2011年8月6日土曜日

個人山行 湯檜曽川本谷

個人山行 湯檜曽川本谷(8/4-5)                           
メンバー:OB1大城(単独)
遡行図:「東京基点沢登りルート120」

文句なしのメジャールート。ワンゲルでは過去に少なくとも2回出されている。今回、湯檜曽に行く事を決めたのがわりと直前だったためあまり周りを誘う暇がなく、かつ自分の力を試してみたかったこともあり、敢えて独りで遡行することにした。難しい箇所には明瞭な巻き道があるといった過去の記録や遡行図などからの情報を総合して、単独でもそれほど無理なく遡行可能であると判断したという事がある。では、入渓しよう。

8/3()上野=土合▲0


 青春18きっぷを使って久々の電車アプローチ(最近、車がワンゲルスタンダードになりつつあるからなあ)。木金の天気はまあまあの予報だが、HBC専門天気図などの情報から考えても大崩れは無いだろう。思えば今年は個人山行で屋久島での沢登りを企画するも季節はずれの大雪で潰れ、その後ナルミズ沢を知人と行こうと企画するも諸事情で潰れ、行きたいと思いつつ全く上越やアルプスの良い沢に行くことが出来ていなかった。そしてこの先の夏休みの予定など考えてもあまり個人で好きな山に行けるとは思えない。行ける時に行っておかねば。ちなみに土日を外したのはテン場の確保が休日は難しくなる可能性があると考えたからだ。
 水上から先の上越線は越後湯沢までの運行。先月の大雨の影響がまだ残っているようだ。さすがに平日とあって、水上を過ぎると電車に乗っている人数は四捨五入すると0になるほど少ない。そして土合で降りたのは自分だけ。降りたのは自分独りだったのだが、ホームに降りたつやいなやこちらに向けてカメラのフラッシュの嵐。自分ってそんなに有名だったっけ?…というのは冗談だが、ホームには子供を中心とした15人の男女。この人たちが電車が来るのを待ち構えて写真を撮っているのだった(地上に出て分かったが、この人たちは土合駅前に沢山テントを張ってキャンプをしているようだった)。
 地上に出てちょっとびっくりしたのは土合駅がリニューアルされていること。特にトイレは以前とのギャップが激しい。さて、いつものワンゲル山行のように待合室で就寝準備。だが寝心地はいまひとつ。蒸し暑いし、虫は刺してくるし、おまけに子供たちの声がずっと聞こえてくるし…。結局眠りに落ちたのは11時過ぎだったのに、翌朝2:30に目が覚めて以降ずっと眠れなかった。 

8/4(木)小雨のち晴れ、夜一時雨
土合4:30―4:55林道終点―5:10一ノ倉沢出合(入渓準備)5:30―6:20武能倉沢出合―6:25本流6:35―7:25白樺沢出合―8:00 3段30m大ナメ滝下8:10―9:30抱き返り滝上9:40―10:10七ツ小屋沢出合―10:30 10m直瀑下10:40―11:20 2段12m滝上―12:00大滝上12:15―12:55二俣▲1
 それ以前から目が覚めていたが4時までは何とかシュラフの中でガマンして4時起床。朝飯を食べて出発準備が出来てもまだ4:30。まだ暗いがとりあえず最初は林道なので土合を発つ。空はどんよりして霧雨のような雨が降っている。土合橋の先で林道に入るが…暗!! 色彩というものが全く無い。30分くらいしてようやく景色に色が付いてきた。道がジメジメしているので、一ノ倉沢出合で一足早く運動靴から沢足袋に履き替え雨具を着る。ここから進めば進むほどジメジメ度は増し、途中道が沢のようになっている箇所もあった。入渓まで2箇所ほど「これって一般道?」というような崩壊の仕方をしている箇所があったが、もしかしたら先月の豪雨のためこのようになったのかもしれない。武能沢出合から同沢を下降すること5分弱、湯檜曽川本流に降り立つ。今までの薄暗い道が嘘のような開放感溢れる河原である。進行方向には早速ゴルジュらしきものが見えている。

魚止ノ滝(左壁の残置を使って越えた)



魚止ノ滝上のゴルジュ(泳いだ部分)
 さて、ゴルジュに入るとまずその水量に圧倒される。そして音がこれまた凄い。飛沫を上げる激流を見つつ岩床を歩いていくとすぐに「魚止ノ滝」。ガイドには魚止ノ滝を含むゴルジュを巻いて上流から入渓するように記述されているが、魚止ノ滝下から遡行している記録が多いため今回もこれらの記録に倣った。魚止ノ滝は最初の滝ということもあり結構難しく感じる。幸い残地スリングが3箇所ほど上手い場所に設置されているので、これを使って難なく越えることが出来たがスリングが無ければそれなりに緊張する登攀をすることになるだろう。まだ体が硬いのが自分でも分かる。この滝の上からバンド状の岩を利用して慎重にゴルジュ内に降り立つ。降り立った地点から先で足がつかないのでいきなり泳ぎ(距離はほんのちょっと)。ゴルジュはしばらく続くが、泳いだ後は基本的に左の岩のバンドの上を歩いていけばよい。沢が左に屈折する地点でいったんゴルジュは途切れ、癒し系の河原となる。右岸から白樺沢を合わせ美しい岩床を歩いていくと、すぐに有名な「ウナギ淵」。

