2007年9月27日木曜日

御嶽山 鈴ヶ沢東俣遡行FB

◎ 御嶽山 鈴ヶ沢FB(山行No.36 企画:長谷川)
◯メンバー: 3木村(被養成者)、長谷川、白濱、1広瀬(N)
◯ 1/25000地形図:「御嶽山」「御岳高原」「王滝」


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鈴ヶ沢東俣遡行図(クリックすると拡大、滝の番号は本文中の写真と対応)





9月25日(火)
計画段階では自分が名古屋から車を出し、入渓点までアプローチする予定だったのだが、出発前日に実家近くで10トントラックと接触事故を起こし、車を大破させてしまったので、急遽電車+タクシーでのアプローチとなる。木村・長谷川は西から、広瀬・白濱は東から木曽福島までやってくる。当初は山岸も参加予定だったのだが、今日が出発日であることを忘れていたらしく、不参加となる。
22:30に事前に予約しておいたおんたけタクシーに乗り込む。運転手さんによると、今年2月頃にこの辺りで小さな地震が起き、御嶽山が噴火するという予測がされ、NHKが王滝と開田高原に待機し、ヘリコプターが頻繁に飛んできて物々しい雰囲気であったとのこと。幸い今回の火山活動は小規模なもので済んだらしいが、1979年に御嶽山が噴火したときも直前に地震が頻発したとのこと。
鈴ヶ沢橋の手前でゲートとなっており、そこまでタクシーは入ってくれた。木曽福島駅からここまで中型1台で9490円。雲ひとつない中秋の名月の下でオカン。
9月26日(水)晴、田の原より上では少しガス
5:05鈴ヶ沢橋を出発-(林道歩き)-5:30三沢橋(沢装にする)5:55入渓-6:35林道下をくぐる-6:55大滝下(タルミ)7:10-7:35大滝上-8:40トイ状5mナメ下(タルミ)8:50-10:10涸滝下(タルミ)10:20-10:50隣の沢-12:00道路に出る(沢装解除)12:30-13:05田の原出発-14:20富士見石(タルミ)14:30-14:55九合目避難小屋着▲1
昨日の昼は名古屋では残暑厳しかったのだが、ここら辺では朝寒いぐらいに冷えた。4:30出発のはずが、寝坊してしまい、結局5:00過ぎに出発。30分弱の林道歩きで入渓点の三沢橋に着く。ここで沢装にする。広瀬はスリングとATCを忘れてきたが、幸いヘルメット・ハーネス・沢足袋は持ってきていたので、上級生のスリング・ATCを貸し出して入渓する。三沢橋を渡るすぐ手前から左方向に沢に向かって下りる。最初はゴーロが続くが、次第にナメが現れるようになる。火山地域特有のナメで、小石が埋め込まれているナメや赤っぽいナメ、溶岩が冷えて固まったと思われる段々状のナメなど今まで見たことのない渓相で面白い。
最初の7×5mは右壁を登る。次の二条5mは右側の藪中に薄いフミアトがありそれをたどる。
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二条5m①
この沢の滝はハングしているものが多い。以後大滝の下辺りまでナメとゴーロが交互に現れ、小滝がいくつかかかっているが、容易に越えられる。
大滝は7m、2m、25mの三段構えになっている。上段25mは直瀑で見る者を威圧する。上段の左側は大岩となっているが、巻き道は下段下から大岩の左側を行くようについている。巻き道はしっかりとしているが、途中二箇所ほど岩場っぽくなっている場所がある。そういったところは横の藪の中を行った方が安全。大岩の左側を越えるとなだらかな斜面を降りて沢床へと出る。
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大滝②
当初は「木曽の林といったらヒノキの美林でしょう」と思っていたのだが、この沢のすぐ横の林は上層をヤマハンノキなどの広葉樹の若樹(幹はそんなに太くない)が占め、下層にサワラの幼樹が生えている。大木は高台にしか見あたらない。下の鈴ヶ沢林道を歩いているとき「この沢は大雨が降ると土石流が発生するので注意してください。」という看板をいくつか見かけたが、土石流等の土砂災害によって沢床近くにある木が皆なぎ倒されてしまい、沢床付近に老樹が残っていないのだと思われる。
大滝を越えると火山地域独特のナメと様々な形状をした滝の連続で、誰が名づけたか知らないが、謂わば「滝の博物館」。地球の造形美に浸って感動する空間である。大滝を越えて最初の滝が5m斜瀑。右壁を攀じるのだが、少々難しい。滝上に残置ハーケンが二枚残っており、それを使って広瀬のためにザイル手がかりを出したが、広瀬はそれを使わずに登った。
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5m斜瀑③
5m斜瀑を越えると以下の写真のようなトイ状滝が続くが、どれも容易に越えられる。
