夏合宿北アルプス縦走

2016年度の夏合宿道隊として、薬師岳から雲ノ平、鷲羽、水晶を越え、後立山連峰を白馬まで縦走する山行を企画しました。なんとほとんどの日が快晴で、北アルプスを存分に楽しみながら完遂することができました。個人的にも、1年のときの合宿と合わせると北アはほぼ制覇できたので満足です。
記 八嶋
五竜岳にて、TWVポーズ()


面子:4藤原 3sW深山L八嶋 2W大石E島田H武田F田嶋 1勝木曽根田

8/2 時々
新宿=富山
 バスは22:40発だったが、余裕を見てバスタ新宿に21:30集合。しかし遅刻しそうな人の筆頭、田嶋は集合時間のさらに1時間前に着いていたようだ。早くしすぎただろうか。バスターミナルには登山客と思われる人がたくさんいる。中には自分たちよりザックが大きい人もいて驚いた。話していた藤原さんによると、室堂から中房温泉まで10日間縦走するのだが、気が向いたら山でゆっくりするので20日間分の食料を持っているらしい。すごい。21:40頃には全員集合しEFチェックを済ませる。島田田嶋はEF表を紙の形で持っていなかったので、携帯から手書きで書き写していて大変そうだ。無事チェックを終えて後はバスを待つだけ…のはずだったが、ここで武田がお玉を持っていなかったことが発覚する。武田は「買ってきます」と飛び出していった。この時点で22:20。まあドンキとかに売っているだろうし戻ってこれるだろう、と思ったがバスが入線してもまだ戻ってくる気配はない。他の人全員が荷物を載せてもまだ来ない。同じ場所に10分毎に違うバスが入線するので、発車を待ってくれる望みは薄い。最悪武田以外で乗ってしまって富山で合流し、明後日入山にすることも考えたが22:40ちょうどに武田は戻ってきた。なんとか無事出発。ちゃんとお玉もGETできたようで本当に良かった。バスは4列シートだが、座席全体がスライドしてリクライニングするので後ろの人を圧迫することがないというスグレモノであった。それに各席に映画が見れるモニターもついている。これで他のバス会社より安いのだから最高だ。これは快適に寝れると思ったが、隣の島田がずっとジョーズを観ているのが明るくてなかなか寝付けなかった。外は雨が降ったりやんだりしていた。

8/3 
富山=折立7:20-8:10たるみ8:20-9:10たるみ9:20-9:251870p-10:05たるみ10:15-11:02たるみ11:12-11:40太郎平小屋11:55-12:12薬師峠キャンプ場
 5:10にバスは富山駅に着いた。入山連絡を入れた後、予約していたタクシーにザックを詰め込み、出発。折立までは1時間半ほど、ジャンタクで23900円である。梅雨明けからの不安定な天気が今日も続いていて、タクシーに乗っている途中も雨は突然強くなったりやんだりを繰り返している。今日は薬師岳はやめておいたほうがいいかもしれないと思った。ただ予報では翌日からだんだん安定してくるようで、期待が高まる。有峰林道は工事で片側通行になっている区間が結構多くて待たされた。藤原さんが「こういう工事って仕事を作り出すためにやってるんだろうな」というようなことを言うと、運転手さんは「私に言わせるとそれは違いますよ」と、有峰林道がいかに治水のために重要な道であるかを説明し始めた。この仕事を始める前はインドネシアで土木技師をしていたそうで、納得である。話を聞いているうちに折立に着いた。ちなみに電波は折立の直前のトンネルから入らなくなる。
 最初の1分間スピーチは勝木。順当に生い立ちについて話していたと思う。ガスの中をゆっくり登っていく。道はとても歩きやすく、北アの中でもかなり整備されている方だと思う。ただそれにしても荷物は重く、初日から肩が痛い。ジジイは全員カリマーのザックだったので、カリマーの悪いところを列挙しながら歩く。合宿中ことあるごとにカリマーへの悪口が噴出していた。深山が途中で足をつるなどしたものの、順調に太郎平小屋に着く。太郎平小屋ではペーターさんが働いていた。9月に飯豊連峰に行くそうで、シュラフを誰かに借りたいと言っていた。ガスっているので薬師岳は明日の朝晴れていれば行くことにし、薬師峠キャンプ場でテントを立てる。キャンプ場は水は豊富だしトイレは綺麗だしでいいところである。テントの受付時間になったのでお金を払いに行くと、小屋の方が「ペーターから預かった」と可愛らしいチョコレートをくれた。ありがたい。Lと藤原さんはサイト後に食べようと思って先に若テンに回したが、うまく伝わっていなかったようで田嶋が全部食べてしまったらしい。残念だ。今日のメニューは武田考案のアヒージョ。オリーブオイルとにんにくの香りが効いていて、絶品であった。ここで曽根田が予備食を300gしか持ってきていないことを聞いた。毎年予備食で誰かしらがミスをしている気がする。ちゃんと説明するように言っておくべきだった。
アヒージョ(おいしい)
 テン場にはTECKTECKのパーティがいた。リーダーの人が藤原さんと同学科なので前から知っていたのだが、雲ノ平までは一緒の行程である。そこから双六経由で新穂高温泉に下山するらしい。折立で前夜泊をしたら熊が出て大変だったそうだ。リーダーの人は実は武田の高校の同級生でもあり、「お前今“エロ充”って呼ばれてないの笑」と高校時代のアダ名を暴露されていた。合宿初日からネタができてしまってかわいそう。ちなみに“アダ充”というのもあるらしい。
心配だった天気だが、この日は雷などはなかった。藤原さんのヤマテンによると、翌日は中腹はガスだが稜線上は晴れるそうだ。今合宿中藤原さんのヤマテンには本当にお世話になった。大石の天気図を見ても高気圧に覆われていて悪くはなさそうな感じである。あまり疲れておらず暇なので、深山が体を張って勝木の好きなタイプを聞き出そうとしていたが、勝木は固く口を閉ざしたままだった。この日はオカンした人はいなかったはず。

