GW白馬雪倉スキーツアー






面子: 4松尾* L成田* 3坂田 水野 宮崎* 2F大橋 WH陳 E村瀬

PEAKSに載っていたGWの山行記録です。ご覧いただいた方、ありがとうございます。
記録のアップが遅くなって申し訳ありません。

今年のGW後半は好天に恵まれ、絶好の山スキー日和!
柳又谷源頭と雪倉北面の滑走は想像をはるかに超える解放感で、爽快でした。

雪倉岳山頂にて。白馬・旭をバックに




2013/5/2()
新宿駅23:54(ムーンライト信州81)5:40白馬駅
今回はムーンライトでアプローチ。23:40に新宿駅9番線に集合。明日から白馬にスキーツアーに行くのだ。しかも4日連続晴れの予報ときたら、このウキウキ感は言葉で表しようもない。新宿の時点でこんなにテンションの上がる山行は初めてだ。おまけに夜行列車アプローチは雰囲気満点で、今回のようなクラシックなスキーツアーにはぴったり。北アに行くのにムーンライト乗らないと始まりませんよ、とか大橋が言っていたが確かにその通りだ。

ところが、水野から小田急が人身事故で遅れているので、京王線に乗り換えるが、到着が遅れるかもとのメールが…。立川・八王子に先回りさせるという案は頭をよぎったが、はじめは集合時刻に遅れる程度だと思っていたのでそれほど心配はしていなかった。しかし、発車5分前くらいになって、乗り遅れるかもしれないとの連絡が。乗り遅れたら大参事なので、車掌や駅係員に詰め寄り交渉してみる。他社線だからダメもとではあったが、Lは必死に食い下がるもやはり請け合ってくれない。なんでも、京王に乗り換えずに小田急にそのまま乗っていれば間に合うはずだ、というのである。そんなの知るか。すると、「本日のムーンライト信州81号白馬行きは時刻通りの発車を予定しております。御乗り遅れなさいませんようご注意ください。」と皮肉たっぷりな構内放送が流れる。無情にも時間は刻一刻と過ぎてゆく。しかし水野は現れない。ついに発車ベルが鳴り始めてしまった。水野に電話すると、もう新宿駅にいて9番線ホームに向かっているらしい。どうする。どうする。1秒でも遅らせようと、ホームに出て時計と車掌とを交互に見て圧力をかける。23:54:00を回っても発車ベルは鳴りやまない。祈るように水野の到着を待つ。30秒ほど過ぎたとき、発車ベルのメロディーが止まった…。Lは半身でドアから上半身を出し、最後の抵抗。「乗降者確認!乗降者なし!」と係員がお決まりの文句を大声で張り上げると、遂にドアは閉まってしまった。終わった。水野は乗れなかった。

宮崎は水野との電話役、他のスマホ勢はググり役として、車内で緊急作戦会議が始まった。京王特急で八王子乗り換え?中央線快速で取り敢えず追いかける?高速バスで甲府辺りで合流できないか?中央道でヒッチハイク(坂田案)?いやそりゃいくらなんでも無理だろ。(共装のポールは村瀬が持っていたので)いっそのこと水野は切っちゃう?数分の間にいろんな案が出されたが、最終的には冷静さを取り戻し、三鷹以西まで今日中に進んで明日の始発で来てもらえば10:46には白馬駅に到着することが分かった。明日の行動は3.2pなので、13:00行動開始になったとしても何とか16:00ごろにはテン場に着けそうだ。水野にその旨を伝え、中央線で行けるところまで行ってもらう。結局高尾まで行けるとのことで、今夜はそこで駅カンするそうだ。


2013/5/3(金・祝) 早朝は曇り。8時ごろから晴れ。主稜線には一部雲。気温は低め。
10:50白馬駅=(タクシー)=栂池高原スキー場=(ゴンドラ+ロープウェイ)=自然園駅13:0014:05天狗原下14:1515:35白馬乗鞍少し手前~白馬乗鞍~16:15白馬大池▲1