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トイ状滝1
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トイ状滝2
上部が二条となったトイ状4mで木村は滝に近づこうと頑張ってへつっていたが、力尽きて釜にドボンした。よく探すと右側の藪中に滝上のトロもまとめて巻いてしまうフミアトがある。
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上部二条トイ状4m④
次の5m滝は右巻き。その次のトイ状5mナメは水流すぐ右を行ったが、自分は落ち口で足を滑らせ、滑り台のように滝を滑り落ち釜で胸まで浸かる。釜は足の届く深さではなく、泳いで脱出する。派手に落ちたものの、怪我もなく楽しいぐらいだった。
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5m滝⑤
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トイ状5mナメ⑥
トイ状5mナメを越してしばらく行くと、この沢の目玉である二段洞穴滝。上段の釜と下段の釜の間に水流はない。どうやら岩の下側でつながっているらしい。左側に取り付き、上段と下段の間を通って左岸に移ってトラバる。上段の釜は鉢状になっており、もし落ちるとザイルなどで救助しないとあがれないだろう。少々緊張するところである。
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二段洞穴滝⑦
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二段洞穴滝を上から撮る⑧
10m斜滝は、本当に岩の上を水が斜線を描いて流れている。右巻きする。次の苔滝が左から入る8mトイ状は水流すぐ右を登る。パッと見では難しそうだが、登ってみると意外と簡単。
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10m斜滝⑨
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左から苔滝が入る8mトイ状⑩
次の10m滝手前で沢は右に直角に折れ曲がっており、折れ曲がる前のちょろちょろ水が流れている部分を登る。
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10m滝⑪
10m滝上に横穴がある。白濱によると、土の上に溶岩が流れ、それらが露出した際、土の部分だけが削られて出来た穴であるそうだ。そういわれて見ると、確かに土の層と溶岩の層がはっきり判別でき、昔溶岩が流れている様子が想像できるような気がする。
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横穴⑫
横穴の上の8mトイ状斜瀑は白濱が右側を大きく巻き、木村が小さく巻いていたが、白濱の方がすんなり行っていた。これより先はゴーロが続き、水流の太い方に進んでいくと、どん詰まりに涸滝がそびえている。ハングした岩壁が三方を囲んでおり、不思議な感覚である。涸滝からは水がポタポタ滴り落ちていて、すぐ下まで水流がある。
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涸滝⑬
右側の岩壁の下端に沿って薄いフミアトがあり、岩壁が切れたところで尾根に上がり、東隣の沢に下りる。途中藪をつかんで少し踏ん張らなければならないところがある。沢に下りるときは急ではあるが、藪や樹木をつかんでいけばフリーで下りられる。
沢中には針葉樹(ツガかモミ?)の倒木が橋のように架かっていて、その上に稚樹が生えている。倒木更新であろう。御嶽山の針葉樹林の特色として、倒木更新が挙げられると聞いたことがある。
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倒木更新
この上にはナメ滝が幾つかあるが、どれも容易に越えられる。次第に涸ゴーロとなり、勾配も増していく。しばらく行くと上のほうに道路の白いガードレールが見えるが、その後も長く感じる。途中2mほどの岩場があり、広瀬が少々滑落する。左側の藪中を行った方が安全。
三笠山下の道路で沢抜け。ここで沢装解除。ここから田の原までは歩いて5分程度。途中左手に1984年の長野県西部地震のときにできた御嶽崩れ上部がちらっと見える。地震によって起きた土石なだれは、主に伝上川を下り下流にあった濁川温泉を飲み込んだのであるが、上部では尾根を乗越え鈴ヶ沢にも流入している。