8/4 のち時々
薬師峠キャンプ場4:30-5:35薬師岳山荘5:45-6:20薬師岳山頂6:45-7:20薬師岳山荘-7:35たるみ7:45-8:25薬師峠キャンプ場8:52-9:10太郎平小屋-9:42たるみ9:52-10:20左俣出合-10:45たるみ10:55-11:18薬師沢小屋-11:45たるみ11:55-12:40たるみ12:50-(ゴアマたるみ5)-13:40たるみ13:50-14:02アラスカ庭園-14:38雲ノ平山荘14:55-15:15雲ノ平キャンプ場
 34半。かぼちゃのペンネはあまり味がせず少しつらかった。空は晴れているので、まず薬師岳ピストンしてから雲ノ平に向かうことにする。Lと藤原さんにとっては、今日行く薬師と明日行く鷲羽、水晶は一昨年の合宿のリベンジも兼ねている。sub装で出発。初めは樹林帯の沢状の道を行く。すぐに限界上に出て視界が開ける。薬師岳のカールは大きく、北アルプスに来たんだなぁという感じがする。薬師岳山荘では深山と島田がバッヂを買っていた。山荘近くでは雷鳥の親子にあった。雛がかわいい。広い尾根のザレ場を登りきると避難小屋跡、そこからカールの淵のガレ場を進むと薬師岳山頂。吸い込まれるような青空でとても気持ちいい。下の方には昨日登ってきた有峰湖が見える。黒部五郎や槍の方もばっちりである。一昨年のリベンジ第一弾は成功。こんな風景が広がっているとは知らなかった。写真を撮り、しばらくたるんでキャンプ場に戻る。キャンプ場につき、デポしていた荷物を回収する。田嶋はパッキングが遅い。喋りながらパッキングするのではなく、喋るのとパッキングするのを交互に行うのでそりゃ遅いわという感じである。もっともこの時はLもなかなか入りきらなくて時間がかかってしまったのであまり人のことは言えない。
薬師岳山頂にて
黒部の山々を望みながら下る
足りない分の水を汲んで出発。薬師沢へと下っていく。やはり高度を下げるとどんどん暑くなる。島田が帽子も手ぬぐいもしていないので、「なにか巻くもの持ってきてないの?」と聞くと「パンツならありますけど…」と言ってきた。そうか。この先の小屋で手ぬぐいを買うように言った。暑さに加えて虫も多い。一昨年は天気が悪すぎて虫もいなかっただけで、北アにも虫はいるんだな。渡渉点はしっかりした橋がかかっていて、相当な大雨がふらない限り大丈夫だろう。地図を見る限り、このあたりは緩やかに下っていくだけかと思っていたが、意外と細かいアップダウンがあってすこし消耗した。下りきると薬師沢小屋。ここからだと雲ノ平は山にしか見えない。

薬師沢を渡る
薬師沢を吊り橋で渡って雲ノ平への登りが始まる。薬師岳ピストンを今日に回したからか、ここの500mの急登はなかなかにしんどかった。苔むした岩をよじ登っていくような道で、あまりここは下りたくないなぁという感じである。登るのも嫌だけど。途中武田がバテる。トレで1発無駄に歩荷していたようなので、捨てさせる。が、次のたるみで水がギリギリであることが判明して、捨てさせたことを後悔。ここまでは250mlで計算していたが、翌日からは300mlで計算した。登るに連れガスは出てきたが蒸し暑い。田嶋はズボンがずり落ちてパンツが見えていて、後ろを歩く深山に「なえる」と言われている。そんなこんなで2ピッチほどで登りきり、平らになってくると木道が始まる。その頃には空模様が怪しくなっていて、少し雨が降り始めた。ゴアマたるみをとったが15分ほどでやんだ。思えば行動中に雨が降ったのは2週間通してこの時と最終日だけだった。途中「アルプス庭園へ」と書かれた分岐があり、地図的にはここが祖母岳への分岐だろうかとも思ったが、雲ノ平には地図上にない分岐がたくさんあることもあり、この先に本当の分岐があるのだろうと信じて進む。と、そのまま雲ノ平山荘に着いてしまった。やはりアルプス庭園=祖母岳だったようだ。こんなところでOR完遂を逃してしまった。往復10分なのに…。下調べ不足だった。山荘から空身でピストンという考えが頭をよぎったが、なにより自分が疲れていたのでやめた。
 山荘には普通のビールに加えてよなよなエールなども売っていた。飲みたい。受付を済ませ、テント場へ。あまり大きいテントを張れる場所が残っておらず、張ってみてやっぱり無理だった、というのを2回ほど繰り返してようやくそこそこ広い場所に張ることができた。偶然にもTECKTECKのテントの近くであった。途中から晴れてきたので濡れた服などを干した。今日の夕飯は石狩鍋。美味しい。藤原さんはパンイチで食べていて、こぼして火傷しそうになったそうなので、パンイチで食べるのはやめたほうがいい。明日も行動時間が長いので、大西さん差し入れのアミノバイタルPROを投入して就寝。

8/5 のち
雲ノ平キャンプ場4:38-5:30たるみ5:40-6:00祖父岳6:18-6:55岩苔乗越-7:05ワリモ北分岐7:20-8:00鷲羽岳山頂8:28-9:08ワリモ北分岐9:18-9:30たるみ9:40-9:55水晶小屋10:10-10:40水晶岳山頂10:48-11:12水晶小屋11:23-12:03東沢乗越-12:13たるみ12:23-13:13真砂分岐13:25-14:08野口五郎岳山頂14:30-14:35野口五郎小屋-15:22たるみ15:32-16:12たるみ16:22-17:20烏帽子小屋
 曽根田の時計がポンコツだったらしく、15分寝坊したが、撤収は速く出発は遅れなかった。今日も晴れ。雲ノ平からは全方向に黒部源流の山々が見渡せる。やはり黒部五郎はひと目でそれとわかる形をしていて、またいつか登りたいなぁと思った。祖父岳までは50分読みだったが、1ピッチでは着かなかった。特にゆっくり行っていたわけではないので、この区間は長めに読んでおいた方がいいかもしれない。
雲の平の向こうに薬師岳

 祖父岳山頂には他大のワンゲルがいた。一斉にジャンプして写真を撮ったりしていて楽しそう。ケルンは一昨年来た時よりも数が減っている気がした。期待値を上げすぎただろうか。まあケルンはなくとも眺望は素晴らしい。雲海に浮かぶ黒部五郎が本当に綺麗だった。深山は肩がザック擦れしてかなり痛いらしい。今回は乾燥野菜をケチったあまり、F共装がとても重くなってしまったのでそのせいもあるだろう。見た目も痛々しいので水を抜こうかと思ったが、抜きたくないそうなので抜かなかった。
雲海に浮かぶ黒部五郎
 山頂を後にし、ワリモ北分岐でsub装を作って鷲羽へ。ワリモ岳を巻くあたりは下が切れているので注意が必要。トップ田嶋が結構飛ばすので山頂に着く頃にはかなり息が切れてしまった。sub装時のLはつらい。鷲羽も素晴らしい展望で、リベンジ第二弾も成功。360度山しかない。遥か北の方に烏帽子岳らしき岩峰も見えたが、一日で行ける距離には到底見えなかった。15分ほど経ったところで「あと10分」というとジジイたちに「もう飽きた」などと言われてしまった。今回のジジイたちは長たるみに厳しい。ただこの日に関しては長たるみする余裕はなかったので、ジジイたちが圧倒的に正しかった。結局30分近くたるんで山頂を後にした。下る途中TECKTECKとすれ違う。「あと10日頑張って」と言われた。そっかあの人たちは明後日には下山してるのか…。田嶋と島田はずっと世界史しりとり?をしていて、島田が「ルイ○世」を多用するので田嶋が「ルイ2世って何した人なんだよ、知ってんのかよ」とキレていた。水晶小屋からは水晶岳を空身ピストン。梯子が一箇所あるくらいで特に危険なところはない。あっという間に山頂。すこし曇ってきたが展望はまだある。第三弾も無事成功。リベンジはすべて達成された。ちなみにここが2986mで今合宿の最高峰である。「ワンゲルに入ってから一回も3000mを超えていない」と言って参加してくれた深山には申し訳ないが、今回は一回も3000mを超えない。藪隊は超える()。山頂は岩々していてくつろげるような場所ではないので、写真だけ撮って山頂を後にする。