ムーンライトが表銀座に差し掛かるころに夜明けを迎える。寒気の影響からか表銀座には雲が立ち込めているものの、東側は晴れておりオレンジ色に染まっており美しい。これぞ夜行列車アプローチの醍醐味!信濃大町に着くころには稜線の霧も徐々に晴れ、後立山の白い山肌が確認できるようになってきた。終点白馬駅に着いたらいざ出発、とはいかないので5時間ほど水野を待つ。それにしても5月だというのに肌寒い。寒気が強い証拠だろう。やることもないし、寒いし眠いしで、数人は駅の隅っこで寝始める。寛大な駅員さんで見て見ぬふりをしてくれていたが、売店がオープンする時間になるとさすがに起された。その後はシールを張るなど出発の準備をしつつ水野の到着を待つ。10:50無事水野と合流しジャンタクに乗り込む。デポ品はタクシー会社で預かってもらえることになり、非常にありがたかった。

栂池までは4000円ちょっと。安い。登山計画書を提出し切符を購入してゴンドラに乗る。ゴンドラの駅とロープウェイの駅は少し距離があったので、体操・ビーコンチェックを済ませ、スキーを履いて移動。ロープウェイを降り、いよいよ出発かと思いきや、立峻が「足が痛いです」。ブーツを履いているだけで痛いらしい。今さら言われても遅いです。ここで返すわけにもいかないので、様子を見つつ気合で歩かせることにする。アンダーラップ等で処置をしてから出発。白馬駅であれほど時間があったんだから、その時間にやってほしかったが・・・。

天狗原への登り

まずは成城小屋横の尾根から登り始める。天狗原までの斜面は、はじめは緩やかだが、上部はそこそこ斜度があり、大橋と村瀬は後ろにすべり苦戦していた。立竣はプレツアーの時からかなり上達していて、サクサク登っていた。天狗原の岩群の少し手前でたるみ。大雪渓方面を確認すると、先日の雪崩のデブリが確認でき、その規模の大きさを物語っていた。あんなものを食らったらひとたまりもない。それにしても天気がよくて暑い。天狗原と白馬乗鞍でガスっていたらRFが大変だろうと思っていたが、その心配は微塵もない。GWだし天気もよいので、天狗原はスキー場のような賑わいかと思いきや、意外と人は少なく、居てもほとんどは大池か蓮華温泉を目指す登山客ばかりだった。白馬乗鞍の斜面は見るからに急登。トレースを参考に、斜度がゆるそうなところを登っていく。ここからはツアープレートもないので竹竿を打ちながら進む。上部で大橋・村瀬がかなり苦戦していたのでトラーゲンさせる。3回目のスキー山行だからしょうがないけど、来シーズンにはこれぐらいの斜面はシールで登りきれるようになってほしい。白馬乗鞍のケルンは、トップは無視して大池に直進していたし、寄るのも面倒だったので、まあいいかと思ってスルーした。白馬乗鞍山頂周辺は平坦な地形で目標物がないので、ガスる心配があるときは竹竿をベタ打ちしておく必要があるだろう。大池に着く前に天気図の時間になってしまったが、過去の経験から大池では携帯が入ると思っていたので天図は取らずにそのまま大池へ向かった。

白馬乗鞍の急斜面に唖然

大池は完全に雪に覆われどこでも自由に歩ける。大池山荘は屋根の一部が辛うじて顔を出すのみ。例年は、雷鳥坂などは夏道が見えていたりすることもあるようだが、今年は見渡す限り白。雪の多さを物語っている。大池には既に10パーティくらいがテントを張っていた。ほとんどが大池ベース白馬ピストンの歩きのパーティで、スキーヤーは自分たちだけだった。白馬山荘にもスキーヤーは少なかったし、大雪渓の事故を受けて白馬を回避した人が多かったのかもしれない。坂田は池のど真ん中に張りたいとか言っていたが、ルートのど真ん中にテントを立てたりトイレを作ったりするのもなんなので、おとなしくほかのパーティが張っている場所の近くに張ることにした。夜の強風に備え、ブロックを切り出し城壁を築く。なかなか快適なテン場ができた。開けた場所なのでトイレの場所には困ったが、こちらもブロックで壁を作って目隠しを作った。午前中に入山しパーティだと思うが、立派なかまくらトイレを作っているところもあった。

