰、源次郎尾根など数々のバリエーションルートが存在する。今は無理かもしれないが、いずれはこれらのルートにもアタックしてみたいと思うようになった。剱の魅力は尽きない。
9/4(木)曇り
赤羽1040=2109上市▲0
赤羽10時集合。長崎がコッヘル特大大ではなく特大中を持ってきていた。必要に応じて個人のコッヘルも使うことにしてそのまま行くことにする(結果的に大丈夫だった)。日本海側に出ると黒い雲が立ち込めていてあまりテンションが上がらない。直接上市に行ってもいいのだが早く着き過ぎるので、いったん富山に出て夕食をとることにする。9時過ぎ上市着。ロータリー脇に屋根の付いた場所があったのでここで寝ることにする。今までもいろいろあったが今回の駅カンは自分の中では最悪のものだった。バイクの騒音に取り囲まれた上しつこく話しかけられ眠れるはずも無い。12時を過ぎようやく周りの人間がいなくなったかと思うと、今度は虫の容赦ない攻撃に耐えなければならなくなったのだ…。
9/5(金)曇りのち雨
▲0 0425=0505馬場島0512─0552 1000m付近0602─0653 1260m付近0703─0755 1600m付近0805─0856 1900m付近0906─1010早月小屋▲1
馬場島までジャンタク(旭タクシー)で入ることができた。まだ薄暗い空に小窓尾根と思われるギザギザのシルエットが浮かんでいて期待が高まる。体操して一年トップで出発。水3発だが良いペースで進んでいく。初めはやや急だが松尾平でいったん傾斜が落ちる。この付近のルートがエアリアと地形図で微妙に異なっていたのだが地形図の方が正しかったようだ。松尾平を過ぎると本格的な登り。カラマツの生えた尾根上をひたすら高度を稼いでいく。尚、この尾根は200m上がるごとに道標があるが必ずしも正確ではない。途中三谷がややペースダウンしていた。時折晴れ間がのぞき、振り返ると富山湾の海岸線が見えた。2050m地点では傾斜が少しゆるくなっており池糖もあった(ただし汚い)。さらに登って花崗岩のちょっとした岩場が出てくるようになると、すぐに早月小屋着。早月小屋のテン場代は500円/人でこれは後の2箇所も同様である。テント場の申し込みのため小屋に入ると水2リットル800円の張り紙。水はやはり下から歩荷すべき。テントを張ってしばらくは昼寝タイム。ところが昼過ぎから雨が降り出しテントに避難。一時的に雨足が強まった。2時からサイトをしてその後天図大会。皆だいぶ書けてきているけどもう少し練習した方がよさそう。明日天気が良くなることを願って6時頃就寝。
9/6(土)晴れのち曇り
▲1 0458─0558 2580m付近0608─0652 2770m付近0702─0755剱岳山頂0821─0920平蔵のコル手前トイレ0930─1012前剱1022─1118剣山荘1128─1155剱沢キャンプ場▲2
3時半起床でCCGを作るが非常に速い。朝なのに時間が余る。5時に小屋を出発。幸い天気は良く、どっしりとした山容の奥大日が右手の雲海に浮かんでいるのが見える。小屋を出てすぐ花崗岩質のもろい小さな岩場をいくつか通過する。持っている水が少ないためか昨日よりも軽快なテンポで進む。2500m付近でロープ付きのやや長いザレた岩場が出現するが滑らないよう注意して登れば問題ない。2600mを過ぎた辺りから岩場が連続するようになる。またこの頃から剱のごつごつした北壁が目前に迫ってきて迫力がある。エボシ岩手前まで特に問題となるような岩場はなかったが、山頂手前の一ピッチはシシ頭・カニのハサミなどの危険箇所を含むためトップを2年に交代する。さて、問題のシシ頭は岩塊を鎖を頼りに左から巻くが、巻き終わりの地点が最も恐怖感がある。一箇所スタンスが殆ど無い部分があり、岩に埋め込まれた一本のボルトを使用しなければ、次の足場までの距離が長く踏み出しにくい。またクサリはあるがホールドが少ない。一年はシシ頭手前から挟んでいたがここはさらに空身で通しても良かったと思う。ここを過ぎると相変わらず傾斜の急な岩場が続くが慎重に進めば特に難しいところは無かった。カニのハサミも問題なく通過。順調に進んで8時前山頂着。天気予報から展望はあまり期待していなかったが、北方稜線や大日連山、立山やさらには薬師など広く見渡すことができた。写真撮影をしたりフルーツを食べたりして長めにたるんだ。