鷲羽〜水晶の稜線
 水晶小屋からいよいよ白馬へと続く稜線に入っていく。初めはザレたヤセ尾根の下り。東沢乗越のあたりは北アで一番風が強いと聞いていたが、この日はそうでもなかった。しばらく行くと巨岩帯をトラバースするところがいくつかあるのだが、荷物が重いのでバランスをとるのが難しく、疲れる。軽ければぴょんぴょん飛べて楽しいんだろうが。野口五郎岳手前は歩きやすい砂礫の道。
 真砂分岐のあたりで、今日は烏帽子小屋まで行かず、野口五郎小屋に泊まらないか、という声がジジイたちから出る。皆疲れた様子だが、藤原さんと深山は体調があまり優れないらしい。とりあえず野口五郎岳まで行ってから決めることにする。野口五郎岳は稜線上を行く道の分岐を見落としてしまったので、巻き道を行き合流点から空身ピストンすることにした。合流点から山頂はすぐなので、巻き道を行ったほうが楽だと思う。山頂では「曽根田って野口五郎っぽい顔してるよね」とか言われていた。写真を撮ってから、今日のサイト場所をどうするか話した。停滞は翌々日の船窪小屋の予定だったが、隊の疲労は激しいので、烏帽子小屋まで行くにしてもそこで停滞することは決定していた。よって今日野口五郎小屋で泊まっても、明日烏帽子小屋まで進めば行程が遅れることはない。烏帽子小屋まで進む懸念点は、到着が17時近くになること、体調不良者がいることだった。烏帽子小屋まで進みたかったLは、前者は17時でも日の入り2時間前でまだ余裕があること、電波は通るので天図を取る必要はないことから大丈夫だろうと判断した。後者に関しても、特にしんどそうな藤原さんは「荷物を抜けば行けなくもない」と言っているので、荷物を抜いて進むことにする。ただ進むモチベーションは「小屋泊7000円を払いたくない」というだけのものだったので、隊のことを考えればこれはあまり正しい判断とは言えなかった。結果的にこれがこの後に大きく影響することはなかったのでよかった。

野口五郎の巨岩帯

 藤原さんの差し入れの餅を一足早く分配し、予備食をLが持って出発。水が1発足りないことが発覚したが、曽根田は今日ずっと闇ポリを歩荷していたらしくそれを使うことにした。強い。烏帽子小屋までは稜線上の砂礫の道をアップダウンを繰り返しながら下っていく。藤原さんは頭がくらくらするらしく「石とスパムの見分けがつかない」と言っている。冗談ではなく本当にしんどそうだった。島田も肩がかなり痛いらしい。烏帽子小屋に着く前にブロッケン現象に遭遇したので言ったら「虹なんてどうでもいいです」と言われてしまった。一方田嶋は何故か元気で一人しゃべり続けていた。当然あまりペースは上がらず、結局小屋に着いたのは17時半。急いで小屋で受付を済ませ、水を買う。1200円。明らかに硬貨を入れることしか想定されていない箱に5000円札をねじ込むのはなんとも言えない気分だった。小屋でアルファ米が売っていたので曽根田はここで調達したようだ。小屋には祖父岳で出会ったパーティーがいた。途中すれ違わなかったので鷲羽と水晶はカットしたのだろうか。テン場は斜面上に段々で整地されていて、我々は一番下の池のほとりに張った。小屋は一番上にあるので、トイレなどは不便だが仕方ない。20張との情報だったがもっと張れるように思う。今日の夕飯は島田考案のマッサマンカレー。田嶋は固形のルーだと思って割り振ったが、実際はレトルトのもので、1人で歩荷した島田はかなり重かったらしい。藤原さんが警戒していたが、カレーと言っても全く辛くなく、スープのようなものだった。美味しかった。藤原さんは微熱があるようで、明日の停滞でゆっくり休んでもらう。サイトの間、近くのテントの人に「何時まで騒いでんだよ、あんなに遅く到着して」と強く怒られてしまった。確かにジジ天も若天もかなりうるさかったと思うので反省。そもそももう19時半であった。
ヤマテンによると明日明後日も晴れるそうだ。夜テントから出ると遠くの空で雷が光っているのが見えた。曽根田がトイレに並んでいる時に「あの光なんですかね」と女性に話しかけられていたのを、深山は「曽根田がナンパされていた」と形容していた。島田と武田はオカン。

8/6 
終日停滞
停滞
 6時起床。日差しが暑くて起きてしまった。この日は一日中快晴で、どうやって日差しを避けるかということばかり考えていた気がする。小屋近くの展望台ではauも電波が入ったので天気予報を見てみると、下界の大町は下山予定日の8/15まで10日間ずっと晴れであった。ただ台風が近づいているようで、予報では9日に最接近と言っている。いまのところ強風域の西の端をかすめる程度なので大丈夫だと思われた。予報が変われば針ノ木小屋から扇沢に一旦下山してもよいだろう。今日の大町の最高気温は35度で、山の上がこんなに暑いのも納得。あまりにも暑いので小屋の軒下に座ったり、藪の中に体を入れたりを繰り返す。結局6天のフライを外して中にいるのが一番涼しいということに落ち着いた。6天は出口が2つあるので風が通る。各自本を読んだり地図を見たりして過ごす。島田はここで手ぬぐいを買っていて、首まで覆うために農家のおばあちゃんのような巻き方をしていた。武田はずっと外で寝ていて、腕の色がワンゲル肉のようになっている。藤原さんは去年の大雪に引き続き餅を焼いていた。美味しい。デポにも餅を入れているので今日消費し切りたいそうである。深山の差し入れの野菜ジュースも飲んだ。再び勝木の好きなタイプを聞き出そうとしたが、勝木は好きな色すら答えてくれなかった。