白馬大池のテント村

クリームシチューを食べ、水作りをしたらあっという間に寝る時間になってしまった。携帯で日本山岳会からの天気予報を確認しようとするも入らない。大池に来たことのあるLも水野も入ると思っていたのだが・・・。しかし、宮崎は配信時間の12:00に受信していたらしくそれを見せてもらう。ファインプレー。やはり明日まで寒気が残り、午前中は晴れるが午後からは稜線上でガスで雪まじりらしい。風は、午前中は強く転滑落注意、午後からは弱まるとの予報。天気が悪くなる前にテン場に着きたいところ。明日は強風下のアイピケトラーゲンで大変そうだ。21:00ごろ就寝。


2013/5/4(土・祝) 午前中晴れ。朝のうち烈風。次第に弱まる。12:00ごろからガス。風も再び強くなり、13:00ごろには地吹雪で視界なし。夜には風も弱まる。
白馬大池5:005:30船越の頭直下(稜線偵察、松尾アイゼン空中分解、坂田のザックのバックル破損・靴擦れケアetc.)7:008:15 2610mコル8:259:10小蓮華山通過~9:15たるみ9:2510:15三国境手前鞍部10:2511:10 2810m(第一の雪壁上) 11:2012:25白馬岳山頂!! 12:4014:30白馬山荘▲2

今日は35。天気が心配だったが、星が見えている。雲の流れが速く稜線は風が強そうなので、予め完全防寒。クラストしているので、クトーをつけてもらうが、大橋のビンディングのクトーを付ける部分が壊れていて片方付かないらしい。どうせアイピケにすぐ代えるのでそのまま出発。それにしてもマーカーは壊れやすいのか?

大池出発!

出発すると、いつも元気な坂田が遅い。脛が痛いらしい。今日の行程は比較的時間に余裕があるので、ゆっくり歩いてもらう。案の定、大池の上に出ると風が強く閉口。途中ゴアマを出した立峻はゴアマ袋を飛ばしてしまった。ゴアマは出発のときに着といてよ。強風のため引き返してくる単独の人もいたし、この風ではアイピケトラーゲンで細い稜線を長時間行動するのは厳しいかなと思ったが、どの程度細いか分からないので、取り敢えず船越の頭まで行って様子を見ることにする。しかし、船越の頭直下でクトーが片方無い大橋が滑り始めたので一旦隊を止め、折角ここまで来たので、松尾と宮崎に船越の頭まで上がってもらい小蓮華への稜線の様子を見に行ってもらうことにする。稜線が厳しそうであれば大池に戻って風が弱まるのを待とうと思っていたが、偵察の結果稜線はそれほど細くなくトラーゲンでも行けそうとのこと。

シートラ準備

急いでアイピケに切り替えトラーゲンを組んで前進することにする。ところがトラーゲンの際に坂田のザックのバックルが壊れてしまった。ちなみにザックはゼロ○イント120L。モンベル店員水野は謝罪。そう言えばプレツアーでも水野のゼロ○イント90Lのバックルが壊れてたっけ。2年前にリニューアルされたゼロ○イントは軽量化を意識しすぎたあまり、バックルは壊れやすく、生地は薄く穴が開きやすくなっているんだと思う。厳冬期とかに山の中でザックが壊れるといろいろ大変なことになるので、これからはゼロ○イントは買うのをやめたほうがいいんじゃないかと思ってしまった。水野さん改善よろしく。取り敢えずスリングで固定して出発することに。しかし今度は坂田が脛がかなり痛いというので、一旦靴を脱ぐ。テーピングが変なことになって痛みが増していたみたい。そんなこんなで気がついたら1時間半も経過していた。