下りも引き続き二年トップにする。別山尾根に入ると早月尾根から一転して登山者が多くなる。渋滞を予想して長めにコースタイムを取ったがこれは正解だった。一番の難所のカニのヨコバイは尾根を下り始めてすぐに現れる。足場はしっかりしているが最初の一歩を踏み出すとき足場が見えにくく下部は完全に切れ落ちているので恐怖感がある。ここは二年生に往復してもらい一年生は空身で通した。その間うしろの方では渋滞が始まっていた。全員が通過し終えた後、後続のパーティーを先に通す。待っていた時間も含め通過に30分近くを要した。ヨコバイの後はハシゴが続く。平蔵のコルから登り返しとなり遠目にはかなり高度感があるようにも思われるが実際に登るとたいした事はなかった。そのあとも断続的にクサリ場が出現するがあまり危険と思われる箇所は無い。前剱を右から巻く途中雷鳥発見。ラッキー。武蔵のコルからは危険箇所もないので再びトップを一年に戻した。ただしガレ場が続くのでやや慎重に進む必要がある。一服剱を越して程なく剣山荘着。剣山荘から剱沢キャンプ場までは短いがかなりのハイペースだった。剱沢キャンプ場周辺は工事をしており道が分かりにくい。ガスってきて雨が心配なので早めにテント設営。天場は広く快適。幸いこの日は殆ど雨は降らなかった。麻婆春雨を食べて早めに就寝。
9/7(日)晴れ時々曇り、一時雷雨
▲2 0458─0542別山南峰0551─0556別山北峰0604─0610別山南峰0614─0646 2860ピーク0656─0730大汝山0742─0836一ノ越0852─0930浄土山北峰1000─1024一ノ越1038─1129 2200m付近1139─1233 1800m付近1241─1330ロッジくろよん▲3
3時半起床。やはりサイトは早い。外を覗くと満天の星空。前日の予報が良くなかったのでちょっと驚いた。しかし、5時にテント場を出るとすぐにガスが出て剱は雲の中に隠れてしまった。今日もペースは速く別山南峰まで読みの半分で来る。山頂に着くとガスが薄くなり晴れ間も覗くようになった。南峰にザックをデポし空身で北峰ピストン。北峰は剱岳の絶好の撮影ポイントなのだが惜しくも雲の量が多く剱岳は一部しか見えない。続いて立山最高峰の大汝山を目指す。道はよく整備されて歩きやすい。が、このピッチはペースが速すぎであった。30分歩いてタルミ。この頃から再度ガスに覆われる。今日はどうも天候が安定しない。富士ノ折立を巻くとすぐに大汝山休憩所に着く。ここからわずかに登ると山頂である。山頂では後ろから来たご夫婦に写真を撮ってもらった。視界が無いので長居はせずすぐに一ノ越を目指す。尚、途中の雄山はトラバースしてそのまま通過(登る場合は登拝料500円必要)。一ノ越への下りに入って程なく雨が降り出した。ガレ場なのでスリップしないよう慎重に下りほどなく一ノ越に至る。一ノ越は下界に近い。ここで浄土山(OR)ピストンをするか迷ったが、雨がやみそうなのでサブ装を作り予定通りORに行くことを決定。浄土山への登りの途中向こうからきた登山者に話しかけられた。浄土山に登った後タンボ平を経て黒部湖へ下る旨を話すと「タンボ平で渡渉する沢は増水した場合渡れなくなるから山荘のオヤジに状況を確認した方がいい」と言われた。やや不安になる。この渡渉について考慮していなかったのは要反省。さて、浄土山山頂一帯は夏はお花畑になるのだがこの時期はイワギキョウなどがわずかに咲いているのみ。相変わらずガスっていてあまり気分が乗らないがとりあえず軍人慰霊碑のある浄土山北峰まで行きしばらくたるむことに。ところが山頂に着いて間もなく、一瞬にしてガスが晴れ360度見渡せるようになった。あまりの変化に唖然とする。すぐに下りるのはあまりにもったいないのでフルーツ缶を開け剱をバックに写真撮影。裸になっている人たちもいる。Lも興奮気味(思わぬ好天にです!)。各自景色を満喫した後、一ノ越に引き返す。登る時は分からなかったが龍王岳もなかなかかっこいい。