よく寝れるなぁ…

 夕飯は武田考案のチーズリゾット。翌日使う予定のミートボールが要冷蔵のもので、すこしやばそうだったので入れることにした。すこし米は固かったが十分美味しい。武田考案のメニューは合宿通じて特に美味しかったように思う。サイト後に天図大会。曽根田はそこそこうまかったが、勝木はまだまだという感じである。島田の天気図は高気圧と低気圧の等圧線の間隔が一定になっていて気持ち悪い。指摘したら、「そんなこと言われたことないっす」といっていた。その他の二年会もHLの文字が小さいなど改善点はまだまだあったようだ。18時頃になるとようやく涼しくなってきて就寝。

8/7 
烏帽子小屋4:40-5:06烏帽子岳分岐5:08-5:25烏帽子岳5:40-5:56烏帽子岳分岐6:06-6:53南沢岳7:03-8:03不動岳8:13-9:03たるみ9:13-10:08たるみ10:18-10:552459p11:05-12:10たるみ12:20-13:20船窪乗越-13:25たるみ13:35-14:00船窪テント場
 34半。明るくなるまで待つ。今合宿では毎日4:15くらいには撤収は完了していた。1分間スピーチは勝木で、さいたま市のゆるキャラ「浦和うな子ちゃん」の話。今日も雲ひとつない快晴で、朝靄から出てくる朝日が綺麗だ。途中で関西弁のおじさんに出会った。深山を見て「おっ、紅一点かぁ」となぜか嬉しそう。「女の子には重要な役割があるからなぁ」だそうである。
 
烏帽子岳へ

 分岐にザックをデポし、空身で烏帽子岳ピストン。烏帽子岳は山というより稜線から飛び出た岩という感じである。山頂直下には鎖場と少し高度感のあるトラバースがあるが、空身なので楽。真の山頂はつきだした岩峰で、一度に入れるのは一人か二人という感じである。交代に登って写真を撮る。登ってみるとかなり高度感があって少し怖いが、何もかも見渡せる大展望。このピークはとても楽しかった。

烏帽子山頂にて
 分岐に戻り、烏帽子の田圃と呼ばれる、池塘が点在するところを通って行く。花もたくさん咲いていてきれいだった。そこから少し登って南沢岳。ここも展望がいい。この頃になると左側には五色ヶ原や立山、眼下に黒部ダムが望めるようになった。槍もずっと見えている。南沢岳からはアップダウンの激しい道が始まる。2年会の中では標高差を「土合」という単位で測るのが流行っていて、「3土合も登るじゃん」などと言っている。ちなみに1土合≒70mである。
 
烏帽子の田圃


 不動岳付近からは東側斜面が劇的に崩壊している。歩みを進めると砂がさーっと谷に落ちていくので、この一歩一歩が崩壊を進めているのだということが実感できる。ただ本当に激しく崩壊しているところでは西側の樹林帯に道が付けられているので、2459pまでは特に危険箇所はなかった。今回は早めにヘルメットをつけてしまったが、つけるのは2459pからで良いだろう。暑いし。途中勝木が滑って藪に突っ込む。指を切ったようなのでへルボを出した。2459pからはロープがかけられたトラバースや急下降が現れる。2459pから船窪乗越までがこの区間の核心である。1年会と田嶋を挟んで進む。高度感があるところではないものの、ザレていて足場が滑りやすいのが怖い。長いロープの下りなどは一人ずつ通すので、どうしても時間がかかってしまう。そういうところではセカンドの深山が適宜下り方の指導をしてくれた。特にフォールラインにはいらないことなど、Lがあまり考えていなかったことも言ってくれてありがたい。途中、ザレたトラバースで島田がロープを握って立ったまま2mほど滑っていったのでヒヤッとした。13年のFBを見ると宮田さんもおそらく同じ所で滑っているので、そんなに危なそうな場所には見えないが要注意かもしれない。島田は危険区間をあまり怖がらずにひょいひょい行こうとしたがるので、もう少し慎重になるよう注意する。船窪岳への登りにさしかかるとさらに道は険しくなる。ロープに加え梯子も出てくるのだが、木製で体重をかけるとミシミシなるのでなんとも頼りない。隣には壊れたと思われる梯子が放置されていてますます不安である。13年に鳩貝さんが折ったとかいう梯子だろうか。
崩壊している
 クライマックスの、崩壊中のやせ尾根を通過する箇所は予想以上に両側が切れ落ちている。足場は例によって滑りやすいので、見ているのも自分が通過するのもかなり怖い。深山がかけてあるロープを使って田嶋にfixで通過させようとしたが、結び目を移動させるのに手間取っていてむしろ危なそうだったのでやめた。遠くから見るとただの樹林帯の山なのにあまりに危険区間が多いので、田嶋は「卑怯な山だ」とか言っていた。やっとのことで船窪テン場に着く。小屋は片道20分と離れていて、テン場にいた老夫婦が「小屋に行くからついでに幕営料払っといてあげるよ」と言ってくださったが、小屋に行ってみたかったのでお断りした。藤原さんとLで向かう。船窪小屋は他の小屋と違って、囲炉裏を囲むようなアットホームな感じの場所であった。電気を使わない「ランプの小屋」として有名で、小屋目当てで来る人も多いそうだ。まあ今日のコースを見るにあまり山目当てで来る人はいなさそうである。実際烏帽子~船窪は北アで一番入山者がすくないらしい。小屋でLは手ぬぐい、藤原さんはワッペンを買った。
 藤原さんとLで小屋に行っている間に深山と下級生は水汲みに行っていた。北アで一番危険な水場、との事だったが、ロープを使ってザレた斜面を下っていく確かに危険な場所らしい。まあちゃんと登靴を履いてザックを持っていけばそんなに問題はないそうだ。藤原さんとLも後で汲みに行ったが、船窪周辺の道と同じようなザレ場なので、テン場だからといって油断しなければ大丈夫なように思った。テン場はあまり広いスペースはなく、ここは逆に公称の10張も張れないんじゃないかという感じだった。一旦2つともテントを張ったが45天の方は岩がゴツゴツしていたので、八嶋深山島田武田田嶋がオカンすることにして45天はたたんだ。明日からもずっと晴れの予報である。9日は台風の影響でガスが出て風も強いようだが、大きく崩れることはなさそう。下界が近づいているのでここから先電波は大体どこでも入った。夕飯はミートボール鍋改め焼き鳥鍋。若天では就寝前に曽根田が朝サイトの役割分担を自分からしていて感心。夜は星が綺麗だった。