小蓮華へ

気を取り直して出発。念のため3年に前に出てもらう。目指す雪倉岳や朝日岳・五輪山が見え非常に気持ちがよい稜線だ。純白の小蓮華山が美しい。稜線上は如何せん風が強く、時折烈風が吹き動けなくなる。牛歩だが、天気はよく最悪三国境まで行ければテントが張れるので進むことにする。小蓮華山への登りが始まる手前でたるみ。幸い風が心なし弱くなり始めた。小蓮華手前の尾根はそれまでよりも細く注意が必要。風が無ければ問題ないが、南側は切れ落ち、北側はクラストした斜面がどこまでも続いているので転倒したらなかなか止まらないだろう。小蓮華山のピークはあまりたるめそうでなかったので、ピークの少し先でたるみ。西側からガスが流れ込んできて、再び風も強くなり始め、嫌な雰囲気。先を急ぐ。三国境手前の平坦な地形はガスられたら迷いやすい。念のため竹竿を打ちながら進む。ここから三国境先の急登手前まで20-30本くらいあったほうがいいだろう。三国境手前の平坦な地形は幕営可能。雪のブロック塀があり、昨日ここで幕営したパーティもいたようだ。三国境までの急登は雪が比較的柔らかく助かった。三国境周辺は二重稜線のようになっているが、素直に夏道のある西側を行けばいいと思う。風よけの雪塀をちゃんと作れば、このあたりでも幕営できそう。

白馬への急登。重荷が堪える。

ここからピークまで急登が2箇所あるとの情報。最初の急登は30-40mくらい。両側が切れている訳ではなく、特に危険ではない。ただ、スキーを背負った重荷の身にはなかなか応える。ピークまでは意外に遠いのでたるみをとったほうがいいだろう。第二の急登は10mくらいだが、東側は切れ落ちており転倒するとやばい。風が無ければ問題ないが、突風が吹くとスキーが煽られるので緊張する。フラットフッティングを徹底し、気を引き締めるよう4年が喝を入れる。この急登を無事登りきると、あとは地形はなだらかになる。東側は大きな雪庇が張り出しており近づいてはならない。意外と長いこの平坦な区間を頑張ると、ついに白馬のピーク!初冬に断念した山でもあり喜びは大きい。さっきまでは晴れたりガスったりだったが、いよいよ立山・剣方面からの雲が途切れることなく流れ込んでくるようになり、太陽は完全に隠れてしまった。寒いので、記念撮影等を済ませ出発。

ピークはガスの中・・・

あとは下るだけだが、立峻は下りだと特に足が痛いらしく遅い。視界は見る見るうちに悪くなる。基本的に夏道の杭が出ているので、それに従って行けばよいが、完全に埋まっているところでは角度を切って慎重に進む必要があった。白馬山荘を通過し、テン場のある頂上宿舎へと向かう。ここからが大変だった。夏道の杭はずっと見えていたので、それを頼りに下る。旭岳・大雪渓の分岐を過ぎ、しばらく歩いても頂上宿舎が見当たらない。気付いたらゆるやかに登りに差し掛かっている。おかしい!通り過ぎたのかもしれない。これより南に宿舎がある可能性を完全に潰しておくため、引き返す前に宮崎・坂田に前進リミット5分で前方を偵察しに行ってもらう。その間、8人パーティが後方で立ち止まっているので、話を聞くと自分たちと同じように頂上宿舎が見当たらず困っているそうだ。そうこうしているうちに、風はさらに強くなり地吹雪になってしまった。宮崎・坂田が戻ってくると、やはり頂上宿舎はなかったそうだ。戻りながら頂上宿舎を探すことも考えられたが、最早この状況で今から整地し、テントを設営するのは大変なので、今日は白馬山荘で素泊まりすることを決定。こういう時に営業小屋があるのは心強い。ザックを背負って白馬山荘へと戻る。この登り返しはなかなかしんどかった。

無事に白馬山荘に着き、アイゼン・スキー等を片付ける。しばらくすると先ほどの8人パーティも戻ってきた。この日は、自分たちの他にも白馬山荘に逃げ込んだパーティが多数いたようだ。素泊まりは6300/人。こうなることも考えて、3,4年に多めにお金を持ってきてもらっておいてよかった。L含め小屋泊まり初の人が多かったが、装備は一晩で乾くし、水作りは要らないし、暖かい談話室でゴロゴロできるし、布団で安眠できるしでまさに楽園だった。こんな天気のときは、死に物狂いでトイレに行かなければならないテント泊とは天と地ほどの差だ。キーマカレーを食べた後は、談話室でぐだぐだ。携帯は宮崎のガラケー(au)が入ったので、例の日本山岳会からのメールを確認させてもらう。どうやら明日は晴れで風も弱いようで、絶好の登山日和になりそうだ。差し入れで宇治抹茶プリンを作ってみたが、なかなか好評でよかった。水野は早まってビールを購入していた。まったく気が早い。もうちょっとぐだぐだしたいところだが、明日は早立ちで行程も長いので、そろそろ寝る。明日に期待を膨らませながら、快適な布団に包まって21:00ごろ就寝。