ウナギ淵



白樺沢出合付近



30m大ナメ滝手前

抱き返り沢出合に懸かる50m滝
写真から想像していたより小規模。折角なので泳ごうかともちょっと思ったが、デジカメが防水でないので大人しく左岸を巻くことにする(巻くというよりただ歩くだけ)。ウナギ淵のあとも屈曲点の4m滝ま延々ゴルジュ。4m滝は左側の「階段」から容易に越せる。さて、ここからの景観が素晴らしい。3段30mの大ナメだけでも美しいが、その先に控える抱き返り沢の50m滝が何とも優美。普段丹沢や奥多摩の沢にしか行かない自分には鳥肌が立つほどの景観であった(丹沢では腐敗した鹿の死体を見て鳥肌が立つことはあるが…)。写真をたくさん撮りつつのんびり進む。十字峡(抱き返り沢と大倉沢の出合)を過ぎると再びゴルジュ。ここでも5mほど泳いだ。右岸や左岸のバンドを選びあまり水に入らないように進む。沢が右に屈折する地点に控えているのが抱き返り滝2段20m。 

抱き返り滝2段20m(左壁直登)


抱き返り滝上の渓相

スノーブリッジ

巻きは右岸凹状草つきだが、折角なので左壁直登を試みる。まず爆音を上げる釜を泳いで取り付き、下段をフリクションを効かせつつ登る(簡単)。問題は上段。上部スラブがやや怖かったので残地ハーケンにセルフビレイをとりつつ登った(ちなみにこのビレイに使ったスリングは登るときに放置してしまったので、あとで上部からロープを出して回収するという少々面倒なことをする羽目になった(^^;))。抱き返り滝の上はこれまた見事なナメ。この先しばらく美しいナメ滝と釜が交互に現れ、カメラから手が放せない。しばらく平和な気分で歩いていると突如…巨大スノーブリッジ出現! ある程度予想はしていたが、ここまで大きいのが残っているとは。形が何だか芸術作品のようだ。雪渓の形に気を取られている場合ではないが、幸いここは右岸から簡単に巻くことが出来た(一部雪渓の上を歩いた)。スノーブリッジの後はまた素晴らしい景観を堪能しつつ進む(この頃になると空の大部分が青空になっていた)。

3条10m(左凹角から登る)
 
問題の10m直瀑(下部のバンドを右→左)


      
10m直瀑を横から(ここに突っ込みます)



2段12m(下段:左、上段:右)
3条10mや8mは遠目には厄介そうだが、近づくと「ここしかないやろ」という一目瞭然のルートがあり、難なく越せる。次に問題となるのは10m直瀑。記録を見ていると、技術的には大滝よりこちらの滝の方が難しいという記録もあったので少々気合を入れる。セオリーは右巻きだそうだが、落ち口に出るまでの草付きのトラバースがいやらしいらしい。もう一つのルートは、右から取り付き水流中バンドを左方に斜上して左壁を直上するというもの。これは全身ずぶ濡れになるが容易との事で今回はこちらを試してみる。取り付き地点は上から落ちてくる水のために息苦しくなるほどだが、滝の裏側に入り込むような感じで突破して確かに簡単に左壁に出ることが出来た。ちなみにここからの登りは容易。他大の記録で右巻きに30分要したというようなものもあったが、こちらの「新セオリー」を使ったおかげで3分で滝上に出ることが出来た。次にこの滝を登る人は是非試してみてください、ずぶ濡れになりますが(笑)。この先しばらく行くと2段12m。この滝のあたりから赤茶けてゴツゴツした感じに岩の質が変化してきて興味深い。ここは左岸から巻くことも出来るが、わりと楽に直登出来そうな印象を受けたので取り付いてみる。下段は左から。手を使わずに登れるレベル。上段は右から。垂直でホールドも細かいが、岩が安定しているのでそれほど恐怖感なく登れる。一箇所ハーケンが打ってあった。これを過ぎると、来ました大滝40m。