8/8 のち
船窪テン場4:40-5:38たるみ5:50-7:10北葛岳7:25-8:08北葛乗越8:18-9:35たるみ9:45-10:43蓮華岳山頂11:03-11:43針ノ木小屋
 七倉岳へ直登するルートはやはりわからなかった。というかないと思う。小屋手前の分岐を左に行き、七倉岳へ。今日は少し雲が出ているが、その分朝焼けが美しい。しばらくヤセ尾根を行く。鎖場もところどころあるので、ヘルメットをつけて一人ずつ通す。このあたりはこだまで声がよく響くので、鎖場でのコミュニケーションにはすこし苦労した。七倉乗越手前には長い鎖場と梯子がある。北葛岳は展望がよい。下界もかなり近くに見える。島田は「下山したい」と言うのを禁じられているので「シモヤマしたい」と言っている。蓮華岳も目前に見えるが、ここからは300m下って500m登らないといけないので大変である。北葛岳から下るに連れ蓮華岳の鎖場が見えてくる。おばさま集団が下ってくるのが見えたのでしばらく乗越で待ってから登り始める。ここでは目を行き届けやすいという理由で4人と5人に隊を分けた。その意味では良かったのだが、鎖場の上では対向者を9人分待たせてしまったので、すれ違いの面では完全に別々の隊として進むか、9人同時に進んでしまうかどちらかにすべきであった。危険区間での対向者とのすれ違いはこの先も大きな課題となった。鎖場自体は鎖をほとんど使わずに登れるくらいの難易度だったが、今までより高度感はあるので慎重に進んだ。田嶋にとってはここがいい岩トレになったらしい。鎖場は1ピッチほどで終わり、その先の登りはガスがかかっていて涼しく順調に進む。蓮華岳山頂では烏帽子で出会った関西弁おじさんに再会した。今回烏帽子蓮華をつないだことで、あと鷲羽と水晶に行けば北アはほぼ制覇するらしい。山頂では奥さんとビデオ通話をしていて、カメラをこちらに向けて「ほら、女の子もおるやろ?」と言っていた。よっぽど深山が気に入ったようである。山頂周辺はコマクサがたくさん咲いていてとてもきれいだった。
 
蓮華岳へ
蓮華岳から特に何事もなく針ノ木小屋に下る。小屋で受付をするついでに、扇沢方面へ下る水場が出ているかどうか聞いた。出てるけど遠いよ、ここで200/㍑で売ってるよ、と言われたが、若いので汲みに行くことにする。ジジイ3人と島田で行った。片道30分ほどかかる、との事だったが、15分ほど下ると沢に出合った。公式な水場なのかはわからないが、十分水は出ているのでここで汲む。ついでに体やTシャツも洗った。髪も水で洗うだけでだいぶ爽快さが増す。他の人も使う水場だったらできなかっただろうからむしろ良かった。ここでも下山中の関西弁おじさんに会った。個人的に針ノ木雪渓が見たかったのだが、寡雪のせいか遥か下に白いそれらしきものが見えるのみであった。水場からの登りは20分位だったので、小屋で買った場合の差額を時給換算すると1500円。意外と悪くない。
水場
 テン場に戻ると大石が「お知らせがありまして…」と言ってきた。聞くとペグを外付けしていて落としてしまったらしい。この先のテン場も石が豊富だったのでそこまで困らなかったものの、場合によっては結構困るミスであった。今日の夕飯はフォー。よく考えると米×米の組み合わせではあるのだが、合宿で拡張された胃にはとても嬉しかった。今日もテン場はとても暑い。予報では明日は午前中はガスで風が強いものの、午後から段々回復するそうである。武田はオカン。夜は風がかなり強く、夜中にフライが外れたので張り直した。武田は大丈夫だったんだろうか…。

8/9 
針ノ木小屋4:35-5:25たるみ5:35-5:40針ノ木岳-6:26スバリ岳6:36-7:33たるみ7:43-8:05赤沢岳-8:39たるみ8:49-9:00鳴沢岳-9:31新越山荘9:52-10:45たるみ10:55-11:32種池山荘11:53-12:34爺ヶ岳12:47-13:21冷乗越-13:31冷池山荘

この日はガスガス
 起きると、直したフライがまた外れていた。ガスの中を出発する。1ピッチ目のトップ大石のペースはゆっくりでよい。針ノ木は何も見えないのでスルーした。針ノ木の下りは急なガレ場で注意。針ノ木から新越山荘の間は痩せ尾根のがれた道が続く。ピークがたくさんあり、アップダウンが続く割には何故かそれほど疲れなかった。稜線上はガスガスだが、下は晴れているようで、時折扇沢の駐車場の車がきらめいているのがわかる。鳴沢岳付近にはニホンザルがいた。針ノ木小屋で聞いた話によるとサルは最近上がってくるようになって、雷鳥を食べてしまうらしい。北アで猿を見るとは思わなかった。新越山荘で少し長たるみ。新越山荘から種池山荘の道は、一転して土の道で歩きやすい。いいペースで進む。種池山荘では扇沢から上がってきたと思われる親子がバーベキューをしていて、「ゾンビになっちゃいそう」by田嶋。同感である。追い打ちをかけるように目の前のテーブルの人が頼んだピザが届いたので、一同後ろを向く。チーズの匂いは殺人的だった。勝木は指が靴擦れしているらしく、よく聞くと噂の藤原さんのパッドを貼っていた。山荘から緩やかに登って爺ヶ岳。中峰だけピークを踏んだ。結局この日は一日中ガスで風も強いままであった。下って冷池山荘へ。デポの時は素晴らしい天気だったが、今日は視界ゼロ。小屋とテン場は歩いて78分と離れているので、まずテントを張り、ザックを空にしてデポ品を回収しに行った。一昨年の合宿ではデポ品のダンボールを小屋で燃やしてもらったこともあり、Lは燃やしてもらえることを期待していたが、それは叶わなかった。ちぎって歩荷することにする。箱が無駄にならないいい方法はないものだろうか。
 夕飯はすきやき。レトルトなので肉の形をした肉が入っている。種池山荘で肉欲が刺激された後だったので嬉しかった。深山の差し入れのうずらも入っていておいしい。武田の顔があまりに黒いので、「1日外出券で地下労働施設から出てきたの?」と藤原さんがいじっていた。帝愛グループはまだ迎えにこないらしい。Lは元ネタを知らなかった。夜、ジジ天では「深山は実はあざといのではないか」という話題で盛り上がり、深山のあざとい()仕草が次々と発見されていた。