一ノ越に着き、先ほどの渡渉の件を山荘の人に聞くと、「これくらいの雨なら全く問題無い」との返事が返ってきたのでひとまず胸をなでおろす。あとは黒部湖まで延々下っていくのみ。雷殿分岐までの道はよく整備された登山道を行く(ちなみにエアリアでは雷殿との分岐が東一ノ越となっているがこれは誤りでその手前の尾根を乗り越す場所が東一ノ越)。雷電分岐を過ぎてしばらくタンボ沢に沿って下ると二本の涸れ沢を越える。川幅は一本目は狭く二本目はやや広い。確かに少しの雨なら問題ないと思うが長時間強い雨が降り続けば増水して渡れなくなるかもしれない。二本目の沢を越すとロープ付きの木の梯子を登り返す。梯子は部分的に朽ちているが登るに支障をきたすほどではない。ここから道は樹林帯に入る。樹林帯に入ると再びロープ付の梯子がありこれを下る。この先少し行ったところでまた雨が降り出した。しかも今度は本降りで雷を伴っている。雲の間から見え隠れする立山ロープウェイに沿って下っていくと2050m付近及び1800m付近でさらに二本の沢を渡る。いずれも涸れ沢であり最後の沢だけ幅が広い。この付近は道を覆うように笹が生えていたはずであるが、刈り払いが行われた模様で問題なく下ることができた。黒部平分岐からは雨も弱まりロッジくろよんに到着する頃には完全に降り止んでいた。
ロッジくろよんの離れにあるテント場にテントを張っている間、三谷は分離下山することに。末端までは伊佐が同行(この分離下山に関しては予定されており、L権者を末端まで同行させるという条件で了解をとっていた。ロッジくろよんでは携帯も通じ黒部ダム駅までの道は遊歩道であるが、途中の吊橋を緊急車両が通過できないためロッジを末端とする事が出来なかった)。今日の夜はサラミ入りビーフシチュー。明日の朝は遅くても構わないので、サイトの後は皆比較的遅くまで起きていた。若天から聞こえる伊佐の声がずっと黒部湖畔に響いていた。
9/8(月)曇り
▲3 0620─0655 黒部ダム駅
四六半とかなりゆったり。朝飯を食べた後出発までは黒部湖畔を散策したりして過ごす。テント場を出発して遊歩道を30分弱歩くと黒部ダムに到着。高度感があり放水も行っていてなかなかの見もの。ただ全体の規模が大きいためか水の勢いはあまり感じられなかった。昨日、三谷が売店にマップケースを忘れたらしいが売店で聞くと駅長室にあるということで回収。8時5分始発のトロリーバスに乗って扇沢へ。さらに扇沢からはタクシーで大町温泉郷に向かい唯一の日帰り温泉である薬師の湯で汗を流す。割引券を使い500円/人。その後バスで信濃大町へ向かう。打ち上げは信濃大町でする予定だったが店が見つからないので松本まで出てすることに。反省会をやって、あとは思い思いに帰京。
・まとめ
なんとも天候に翻弄された企画だった。しかしほとんどのメインピークでは晴れ、不調者も出ず予定通りのコースを完遂できたので良かった。岩陵帯の難度はほぼ想定どおりで、ほとんどの岩場は慎重に行動すれば特に危険ということはない。ただ前述のシシ頭の後半だけは一年を空身にしても良かったかもしれない。最大の反省点は一ノ越から黒部湖へ下る道の途中にある沢について考慮し忘れていた点である。幸い今回の程度の雨では水は殆ど流れないようであったが、万が一増水し渡れなかった場合のリスクを考えるとどのような沢であれ事前に情報を入手しておく事は不可欠である。また、この登山道全般の状況についてもう少し直前に問い合わせをすべきであった(刈払いの有無など)。
この山域は意外に部内資料が少なくエアリアを基本としたコースタイム設定をしたが、岩陵帯を除き読みよりかなり早いペースで行くことができた。タイム設定の面では少し無難すぎた感もあるが、これは読みが遅すぎたというよりも一年生の体力が新人練成の頃に比べかなり向上していることが大いに関係していると見た方がいいだろう。ORをもう少し増やしても良かったかもしれない(奥大日ピストンなど)。
久々のアルプスの雄大な景色を楽しむと同時に、夏合宿を経た一年生の成長を垣間見ることができた企画であったと思う。
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