2014年10月18日土曜日

秋ハイク 東沢鉱山

 道にせよ、藪にせよ、沢にせよ、基本的に山登りというのは事前に決められたルート、線の上を歩くものだ。山のほとんどを占めるそれ以外の「面」はまず登山者に顧みられることはない。それを歩かずして本当に山を知ったと言えるのか?しかしただあてどもなく山腹をうろつくだけではあまりに動機に乏しい。稜線に山頂が、沢に滝やナメがあるように、山腹にもそこへ向かうことが目的となり得る何かがあればいいのに。しかもそれはある程度の広がりを持った、いわば特異点ならぬ「特異面」でなければ・・・。
 そんなことを考えていたある日、偶々玄倉川流域に鉱山があったことを知った。半世紀ほど前に細々と掘られていたのがいつしか忘れ去られ、2006年に再発見されて以来静かに人気を集めているようだ。といってもそこに至る道や標が整備されている訳でもなく、ある程度は自分の足を使って探し回らなければならないらしい。これだ、と思った。
 
※丹沢です

 面子 3 L立峻 大橋 2 保田 1 村田

 10月18日(土) 晴れ

 5:38下北沢駅発急行列車の車内で待ち合わせ。しかしLの他誰も姿を現さない。憤りを感じつつフォロワーに送ったメールを確認すると、5:53発の車内で待ち合わせとなっていた。自分で設定した集合時間を間違えるとは。経堂で無事合流。
 新松田でバスに乗り換える。30人ほど並んでいたが、バスが大きかったので全員座れた。谷峨駅から乗り込んだ人は流石に座れなかったが。後から調べたら、新松田から谷峨まで御殿場線を使った方が300円ほど安くなるようだ。まあ座れたからいいか。
 新松田から目的地の玄倉まで45分、900円。重い。ビジターセンターで計画書を提出して出発。玄倉川に沿って林道を歩く。大橋は水がきれいだと言ってしきりに感心していた。1時間黙々と歩き続ける。
玄倉川を眼下に

 穴の平橋を渡ってすぐのゲートから林道はダートになる。まもなく右手に仲の沢径路が分岐する。やや急な斜面のトラバースが続き、探検のプロローグとしてはなかなか雰囲気がある。仲の沢経路は正式な登山道ではないようだが、有名な小川谷廊下の下山路としても使われ危険個所はない。1度だけ「崩落のため迂回」との看板に従って歩いていたら道がなくなって少々イモってしまった。帰りに確認したところ別に崩落はなかったから看板は無視して構わないだろう。木々の葉が新緑のように鮮やかだったのが印象的だった。

歓迎の看板

春の新歓ハイク?
                                
 道が鹿柵によって閉ざされる箇所で柵に沿って川に降りていくと欅平である。大きな堰堤の上が広々としたゴーロになっていて、これまでの幽邃な感じとは対照的。ここで小川谷廊下を渡って東沢に入る。まずは堰堤上を調べたが無理そう。堰堤直下の幅3m程度の流れを渡ることにする。水深5cm程度で何の問題もない。渡ったら左岸を少し下って東沢に入る。
欅平

堰堤の下を渡った

 東沢は沢登りの人に使われる訳でもないため、今までよりもずっと道が荒れている。というより道はほとんどない。偶に現れる道を漫然と辿っていくと、いつの間にか道のない変な急斜面にいたりする。ここは道を追わずになるべく水流沿いを歩いたほうがいいだろう。沢靴で水流中を歩くのが一番楽。行きは道に拘ってしまったため、大分時間をロスした。
 水が枯れてくると、いよいよお待ちかねの鉱山探しである。ネットで得た事前情報によれば鉱山は東沢乗越付近の右岸にあるらしい。僕達はもっと多くの情報を基に鉱山探しに臨んだが、これ位のヒントで探す方が手応えがあって楽しいだろう。沢筋を詰めながら右岸を見上げて当たりをつけ、東沢乗越に荷物を置いて探索開始。笛の音が聞こえる範囲で各自自由に探すことにした。
探索中

 この企画は山腹をうろつくのが主旨であるため、鉱山が見つからなければ失敗なのはもちろん、鉱山が早く見つかり過ぎても失敗という難儀な注文が付いている。が、開始15分程度でL自ら鉱山を発見してしまった。Lの探索能力が優秀すぎてフォロワーには申し訳ない。その時は嬉しさの余り直ぐにフォロワーを呼びつけてしまったが、見つけたことは黙っておいて暫く泳がせてあげればよかった。
 全員が揃ったところで遂に鉱山に突入する。入口から見える範囲では坑道は結構広く、中腰程度の高さである。しかし膝の高さ位まで水が張っているではないか。過去に水に浸かったことがあるのは知っていたが、今年5月の段階では水はなかったため特に警戒はしていなかった。こんな状況でも隊員全員が入ることを希望したのは流石である。幸い、水は流れているらしく澄んでいる。