8/10 
終日停滞

雲海

 6時起床。4時半頃起きると雲海がとてもきれいだった。南アの向こうに富士山まで見える。朝食のスパゲッティはソースが5種あり、どれがかけられているかはお楽しみというものであった。Lはミートソースで、数日前のメニューと同じだったのでがっかりした。Lは武田に手伝ってもらってここで差し入れのホットケーキとプリンを作った。牛乳の代わりにデポしておいたアーモンドミルクを使い、ホットケーキミックスやプリンの素と混ぜるだけ。プリンはかなり濃厚で、藤原さん曰く「プリンというよりpuddingって感じ」。アーモンドミルクはかなり余ってしまったが、そのまま飲むととてもまずくて消費には苦労した。深山は小屋前やテント場を通る人々に話しかけては、余ったようかんやらたべっ子どうぶつやらを配っていた。「ようかん配りの少女」として今頃話題になっているかもしれない。夕方頃鹿島槍から帰ってきた人に、「朝はお菓子をありがとうございました」と仰々しく感謝されていたのには笑った。
ホットケーキを焼かされている

 昼ごろから藤原さんの提案で前半の反省会をする。確かに合宿前半のことは忘れがちだし、この先は危険区間が続くのでやってよかった。昼過ぎにはマカルーを背負った集団が現れた。藤原さん曰く、「ザックの種類が揃っているのは山岳部、バラバラなのはワンゲル」。果たして日大の山岳部であった。劔で雪訓をし終わり、これから親不知まで縦走するそうである。到着すると同時に体操を始めたので観察すると、内容は大体ワンゲル体操に似ている。ただ最後の体調を聞く部分で、「体調どうですか」と聞くと一人ひとりが「大丈夫です」と答えていて、ワンゲルのよりなんだか締まりがいい。明日からこっちにしてみようかな。田嶋は体操の声を聞いてこれから出発するのかと思ったらしく、慌ててテントから出てきたので笑った。夕飯はほうとう風鍋。デポしたかぼちゃが大きく主張していて、濃厚なかぼちゃ汁といった感じである。Lはブキの関係でプリン味のご飯を食べることになってしまい、とてもつらい。
 明日は山の日だからだろう、昨日よりテン場は埋まっている。藤原さんはテン場にいた単独行のクールな女性に心を奪われていた。冷池のテン場は連泊割引があり、通常700円のところ500円で泊まれる。今日は深山八嶋武田がオカン。トイレに行く途中の日大山岳部に「え、なんでこの人外で寝てんの」と言われてしまったが、この日の星は本当に綺麗であった。

8/11 
冷池山荘4:47-5:30布引山5:40-6:20鹿島槍ヶ岳南峰6:35-(北峰ピストン)-7:30北峰分岐7:40-9:50キレット小屋10:15-11:52口ノ沢のコル12:02-(たるみ2)-15:10五竜岳山頂15:40-16:37五竜山荘
 34半。トイレが遠いので出発は少し遅くなってしまった。体操では日大を見習って「体調どうですか」と聞いてみたが、ジジイしか答えてくれなかった。いいペースで登っていく。この日は朝だけ風が強かった。2ピッチ弱で鹿島槍南峰。今まで登った山、これから登る山が全て見える。遠くには海に能登半島も確認できた。本当に大展望であった。
鹿島槍山頂にて

 寒いのでたるみもそこそこに北峰へ。南峰からの下りはザレた急下り。田嶋は高度感のある岩場よりも、滑りそうな下りが怖いそうで、ゆっくり進んでいく。北峰は分岐から空身ピストンし、いよいよ八峰キレットである。初めの下りは急なガレ場。田嶋は「度し難い」と言っている。勝木も怖がっているのでゆっくり下る。下り方に迷うようなところでは今まで通りセカンド深山が的確に指示を出してくれる。岩場でのトップは歩き方が安定している大石と武田で回した。核心部では9人の隊のまま進んだが、これまで通り慎重に一人ずつ通したので後ろにかなり渋滞ができてしまう。対向者もかなり詰まっているようで、深山が「少し待っていてください」と言っても、「うまくすれ違いますんで」と言って来てしまうらしかった。よりにもよって岩を細いスタンスで巻くところですれ違おうとするので、上から見ていてかなりヒヤヒヤした。鎖場の下りも、こちらが一人ずつ通してもしびれを切らして下からどんどん登ってくるのであまり意味がなくなってしまう。今までの安全基準で進むのは難しいと感じた。ただ実際9人が危険箇所を通るのに、長いところで10分以上かかってしまうので、他の登山客がイライラするのも当然といえば当然だった。なんとかキレット小屋まで下り、後ろの人々に一気に抜いてもらう。すいませんでした。
 
八峰キレット

 
五竜へ

 怖がっているから水を抜いたのに、田嶋は自分用の闇ポリを持っていた。けしからん。すれ違いはともかく、核心部自体の難易度は大したことはない。切れてはいるが、道はしっかりしていて不安定なところはないので、足元を確認して普通に歩けば大丈夫である。キレットよりもここからの五竜の登りが怖かった。緩やかな登りと急な下りを繰り返す道で、梯子や鎖場が随所にある。最後の方はガレ場をよじ登っていくので落石も怖い。特にG5のあたりはかなり高度感があり、注意が必要である。やっとのことで五竜岳にたどり着く。苦労した分このピークは嬉しかった。いつもは午後になるとガスってくるがこの日は晴れている。人徳を感じた。振り返ると鹿島槍の双耳峰がとてもかっこいい。北の方には日本海がより近くに見える。これから行く白馬もよく見える。そして真下には…五竜山荘のテント場が埋め尽くされているのが見える。あぁ…。もう急いでも無駄なような感じだったから気にしないでゆっくりたるんだ。島田がミカン缶を出してくれた。TWVポーズで記念撮影。勝木はかなり膝が痛いらしく、岩場の下りが辛いとのこと。天気にはしばらく恵まれることもあり、明日無理に不帰を通過することはないだろう、と考え、翌日は天狗山荘までの予定を唐松岳頂上山荘までに縮めることにした。深山は誕生日に不帰を通過することになり、「これでフラグが立った」と縁起でもないことを言っていた。
五竜より白馬方面

 五竜山荘につくと「テントの受付は終了しました」と書いてあって僅かな希望が打ち砕かれる。野口五郎であんなに無理に小屋泊を回避しようとしたのに、結局することになってしまった。一人6900円也。聞くとテント場は12時頃にはほぼいっぱいになっていたそうだ。アクセスがいい後立山のテン場は毎年こんな感じだということ。ましてや今日は山の日である。山の日記念とかで山荘の手ぬぐいをもらえたのが唯一の救いだった。しかし深山はその5分ほど前に自分で手ぬぐいを購入していたので悔しそう。小屋泊もかなり混雑しているようで、物置として使われている二段ベッドの下段で寝させてもらうことになった。小屋の自炊場ではビールを片手に人々が談笑していたので、小屋前のベンチでサイトする。風が強くてめちゃくちゃ寒い。メニューはクリームシチュー。チキンのスパムなるものを誰かが持ってきていた。フランス産のものらしい。普通のものより高たんぱくで安いそうなのでいいかもしれない。冷池でみた単独行の女性がここにもいて、ジジイたちの勝手な妄想が繰り広げられていた。女性にとってみればひとことも喋ったことがない人たちにこれだけ話題にされているのだから、世の中は気持ち悪い。寝床はザックを置くスペースがないので、ジジイ3人は荷物を詰めたままのザックの上で空中戦することに。Lは腰の部分が隙間になっていてあまり寝られなかった。床に直接寝ていた人もかなり狭そう。6900円払って空中戦なんて、貴重な体験をしたものだ。