大滝40m全景


中段テラス
 
ここで一旦左へトラバース
 
落ち口へのトラバース道
デカイ。「核心」という位置づけなので緊張感が湧いてくる。上部の様子が下からだと良く分からないので、まずとりあえず空身になって、下れる範囲で偵察に行ってみる。下段は階段状で非常に容易。中段テラス(想像していたよりずっと大きかった)から上部を観察する。直登は単独では相当厳しそうであるが、左に少しトラバースすると右岸から流入する枝沢を使って簡単に登って行けそうなことが判明(ガイドには「ルンゼ」と書かれているが、立派な枝沢である)。事前情報によるとここを上がっていけばトラバースしている踏み跡に出られるそうなので、おそらくこのまま安全に登れると判断し、一旦下降。ザックを持って再び登り返し枝沢を登っていくと、これまた明瞭な踏み後。これを忠実に辿って簡単に落ち口に出てしまった。結局大滝では一箇所も恐怖感すら感じず、ちょっと拍子抜け。また平和な渓相となり、右岸に峠ノ沢を見てさらに歩いていくと、本日のテン場である二俣に到着。まだ1時前。写真を撮りながら相当のんびり遡行したつもりだったが、こんな時間に着いてしまうとは…。
大滝上10m(右の泥壁から)

草原とナメと

本日のテン場


二俣手前の右岸に快適そうな1張り分のスペースを見つけ、ツェルト設営(他にも数箇所テン場らしきものがあった)。今日は濡れまくったので、ザックの中身を乾かす。日差しが強い。3時頃から飯を作り始め(ご飯とレトルトのシチュー)、ちょうど食べ終わった頃気象通報の時間となり天図をとる。前線は北に押し上げられ基本的に高気圧の圏内にあるのだが、嫌なことに八丈島付近に熱帯低気圧が発生してこちらに向かっている。微妙に反れる感じではあるが、明日の好天は望めないだろう。天気予報でも明日は曇り時々雨と言っている。ま、ここまで来れば増水して進退窮まることも無いだろうが、明日はなるべく早く沢を抜けることにしよう。昨日の寝不足もあり、本を読んだりしているうちにいつの間にか爆睡モードに入ってしまった。20時頃、ふと目を覚ますと、顔に水滴が。そして雨の音。あーあ、とうとう来たか。周りの物が濡れないように多少整頓した後、再び熟睡。この後翌日まで目は覚めなかった。

8/5(金)曇り
二俣4:50―(沢装解除10分)―6:35朝日岳6:50―7:45笠ヶ岳7:55―8:25白毛門8:35―9:00松ノ木沢の頭―9:25 1154p―10:05東黒沢出合
4:00起床。幸い雨の音はしない。ラーメン餅を食しこわごわ天気を見ると何故か快晴(でも、快晴は朝の1時間のみだった)。撤収して4:50出発。今日は難しい箇所は無いはずなので気が楽である。二俣上もナメ床と小滝が交互に出現し良い渓相が続く。だんだん傾斜が増し、背後には七ツ小屋山や清水峠の避難小屋が明瞭に見えてくる。1800m付近で水汲みをするが、この頃から頭上にガスがかかりはじめる。わりと上の方までしっかりした沢であったが、ラストの20~30分ほどはササの藪漕ぎ。最後にわずかにハイマツが混じり、やがて黄色い花の咲く草原に飛び出した。


二俣上の渓相


詰め上げた草原

朝日岳ピーク
結構風があって寒い。草原で沢装解除し、さらに踏み後を辿って30秒も藪を漕ぐと朝日岳直下の登山道に出る。山頂には色とりどりの高山植物が咲いており、天気が良かったらきっととてもいい場所なんだと思う。寒いのでタルミもそこそこに出発。下山は運動靴にしたが、地面が濡れていて滑らないように神経を使った(でも笠ヶ岳の下りで一度滑って泥だらけになり萎えた。本谷では一回もコケなかったのに…)。途中4~5人の登山者を見かけたが、全員単独行だった。どうでもいいが、山のマニアックさと単独行の人の割合は正の相関にあるような気がするのだが、気のせいか?白毛門からの下りで白毛門沢に目をやると、偶然タラタラのセン(白毛門沢の大滝)を巻いている3人くらいのパーティが見えた。自分も昨年遡行したが、なかなかの人気の沢である。急傾斜の下山道で足が笑い出した頃、ようやく東黒沢出合に到着。ここでゴアマなどを洗う。最後に谷川岳ドライブインで「谷川そば」食べ、本山行の締めくくりにした。

・まとめ
湯檜曽は聞きしに勝る秀渓だった。ナメと釜、ゴルジュと淵、スラブや直瀑など景観は変化に富み、沢登の楽しさが濃縮されているようだった。特に十字峡手前や抱き返り滝後の渓相は見事。一方、大滝やその他の直登が困難な滝には必ずといってよいほど明瞭な巻きのルートがあり、ルート取りでよほどおかしな事をしなければ特に危険な箇所は無いように思う。とても充実した2日間だったが、まあでも次に沢に行くときにはやっぱり単独じゃなくて誰か誘って行きたいな。

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