2013/5/5(日・祝) 終日快晴無風!!
白馬山荘5:056:05長池6:156:40鉢ヶ岳南コル少し北6:507:35雪倉避難小屋7:558:45雪倉岳山頂!!9:3510:10北面滑走開始~11:10 1950m 11:2512:55ひょうたん池13:1514:00瀬戸川鉄橋14:3015:00急登終わり15:2016:30蓮華温泉

日の出が見たいとの意見が多数だったので3時起き。準備を整えて小屋の外に出ると、雲ひとつ無い快晴。思わずガッツポーズ。白馬のピークを往復する案もあったが、今日の行程はしんどいのが分かっていたのでパス。白馬三山や立山・剣のモルゲンロートが美しい。少しひんやりとした風が何ともすがすがしい朝だ。

小屋前でモルゲンロート待ち
剣方面

ショータイムが終わったらいよいよ滑走開始。山荘から直接滑り出せた。今山行のハイライトのひとつである柳又谷の滑り出し地点まで来ると、その息を呑むような雰囲気とスケールに圧倒される。このときの感動はなんと表現していいか分からない。とにかくすごい。あはれなり。朝早いのでクラストしていて大変かと思ったが、昨晩に雪が少しだけ積もってくれたので滑りやすい。振り返ると旭岳がかっこいい。どのガイドブックにもヨーロッパアルプスを思わせる雰囲気だ、とあったがまさに評判どおりの景観・スケールだ(ヨーロッパアルプスには行ったことないけど・・・)。地形は意外と複雑でまじめにルート決定しないと面倒なことになる。地形図から想像される地形と、実際の地形とは割りとギャップがあるので注意。鉢ヶ岳南コルに出る方法としては、長池の東側から沢状を詰めるか、長池の北側の尾根に乗りトラバース気味にコルまで行くかの2通りが考えられたが、前者のほうが早いだろう。のっぺりとした尾根を上手く越えて、長池を左下に見ながら回り込むようにして登り返し地点まで滑った。たるむと同時にアイピケトラーゲンに切り替える。沢状地形は雪が切れていたので、途中から北側をややトラバース気味に進み鉢ヶ岳南コルへ出た。

写真じゃなかなか伝わらない柳又谷源頭のスケール
旭岳をバックに

鉢ヶ岳のトラバースではたるめないので、ちょっと早いがたるむ。コルからは、白馬や旭岳、そして昨日歩いた小蓮華の稜線が見え気持ちがいい。鉢ヶ岳の大トラバースは、上部は急で雪庇が出ている箇所(はじめの200mくらい)もあり雪崩注意。なるべく早い時間帯に通過したい。危険と思われる箇所は大急ぎで通過した。読みより結構早く雪倉避難小屋着。避難小屋は、引き戸の周りに雪が吹き込んでいて開かなかった。小窓から中の様子が見えたが、10人くらいは泊まれそうで、結構きれい。張っていいかは分からないが、小屋の前には1,2張ならテントも脹れそう。ただし雪は解けており砂利の上だが。雪倉山頂までは夏道沿いを行く。夏道そのものは雪が飛んでいて歩きにくいので、夏道を少し外れて雪が付いているところを登った。基本的にすべてクラスト。急登でしんどいので、白馬と旭岳を振り返り息をつきながら登る。だんだんと視線が高くなり、いよいよ近づいてきたなという感じ。小屋からちょうど1ピッチのアルバイトでついに雪倉の山頂!