山荘前でサイト
8/12 
五竜山荘5:36-6:28たるみ6:38-7:29たるみ7:39-8:40唐松岳頂上山荘
 朝サイトは自炊場でした。自分たちが寝ていたところに荷物を置いていたおじさんが、自分の靴がないと言って焦っていたが、結局見つかったようだ。不慣れな小屋泊で撤収は時間がかかった。小屋泊だと水はただで汲めるので、意地で唐松で使う分も含め全発汲んでいく。今日も人が多いが、牛首の岩場では藤原さんや深山が100mくらい先にいる人に「そこで待っておいてください」と大声で伝えてくれるので、待ち時間は多いもののスムーズに進むことができた。1年も岩場にそろそろ慣れてきたように見える。岩場自体は大したことはないが、岩が少しもろいので注意。唐松岳山荘は大きくてホテルのように綺麗である。売店ではなんと登山靴も売っていて、深山と「どんな人が買うんだろう」と話していたら隣の女性が買っていったので驚いた。明日どうせ通るのだが、天気も良いのでテントを張ってから唐松岳を空身でピストン。大展望。百名山を数えてみると12個見えていた。不帰も間近に見えて田嶋は「生きて帰れるだろうか」と言っている。ゆっくりした後、テン場に戻ってサイト。今日はささみ汁。ホッとする味だった。
 
不帰を望む
食べながら不帰の通過方針をジジイと話し合う。今までの経験から、隊を分けるなら危険区間の最初から最後まで別の隊として進むべきだということは分かっていた。不帰は今までよりもすれ違い時の待避場所を見つけるのが難しい、との予想から、L3人×3にパーティーを分けて進むことを提案した。一昨年の夏合宿の大キレットでは二人ペアで進んで、それが割とうまく言っていた記憶があったこともある。しかし深山にそれだと事故時に対応できる上級生が少なすぎると指摘され、4人と5人の2つに分けて進むことになった。結果的に不帰はギリギリ5人だと待避できる場所が割とあり、この分け方でよかったと思う。もしもの時の隊同士の連絡は、電波は通じるので電話でしようということになった。隊を分ける区間は、核心部を挟む二峰南峰
一峰とした。二峰南峰も一峰も9人集合できるスペースがあるからである。
 八峰のときから田嶋のザックが明らかに傾いていたので、サイト後深山によるパッキング指導が行われた。パッキング以前に着替えなど無駄歩荷が多いらしい。それでも直して背負うとほぼまっすぐになった。当の田嶋は「重心以外変わった気がしない…」と言っていた。それはそうだろう。終わったかと思いきや、ザックの中身をまた全部出した。時間を測ってもう一回やってみよう!ということである。大先生の大先生たる所以を感じた。その間テントの中では勝木が藤原さんに、膝のストレッチのやり方を教わっていた。勝木は相当に体が固かった。その後全員で不帰の危険区間の復習。不帰はもちろんだが、その後の天狗の大下りで落石に注意が必要なことを確認した。曽根田が持ってきた北アルプスの本は写真がカラーで参考になる。日はまだ出ているが明日に備え早めに就寝。唐松岳は北アで最も簡単に登れる山の一つということもあり、夕方まで登る人がアリのように連なっていた。武田は今日もオカン。
テン場より劔

8/13 
唐松岳頂上山荘4:37-4:52唐松岳山頂4:56-5:27不帰二峰南峰5:37-7:05不帰一峰7:20-7:34不帰キレット-8:20たるみ8:30-8:55天狗ノ頭-9:12天狗山荘9:28-9:46温泉分岐-10:10白馬鑓ヶ岳10:28-11:19たるみ11:29-12:09白馬岳頂上山荘(白馬岳ピストンは記録忘れ)
朝靄の中不帰へ
 いよいよ不帰ノ儉。マップケースや外付けしているものをしまって出発する。唐松岳でヘルメットをつけ、二峰南峰で隊を分ける。1隊が武田深山勝木島田、2隊が大石田嶋藤原曽根田八嶋という布陣。朝早いから対向者はほとんどいない。唐松に泊まって良かった。もし五竜から来ていれば、核心部で多くの人とすれ違うことになり、もっと大変だっただろう。二峰北峰までは痩せ尾根に気をつける程度で、核心部は二峰北峰からの下り。すべったらアウトな岩場を慎重に下る。後ろから来る人は結構いたので、追い抜いて貰えそうな場所で待つ。クライマックスは梯子の橋と断崖のへつりだが、足場をしっかり確認すれば難しいところではない。朝靄で下の方が隠れていたので高度感もあまりなかった。コルまで来てしまえばもう問題ない。八峰は大したことないが不帰は怖い、といろいろなところに書いてあっただけにすこし拍子抜けしてしまった。個人の感想だが、正直五竜の登りの方がよっぽど怖い。ただ岩が濡れている時には八峰も不帰もかなり危険になるだろうから行くべきではない。
白馬へ
 一峰で合流し、記念撮影。不帰キレットはただの道で、何がキレットなのかわからなかった。その先の天狗の大下り(今回は登り)は普通のがれた登りだが、落石を起こすとどこまでも下に行ってしまいそうなので注意。上部には鎖場もあるが使わず登れるレベルである。トップ島田のもとかなりいいペースで400m登り切る。そこからは緩やかな道を行く。不帰でかなり読みより縮めたので早めに天狗山荘についてしまった。テン場が埋まるのは心配ではあったが、このペースでいけば12時過ぎには着きそう、ということで今日中に白馬まで行ってしまうことにした。
杓子岳は巻いた
 ここまで来ると人は一段と多くなる。山荘から見て、鑓ヶ岳の上に何かがぼこぼこしている、と思ったらすべて人だった。鑓ヶ岳への登りは白い砂礫の道。頂上はとても眺めがよく、特に杓子岳の非対称山稜は印象的だった。藤原さんのザックはもうボロボロで、巾着になっているところの生地が至るところ破けている。下に開いた穴からもフルグラが顔をのぞかせている。ガムテープですこし補強していた。下りは登ってくる団体が多く、すれ違いが難しい。トップのコミュニケーション能力が試されていた。テン場を優先して杓子岳は巻いた。読みより縮めて12時過ぎには頂上山荘へ。100張ということもあり、まだテン場には余裕があった。この頃になると白馬岳はガスに包まれていたので、夕方ガスがとれることを期待してサイト後にピストンすることにした。夕飯は大石考案のトムヤム風鍋。ココナッツミルクでマイルドにしてあるものの結構辛くて本当に美味しかった。フォーもそうだが、エスニック系の料理はご飯がすすむのがいい。
白馬岳にて
 サイト後空身で白馬岳へ。山頂はまだガスが多かったが、ここまで辿り着いたというだけでも嬉しい。謎の山ポーズで記念撮影。下りは白馬山荘から自由行動とした。白馬山荘にはカフェもあり、人も多くて一足先に下界に降りてきた気分だ。カフェの中のおみやげコーナーにたむろするワンゲル部員は完全に場違いである。頂上山荘近くには郵便局(といってもポストが置いてあるだけだが)があるので、深山島田は手紙を出していた。麓とここを毎日往復するつよいおじさんが届けてくれるらしい。ぶらぶらしたのち戻るとテン場はもういっぱいになっていた。100張のテントが連なっているのはなかなか壮観である。ここまでくると家族でキャンプ的なノリのテントが多い。そしてそういう人たちが食べているものはだいたい美味しそうである。自然と打ち上げに何を食べるかという話で盛り上がる。ジジイの中ではステーキにしよう、ということで落ち着いた。山の上で過ごす最後の夜なのでオカンしたかったが、あまりにテントが多くて人に踏まれそうだったからやめた。テン場は20時頃まで騒がしくて、下界の生活リズムを感じた。