これか・・・

ゴゴゴゴゴ・・・

 Lは偉いので先陣を切って鉱山に入らせてもらえる。水がかなり冷たい。8mほど行くと左手に一段高い分岐が。情報通り。直進すると行き止まりと聞いていたので、まずはこの左手の坑道から探索する。幸いこちらは水に浸かっていないものの、屈まないと入れないくらい狭い。天井から水が滴り、湿度が高い。壁には銅が析出したものか、所々金色の雲母のようなものが付着している。
 順調に進んでいくと天井に何かがいる。何と蝙蝠だ。野生の蝙蝠など始めて見た。翼を体の真ん中でぴったりと閉じた姿は巨大な二枚貝のようだ。10cm程度の体が1cm位しかない細い足だけで天井からぶら下がっているのも何とも異様である。後ろにいた村田曰く蝙蝠には毒をもつものもいるらしい。すっかりビビってしまったLは早々に保田に先陣を譲ってしまった。有益な情報を教えてくれたお礼に、村田の肩のあたりにグロテスクな虫がいるのを指摘してあげると、村田は少しのけぞり「やめてくださいよ~」的なことを言っていた。クールな一年会のこうした一面が見られるのも鉱山ならではのイベントである。全く、この空間でヘッドランプの明かりに照らしてみるとあらゆる生き物のグロテスクさが五割り増しくらいに見える。
写真で見ればちっぽけなものだが・・・

 進むにつれ、坑道はますます狭まり、とうとう四つん這いにならないと進めないくらいになってきた。そろそろ引き返そうかと臆病風に吹かれた頃に、先頭の保田が歓声を上げた。ついに立坑に着いたらしい。立坑というと円筒状の井戸のようなものを想像していたが、井戸というより部屋のような感じだった。主にここで採掘を行っていたのだろう。広さは6畳程度、高さはヘッドライトの限界でよく分からなかったが、最も低い所から高いところまでで7m程度だろうか。部屋は奥に行くに従って低くなっており、その奥はさらにどこかへ繋がっているようだ。また天井からの滴りが酷い。滴りというより雨。雨具を着てくれば良かった。
「部屋」

 ともかく記念撮影。真っ暗で湿度が高いせいで碌な写真が取れない。全員のヘッドライトを消してみると瞼を開けても閉じても見えるものの変わらない、真の闇である。こうして皆思い思いに坑道を満喫した。
集合


 帰る前に部屋の奥の穴に入ってみる。初めは屈まないと進めないくらいの高さだったが、徐々に天井が高くなり、先程の分岐を直進した先へ合流した。ネット情報では分岐を直進した先は石で埋まっているとのことだったが、どうやら誰かが石を除けたらしい。恐らく初めに通った狭い坑道は試掘時のもので、先程の部屋を本格的に掘ることにしてからこの入口との短絡路を作ったのだろう。
帰還
地上で

 こうして無事地上へと生還することができた。フォロワーも概ね楽しめたようでなにより。時間が余ったのでORの遺言棚を見物することにする。
 東沢乗越へ戻り、乗越を東へと乗り越す。ややザレた急斜面を注意して降りていくと、沢筋に降り立った地点がもう遺言棚の落ち口である。滝は途中で曲がりくねっており、滝壺は見えない。ここから情報通り、左岸の明瞭な巻き道を行く。道がはっきりしなくなったら、適当に緩い所をめがけて降りていくと滝の下に出る。
落ち口から見える釜

 流石は誰が言ったか丹沢三滝、それなりに見応えがある。遺言棚の名前は余りに登るのが難しいから遺言を書いてから登ったことに由来するそうだ。一説には使えない鉱夫を突き落として始末するのに使われたからとも。あの東沢鉱山を余剰人員が出るほどの規模で採掘していたとも思えないが。いや、ひょっとしたらこの辺りに別の巨大鉱山が人知れず眠っているのかもしれない。現に遺言棚のあるモチコシ沢でも二つの鉱山跡が見つかっている。何ともロマンが広がるではないか。
遺言棚 feat. 村田

 あとは元来た道を帰るだけである。本当はドーカク尾根を大石山へ登ってユーシンロッヂへ廻りたかったのだが、審議で潰されてしまったのだった。行きの反省点を活かして、ずっと速く降りることができた。林道を玄倉までのんびり歩き、村田の希望により下北沢のラーメン屋で打ち上げをして解散。

 まとめ:普段のワンゲル山行とは違った方向性を出すことができ、我ながらよい企画だった。強いて問題点を挙げれば、これだけの良企画に3人しかフォロワーが集まらなかったのがLの人望を反映しているようで何とも・・・。今後ワンゲルで行くなら沢装を持って行った方が快適だろう。玄倉川流域には東沢鉱山以外にもいくつか鉱山があるようだが、大概は本格的な沢登りになるようだ。N山行なら可能?
 それにしても我々のような素人が無事鉱山を発見できたのは、偏にネット上に情報を公開して下さった先駆者の方々のおかげである。この場を借りてお礼申し上げたい。

 


 ところで坑道内の動画を撮ってyoutubeにアップしようと思っていたのだが、レポーターらのコメントがあまりにぐだぐだだったため晴れてお蔵入りとなった由。
 











 

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