鉢ヶ岳のトラバースにて
雪倉への登り

 昨日とは打って変わって本当にのどか。白馬、旭、小蓮華、朝日はもちろん、剣、立山、毛勝、頚城など展望について書けばきりがない。しかも辺りに人の姿はなく完全に貸しきり状態。のどかで気持ちがいいので1時間近くロングたるみ。白馬をバックに個人写真や人文字TWV写真を撮ったりしてのんびり過ごす。イケメンの坂田は色々な決めポーズでかなりの数の個人写真をとっていた。だが、立峻の中二病昇竜拳ポーズにはかなわなかった。3時間くらい昼寝をしたいところだが、先も長いので適当なところで切り上げて出発する。

TWV?
貸切の山頂で至福の時間


山頂から直ぐには滑れないので、2550mくらいまで移動して滑走準備。いよいよ今山行のクライマックスの雪倉北面だ。白高地沢まで見渡せ、あんな所まで滑るのかと思うほど、とにかくスケールがデカい。まずはルート確認。夏道のある北東に延びる尾根上には目印となる大きな岩があり、そこを目指して第一の斜面へ滑り出す。はじめはクラストしていて板がガリガリと音を立てたが、少し下ると次第にザラメ化してくる。大きな岩から第二の斜面に移る予定だったが残念ながら雪が途切れている。トラバースして雪倉の壁の最上部から滑ることも出来たが斜度が強く雪崩の心配もあったので、95OBに倣って夏道尾根の右側の沢状を行く。完全にザラメ化しており快適だ。2120mのかまぼこ状の台地で一旦板を脱ぎ、元のルートへ合流。ここから1950m台地の少し先まで爽快に飛ばしてたるみ。松尾と坂田は恒例の雪合戦を始めた。それにしてもいい天気。この広大なスロープにいるのは自分たちだけだ。ついついたるみの時間も長くなってしまった。何も考えず白高地沢の方へ落ちていくと面倒なことになるので、1538mの台地を目指して滑る。顕著な台地地形なので分かるだろう。台地の手前で急激に雪質が変わり、水野と宮崎はアクロバットな前転宙返りを決めていた。宮崎はメガネとグラサンが吹っ飛んで大変なことになっていた。1538mとその南側のベロの間を縫うように進み(この辺りが森林限界)、高度を保ちつつトラバース気味にひょうたん池へ向かう。高度を落としすぎると漕ぐことになりそう。ひょうたん池のたるみで立峻のザックが壊れたので、非常用パックで補修した。ここからはオレンジテープがベタ打ちされており(夏道沿い)、それに従って進めば問題ない。
雪倉北面
滑走!
ザラメで快適
滑ってきた斜面を振り返る
快適な斜面もここで終了

なかなか疲れたので瀬戸川鉄橋でロングたるみ。川で水を1発汲んだ。朝日か五輪へ向かったパーティが2組くらい通過して行ったが、この日初めて人に会った。瀬戸川鉄橋からの登り返しはガイドブックが言うように確かにしんどい。はじめの急登はアイピケにしたが、軟雪だったのでツボ足ダブルストックでも良かったかも。急登が終わったところでシールを着け、蓮華温泉までの最後の1ピッチを頑張る。トップがトレースを追って早めにトラバースを始めてしまった。トレースがあるならいいかと思って止めなかったが、トラバースが割りと急で歩きにくかったので、ちゃんと止めてもう少し上まで行かせるべきだった。この辺りはノートレースだと意外とRFが難しいかも知れない。最後のトラバースは下りで、滑走モードから歩行モードに戻すのにいちいち板を脱がねばならないLは結構面倒だった。蓮華温泉に着いたのは16:3011時間超の長く充実した一日が終わった。