8/14 のち時々
白馬岳頂上山荘4:37-5:28たるみ5:38-6:13清水岳-6:30たるみ6:40-7:40不帰岳避難小屋7:55-8:45たるみ8:55-9:45たるみ9:55-10:57たるみ11:07-11:45たるみ11:55-12:40祖母谷温泉
祖母谷へ
標高差2000mの下山。祖母谷への分岐からすぐのガレ場で道を見失い、少し迷ったが、すぐわかった。避難小屋までは池塘が点在する穏やかな道で、マイナーコースだけあって人がいなくて気持ちが良い。お花畑もきれい。特に薄紫の花が咲き乱れているところは圧巻だった。タカネマツムシソウという花らしい。他にも色とりどりの花が咲いていて、高山植物を勉強する気にちょっとだけなった。遠くに劔、足元に花を見ながら進み、避難小屋手前で樹林帯に入る。避難小屋は湿っぽい、あまり綺麗とは言えないところで、積極的に泊まりたいとは思えない。小屋前には沢靴を履いた3人組がいた。そのうち一人は御殿下のスタッフの方のようで、ワンゲルブログも見てくれているらしい。今回は猫又谷を遡行した後、清水岳まで4時間藪を漕いだそうである。
お花畑
 小屋の水場は問題なく出ていた。小屋から少し行くと鎖場がある。滑りやすいので注意。その後は樹林帯を淡々と下るのみ。沢のトラバースは浮石が多く不安定なので、注意して渡る必要がある。晴れていれば水量は問題ない。道は下部に行くほど細くなり、倒木も多い。これが白馬に続く道だとはあまり思えない。それでもすれ違う人は数人だがいた。途中でセミの声が聞こえてきて、そういえば長いこと聞いていなかったな、と思った。暑いので深山の差し入れの塩飴が嬉しい。いい加減暑くてふらふらしてきた頃、田嶋の「おっおっおっ」という声とともに名剣沢に出る。沢沿いにガレ場を下るとすぐ林道。土の道だからだろうか、2000mの下山は以外にもあっさりだった。勝木の膝も持ったようである。進むに連れ硫黄の匂いがだんだん強くなり、鉄橋がみえると祖母谷温泉。ここまで来れて本当に良かった。肝心の温泉は24時間入り放題で素晴らしい。女湯は屋根と壁で囲われているが、男湯はとても開放的である。開放的なあまり、テン場に向かう階段から風呂が完全に見えてしまうので、メッチェンにはすこし厳しいテン場だった。今すぐにでも入りたいところではあるが、まずは河原に移動して天突き。カウンターは声が大きい曾根田。81発の長いカウントの間、Lは近くの外人がこちらを動画にとっているのに気づいてしまい、ちらちら気にしてしまった。ワンゲル部員としてはまだまだであった。川の中に温泉が湧いているというのですこし入ってみたが、川の水が少しぬるいかな?という程度で気持ちよくはなかったので、風呂に移動。12日ぶりの風呂は端的に言って最高だった。深山は朝も含めて5回も入ったらしい。武田は「また入山できる気がしてきた」と言っていた。オカンしようと思ったら雨が降ってきたのでテントで寝た。深山はフライカンしていた。さすがに山とは違って夜も暑かった。祖母谷温泉は電波も入らず、白馬よりも静かでいいところだ。
やっと着いた…


8/15 時々
祖母谷温泉7:23-8:05欅平

 朝風呂に入っていたら朝サイトが始まっていて、さすがにクソジジイすぎるなと思った。最後の1分間スピーチは曽根田。飼っていたカナヘビのために毎日蜘蛛を捕まえていたら、近所の公園から絶滅してしまったという話だった。雨がぱらつく中、林道をだらだら歩く。欅平では始発まで時間があったので、黒部の電源開発についての映像を眺めていた。なかなかに壮絶なものだった。田嶋はオニクワガタというレアなクワガタをGETしたらしく、はしゃいでいた。時間になったので、地味に楽しみにしていたトロッコ列車に乗る。先ほどの映像で作業員たちが命がけで掘削していたトンネルを通るわけで、なんだか感慨深い。自分たちが乗った普通車は壁のない小さな車両で、ディズニーランドのアトラクションのようである。とても楽しいのだが、トンネルに入ると凍えるくらい寒く、ここに来てゴアマを出している人もいた。黒部川は水が青くて綺麗。すれ違う逆方向の列車は観光客でほぼ満員だった。途中で雨がかなり激しく降ってきて、いいタイミングで下山したなぁと思った。
トロッコ列車
 宇奈月温泉で富山地方鉄道に乗り換え、富山で打ち上げ。ステーキ屋は見つからなかったので新宿さぼてんに行った。反省会をして、富山駅でさくっと解散。L18きっぷで大阪へ。東京に帰る人々は、お盆でバスはどこもいっぱいだったので新幹線で帰ったようだ。

まとめ

自分のL企画で今まで晴れたのは一日だけだったのに、今合宿ではほぼ毎日晴れてしまった。これはこれで抑揚がないなぁ…と思うくらいにずっと楽しく、あっという間に終わった合宿だった。Lだから何か特別なことをしたというわけではなく、上級生にも下級生にもたくさん助けられた。ありがとうございました。

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