田の原では携帯が通じる。ここで沢道具をデポして、御嶽山に登る。御嶽山には雲がかかっている。最初は御嶽教の大きな社を横目に見ながら、林道のような広くて平坦な道が続いているが、次第に岩がごつごつしてくる。しかし大変歩きやすい道である。八合目の少し下(金剛童子)まではダケカンバや針葉樹が疎らに生えているが、それより上はハイマツだけとなり、限界上となる。
八合目石室避難小屋と九合目石室避難小屋はカラマツでできた簡素で狭い小屋である。中には三人がやっと横になって寝られるようなベンチがあるだけで、入口の扉はないため風が入ってくる。今回は九合目石室避難小屋で泊まった。白濱が下でザック二個を使って空中戦を行い、入口はツェルトでふさいだ。
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九合目石室避難小屋
夕飯はタマネギとジャガイモを振られていた山岸が不参加のため、ニンジンと肉だけのカレーを食べる。翌日は中俣を下降するとなると長い林道歩きがあるので、田の原からタクシーで木曽福島まで帰ることにする。
9月27日(木)山頂付近ではガス及び風、下界では晴れ間がのぞくも後に曇りとなる
5:05九合目石室避難小屋発-5:45剣ヶ峰(御参り)6:00-6:20九合目石室避難小屋(デポ回収)6:30-7:30田の原
目が覚めると外では轟音をたてて風が吹いている。独立峰であるせいか、風は強い。一年冬山として正月過ぎに御嶽山を出そうかなと考えていたのだが、少々気分がなえる。4:00起床で5:05出発。ご来光を期待してこの時間に出発したのだが、周りはガスが覆っている。噴出口からの硫黄の匂いが鼻をつく。王滝頂上の少し先で、剣ヶ峰へ登る道と剣ヶ峰を巻いて二ノ池へと向かう道が分かれるが、トップの広瀬は後者の方を進んでしまう。引き返して正しい方を行く。
剣ヶ峰ではガスっていて、御来光はおろか眺望さえない。しかし草も疎らな荒涼とした大地に、ガスのなか御嶽教の銅像が浮かんでいる様は、ある意味壮観ではある。
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剣ヶ峰にて
寒いので早々に田の原まで下る。ガスが切れていたら小三笠山まで行って、御嶽崩れを覗き込むのもいいなとは思ったが、ガスっていたので、木曽福島のおんたけタクシーを呼ぶ。タクシーが来るまで一時間強かかった。タクシーを待つ間、散策路を歩いて、御嶽崩れが見えないか粘ったのだが、見えなかった。田の原~木曽福島駅までのタクシー代は12880円。木曽福島駅前の蕎麦屋で打ち上げて解散。自分は時間もあったし、折角木曽まで来たのだからということで、山村代官屋敷と福島関所を見学してから名古屋に帰った。途中中津川で下車して、川上屋の栗きんとんを買った。
○まとめ
返す返すも、出発前日に事故ったことが悔やまれる。人身でなかったこと、皆を乗せているときの事故でなかったことが不幸中の幸いと言うべきか。
沢自体は事故のトラウマを吹っ飛ばすくらい楽しく面白い沢であった。侵食によってできた丹沢・奥多摩の沢や、雪によって磨かれた上越の沢とはかなり違った沢登りが楽しめる。初心者も無理をすれば連れて行けるかもしれないが、ザイルを出す際の支点に乏しいことやフィックスを多数出さなければいけないことなどから、思わぬ時間を食うかもしれない。N以上にメンバーを絞って、すたすた歩いていく方が楽しめるだろう。
○コラム 御嶽山について
御嶽山は自分にとって馴染みの深い山である。自分が初めて家族と山登りをしたのは、この山である。周りを御嶽教の白装束の人が多く占めていて驚いたのを記憶している。(今回は時期のせいか白装束の人とは会えなかったが。)また御嶽講の先達をしていた自分の曾祖父が、この山の麓で真冬に滝に打たれて精進潔斎していたという話は、何度も聞かされた。
冬のよく晴れた日なんかには、濃尾平野周縁の高台から北東方向を眺めると白い御嶽山が見えた。高校時代には通学途中によく眺めていたものだった。
御嶽山は、場所時期によっては宗教色が強すぎて、ワンゲラー好みの山ではないかもしれない。(自分はあの独特の雰囲気も好きではあるが。)しかしそういったところから少し離れると、地球のエネルギーを感じさせるような奇観・絶景が次々と現れる。山体の大きさに見合った懐の深さを持つ山だと思う。宗教的色合いと自然の懐深さの対比が面白く感じる。
また林学科に在籍する自分にとって、御嶽山は興味の尽きない山である。文字通り日本の歴史の表舞台を支え続けてきた木曽檜の産地であり、それ故に各時代の為政者たちが自分の手元に置いておこうとした美林を持つ。また火山地帯特有の地質、それがもとで起こる土砂災害についても興味深い。自分にとって本業プライベート両面から馴染み深いこの山に、今後とも様々な形で関わっていけたらいいなと思う。

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