蓮華温泉に無事到着

小屋にテン場の申請をしに行く。風呂は17時ごろまでに入ってくれればいいよと言われた。さすがにみなサイトを先にしたいとのことだったので、もう少し遅くに入れてもらえないかお願いしてみるが、だめだった。無念。若天がサイトしている間にちゃっかり入りに行こうかと思ったが、さすがに恨みを買いそうなのでやめた。代わりに上級生はビールを購入。思わず笑みがこぼれる。のどが渇いて今すぐ飲みたかったが、大人しくサイト後に飲むことに。テン場は小屋から30mくらい離れたところ。多分夏は駐車場。水は近くのトイレで汲めてありがたい。時間は遅いが、風もないので外サイトすることに。雪倉を眺めながらビーフトマトハヤシ(!?)を食べる。今日がすごく楽しかったので、おかわり山行で、来週も清水谷~白馬槍行く!?みたいな話になったが、天気も悪いしさすがになしになった。外でもっと雑談していたかったが、どんどん寒くなるのでテントに退散した。携帯は入らなかったが、昨日の予報で、明日の午後から日本海に発生する低気圧の影響で大荒れになることが分かっていたので、明日は早立ちしなければならない。木地屋へ下りるか、天狗原へ登り返すか迷ったが、午前中は天気は持ちそうだし、天狗原で多少ガスってもトレース多数で問題ない(by坂田)だろう、と言うことで34半で天狗原経由で下山することに決定。宴会をしたら早々と寝る準備。就寝は21:00を回ってしまった。


2013/5/6(月・祝) 快晴のち晴れ。前線伴う日本海低気圧が接近し、午後から急速に雲がかかる。
蓮華温泉4:405:40たるみ5:506:40たるみ7:007:55たるみ8:108:50 2072m台地9:059:50天狗原10:2510:55成城小屋~11:15ゴンドラ駅

睡眠時間が6時間を切ったので、さすがに眠い。しかし、心配していた天気の方は快晴だ。雪倉のピークも見えている。雪倉に別れを告げ出発。乗鞍沢に架かる橋に降りるところが雪の着き方の関係で急になっており、朝一ゆえカチカチだったので仕方なくアイゼンを着けて通過した。中ノ沢の入り口までそのまま進み、そこでアイゼンを解除して、再びシール登行に。打ち上げは、1年前から目をつけていた松本からあげセンターにしようという話に昨晩決定していたので、からあげを思い浮かべながら天狗原までの登りを頑張ることにする。ここから振り子沢に合流するまでは、快適とは言いがたいツアーコース。2年に地図読みを聞きながら進むが、あまり分かっていなかった。振り子沢は枝沢がいくつもあって、地形は複雑。晴れていれば、どう登っても2072m台地に行き着くが、視界が悪いと不安になるかもしれない。天気もいいし、行動時間も短いので、のんびりたるみながら最終日を楽しむ。天狗原手前の急登はシールで行ける斜度。降雪後は雪崩を警戒したほうがいいだろう。

天狗原へ最後の登り

 天狗原に着くと、戻ってきたんだという達成感がすごい。去年のリベンジの坂田と宮崎は感動が倍らしい。自分たちの2倍も感動しているのかとなんとなく羨ましかった。行きには雲に隠れていた唐松、五竜、鹿島槍はもとより表銀座の山々まで見渡すことが出来、完遂に花を添えてくれた。後立山をバックに全員で記念撮影をしたら、いよいよゴンドラ駅まで最後の凱旋滑走だ。成城小屋まであっという間、かと思いきや立峻が怖がってなかなか進まない。聞くと、足が痛くてバックルを全開放しているらしい。そりゃ怖いよ。怪我してほしくないので、我慢してバックルを閉めてもらった。成城小屋の脇から林道に入る。名残惜しく、白馬を振り返りながら滑った。最後は今日が営業最終日のスキー場に合流し、滑りきったところでシーハイル。みな楽しんでくれたみたいで感無量でした。

戻ってきた天狗原で記念撮影

大糸線に乗り込んだら、柿ピーを片手にビールで祝杯を上げる。いやー最高です。完遂の喜びも相まって、幸せなひと時。松本に着いたら約束通りからあげセンターで打ち上げ。噂通りボリューム満点。ちなみに食べられなかったら持ち帰りもできる。松本からは鈍行と特急組に分かれて帰京。最高に楽しかったGWが幕を閉じた。
Fin.

まとめ
天候に恵まれ、サイコーに楽しくそして充実していた。滑走のスケール・解放感は今までのどの山行でも経験したことのないもので、山スキーの楽しさ、スキーツアーの楽しさを全身で感じることができた。

ワンゲル山行ベスト3には間違いなく入るだろう。

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